契約
激しい風に立っているのもやっとの中、
風の中におぼろげだけど、何か大きな影が見える。
数分後、飛び出して来たのは…オオカミだった。
先程の遠吠えも気のせいではなさそうだ。
私が乗っても大丈夫なぐらい大きい。毛は雪のように白い。
…めちゃくちゃ可愛い!いますぐ近づいて行って、抱きつきたいモフモフしたい!
今の言動で分かると思うが、薫は相当な動物好きである。
オオカミがこちらをじっと見ている。
あ、目が青い。
風は止んでいる。
「ご主人?」
のわっ!喋った!見間違いでは無い。絶対、今喋ったのはあのオオカミだ。
「薫さん、返事をしなさい」
どうしようかと戸惑っていると、パルカさんが小声で教えてくれる。
「はい?」
「貴方が僕のご主人ですね。では、契約を」
契約?え、何それ。おいしいの?
だってパルカさん、ちっとも教えてくれなかったじゃないですかぁぁぁ!
しかし今度は、何か教えてくれそうな気配は無い。……困った。
分からない時は素直に分からないって言おう!うん。
「あの…できたら、契約の仕方教えてくれたらなーっなんて」
オオカミはじとーっと私を見ながらも、答えてくれた。
「名前を教えて頂ければ良いんですよ」
「なんだー名前かー。…薫と言います」
「僕はカイルです。カイって呼んでください。薫様、よろしくお願いします」
そう言って下から見上げて来るカイ。……ズッキューン!…かわええ。
思わず抱きついてモフモフしそうになる。…危ない危ない。
この子なんとなく厳しそうだから、そんな事したら嫌われそうだ。それだけは嫌だ。
私のすぐ下にいるカイは、さっきから私をじーっと見ている。
「何?さっきからじっと見て」
「……薫様!!大好きですっ。さっきは緊張してたんです。冷たくしてごめんなさい」
「…!そうなんだ。良かった。嫌われてるのかと思ってたから…」
「薫様を嫌うなんてあり得ないですよ!大好きです」
……なんなんだろう。カイはさっきから、大好き?私も大好きだよ。…じゃなくって!何で大好き?
「何で大好き?」
これにはパルカさんが答えてくれた。
「使い魔っと言うのは、主人が大好き、と言うのは有名な話なんだよ。薫さん。でもそのカイくんはびっくりする程、薫さんが好きな様だね」
「薫様は可愛いし、魔力は大きいし、優しそうだし、大好き!」
「…おい。薫は俺の物だ」
そう言って来たのはもちろんイシュだ。何、言ってるのーっ!!
「薫様、こいつ誰ですか?」
「イシュだよ。えっと…付き合ってるのかな。うん」
「何でこんなヤツと?」
とか言いながら、イシュを睨みつけるカイ。睨み返すイシュ。
何なんだ!
睨み合う2人をなんとか引き離して話を続ける。
「それで、カイってどんな事が出来るの?」
薫様の為なら、僕は何でもできますよ!と言うカイはほっておいて、パルカさんに話を聞く。
「使い魔と言うのは基本的に愛玩動物なんだよ。でも、ここぞと言う時に、主人を多いに助けてくれる。しかも、普段魔力を使わない分、強力だ」
なるほど、だからウサギさんは使い魔を勧めたんだ。
「それから、白い使い魔と言うのは、非常に珍しい。大抵、黒だ。別に白だからどうとか言う事はないがな」
へぇー。でも白、可愛いもんな。
「まぁ、仲良くやりなさい」
「はい!ありがとうございました」
「薫、行くぞ」
パルカさんに御礼を言い部屋を後にする。
もちろん、カイも連れて。