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異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第二章 勇者
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使い魔

朝私が起こしたおかげか、イシュの機嫌は最高だった。

問題は...いつ話すかについてだ。今日は一緒に城に行く事を約束しているからもう出かけるし。


「薫、もう行こう」


帰って来たらでいいや。

抱き上げようとして来るイシュを軽くいなしながら馬車に乗る。後ろから抱きしめられてるのに平然としている自分が怖い。これがスキンシップに慣れるというヤツか!怖っ!


「城で俺の側を離れるなよ?」


「うん。あっ!やっぱり、ちょっとパルカさんの所に行ってもいい?」


私の頭に顔を埋めていたイシュが顔を上げた。あぁぁ!イシュの顔が見る見る不機嫌に!眉間にしわ寄せないで!お願いだから!


「なぜだ?」


声が露骨に不機嫌だ。


「あのね、使い魔が欲しいの...ダメ?」


イシュの膝に乗っても身長が届かないから自然に上目使いになる。


「っ!ダメじゃない...やっぱダメだ。っ!わかった。俺も一緒に行く」


イシュは一人で葛藤してなんとか了承してくれた。ふぅっよかった。


「ありがと」


きゅぅと抱きつくとイシュの香りがする。懐かしい感じで安心する香り。ほっとかれたらこのまま寝てしまいそうだ。こうするとイシュはいつも抱きしめ返してくれる。

最近はそれが嬉しくて、よく抱きついてる。あぁぁ日本人の控えめ美学はどこえやら……。

しばらくそうしていたら城が見えて来た。けど、外が騒がしい。

イシュの目が冷たい光をまとい、私を抱き上げる。


「イシュ?恥ずかしいから、自分で歩くよ」


「ダメだ。絶対離れるな。危険だから」


「危険?なんで?」


出ればわかると言いながら、イシュはそのまま外に出る。


「イシュ様ぁ!!」


...は。何これ。

アイドルの追っかけを連想させる。イシュの追っかけ?あっマリーナさんの言ってた?

じゃあ、私って....

ちろりと横を見ると、私を睨みつけるお嬢様の姿がありました。ひぃ!危険の意味が分かりました!

イシュは人垣をもろともせずズンズン進んで行く。慣れてる感じだ。

毎日こんなのと戦ってたんだ。...お疲れさまです!


「イシュ様!あの噂の女ですの?!」


あちゃー相当怒ってる。隠れとこ。噂ってアレかイシュが言ってた。


「そうだ...薫を泣かせたら、城に居られないようにするから」


抱き上げられてて見えないけど、相当怖い顔をしているんだろうな。

言ってる事も恐ろしいし。こんな事思っちゃいけないけど、愛されてると感じられて嬉しくなる。

イシュの剣幕に押されて撤退したんだろう、周りが静かになった。


「イシュ?ありがとう」


「...ん」


すたすた歩いて着いた先は古すぎて触ったら崩れ落ちてしまいそうなドアの前だった。

ここがパルカさんの部屋だろうか。


「俺だ。入るぞ」


ぎぎっとドアを開けて入って行くと、相変わらず変なメガネをかけて、お茶を飲んでいるパルカさんの姿があった。


「お?あぁ、いらっしゃい。薫さんも来たね」


ししっと笑ってお茶の準備をしてくれるパルカさん。

ここでやっと私もイシュの腕から解放された。...よかった。恥ずかしかったし。


「あ。おいしい」


「そうか、そうか。それは良かった」


最初は不思議な人だと思ったけどパルカさんの柔らかいふいんきが好きだ。

ニコニコしているとイシュが不機嫌そうに話しだす。


「今日は要件あるんだ。薫が使い魔が欲しいそうだ。なんとか出来るか?」


「そりゃ出来るとも!でも何時までかかるか分からん。それでも良いのか?」


「はいっお願いします」


多少気になる所があったけどまぁ気にせずに行こう。うん。

やっぱり魔方陣とか書くのかなとか思って密かに楽しみだったんだけど、パルカさんは私を別の部屋に移しただけだった。

床を見ても何もない。


「じゃあ、まず自分の魔力を感じ取るんだ。体に流れているものがあるだろう?」


目を閉じたら、血の流れを感じ取る事ができた。ん?もしかしてこれが魔力かな?


「そしたら今度はソレをゆっくり外に押し出すようにしてごらん」


ゆっくりゆっくり...魔力の流れは激流でなかなか路線変更してくれないけど、なんとか動いてる


「その作業を続けるんだ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

かれこれ40分作業を続けている。流石に疲れてきたけど、魔力の流れに変化が出てきた。

最初はムリヤリ押し出していた魔力が、今は何かに引っ張られている気がする。

そんな変化を見破ってか、パルカさんが頷いてくれる。イシュは静かに見学だ。


さっきまでやんわりとしていた引力がぐんと強くなった。

何かが起こる……気がする。と思ったのに、力はまた弱くなる。

力は、しばらくは何かを計るかのように、弱く、強くを繰り返した。


それが10回ほど繰り返れたころだろうか。

部屋に木枯らしが吹いた。窓はピッタリとしまっている。

木枯らしが幾重にも重なって、大きな風が吹く。

大きな風が重なってまたさらに大きな風が吹く。その繰り返しでいつしか部屋には風が吹き荒れていた。

まるで嵐。雨のない嵐。








遠くで遠吠えが聞こえた気がした。







薫が初めて城に行った時、親衛隊は?とか聞いてはいけない。


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