マニュアルウサギ登場
夢の中です。
「おい」
…何。なんでこんな至近距離でウサギに見つめられてるの、私。
…ウサギ?……ウサギィィィィィィィ?!
「ぎゃぁぁぁ!」
「いや…ちょっと落ち着いて…」
「いやぁぁ!またグルグルに巻き込まれるーっ!」
「だからちょっと…」
「ふわぁーん!帰るっ!」
「……落ち着けって、言ってんだろぉがぁぁぁぁぁ!!」
捕まえられた。
ていうか痛い!そこに乗るな!
「いいから、そこに座れ!」
「はっはい」
なんでこのウサギこんなに偉そうなの。ウサギはもっと可愛い生物なのに!
「あの…何の説明もなく異世界に送り込んだのは…その…悪かった」
「じゃあ、やっぱりあの時のウサギさん?」
「そうだっ!あの時は俺も入社したてで、アレだ。緊張してたからまさかお前に逃げられると思わなくてよ」
「……だって銃を抱えてたし」
「それはっアレだ!異世界へ送るためのもので!」
「……怖かったし」
「本来はしまっとく物なんだがマニュアルにはすんげー小さい字でしか書いてなかったんだ!」
「……口悪いし」
ウサギさん汗だらだら。
「……………すいませんでした」
「…気をつけてよ」
「とっとりあえず、俺の話を聞いて欲しいんだ」
「うん」
「まず、俺は普通のウサギじゃない事はわかるよな?世界には無数のパラレルワールドがある。…異世界だ。その異世界の1つにウサギが人間のような暮らしをしている場所がある。そこが俺たちの会社のある、バローンだ。」
バローン...ね。
「バローンには長年、異世界について研究している奴がいた。で、そいつはある日、異世界を覗く事に成功したんだ。しかし、そいつの目に写ったのは幸せな物ばかりではなかった。幸せな異世界がある分、崩れかけている異世界も沢山あったんだ。それでそいつは何とか異世界が救えないかと思った。そこで考えたのは自分がそこへ行きそこを救う事だった。それでこの銃が開発された。」
もうちょっと他の形は無いのか!怖いぞ。
「んで、そいつは自分に向けて銃をうち、異世界に降り立ったんだ。でも何にもできなかった。そいつは悔しくて悔しくて、一度自分の世界へ戻り、いろんな人をスカウトして研究を始めたんだ。それが今の会社、キングストンだ。その研究の過程で異世界を救うには魔力の高い人が適している事、魔力の高さで言えば地球の人々が、しかも女子が、ダントツの事が判明したんだ。そこでだ、俺たちがそこへ行き異世界を救える人材をスカウトしようって話になったんだ。」
「ダントツと言っても実際、救世主になれる程の魔力を持つ人はあまりいない。結構大変なんだぜ?…じゃなくって!とにかくっお前はスカウトされた。でも…人によっては嫌がる奴もいてよ、探すのに苦労した分、それじゃ困るわけ。そこでだ!俺たちは特典をつける事にした。」
1つ 行った異世界で困らぬよう、脳内データを組み替える仕組みを銃につける事
1つ 行った異世界で運命の相手に出会えるようにする事
「これをつけた途端、スカウトは面白いぐらいうまく行くようになった。女子ってのはアレだな。運命とやらに弱いんだ」
そこで、ふぅっと息をつくとウサギさんは話を続ける。
「ここまで話したらわかると思うが、まずお前は異世界を救わなくてはいけない。そのかわり、言語とか食べ物とかも困っないだろ?しかも運命の奴にも出会えた…よな?」
「うっ運命の人って……イシュなの?」
「へー。イシュって言うのか」
…………そうだったのか!
それならあんなに展開が早いのも頷ける。しかも脳内データって…いやぁぁぁ!じゃあ今、私、日本語まるでわからないって事?!
しかも異世界救わなきゃいけないの?!まさかの勇者!
「いっ異世界救うってどうやるの?」
「えーっと、ちょっと待てよ…」
と言いながら、マニュアルをだすウサギさん。マニュアルに頼りすぎだっ!
「おっあったあった。魔王を倒すんだ」
うーあーっ!ベタだーっ!やる気失せるわ!
「私が拒否したら?」
「お前に拒否権はないし、イシュとやらを置いていけるのか?」
「うっ…」
卑怯だ!断られないためじゃなくて、やらせるための特典じゃん!!
「頑張ります…」