甘すぎます
目が覚めると、もちろん、イシュの腕の中にいた。
私がもぞもぞしてもピクリともしない。ほんと低血圧だなぁ…。
もうひと眠りしようかと思った時、外で音がする事に気がつく。
「ちょっとサラ！あんた行きなさいよね！！」
「嫌よ！ヤることヤった後なのよ？！入りづらいじゃないのよ！！」
「それは皆一緒よ！でもそこで行くのがサラ！あんたの仕事じゃない！」
「何自分は違うみたいな言い方してんのよ！」
何だか漫才を聞いているような気になる…
「じゃあ2人で一緒にあけましょっ！1・2・3で行くわよ！1・2・3！」
「……エマ！力いれてないでしょ！！！」
「そういうあんたも力が入ってるとは思えないけど？！」
…いや小学生じゃないんだからっっ！
あぁ、もういろいろ面倒くさくなって来たなぁ…
イシュの腕から這い出して、ドアの前に立つ。
外ではまだ言い争いが続いてるようだ。
すぅっと息を吸い込んでドアを開け放つ。
「うるさいっ！」
突然の大きな音に2人は目を丸くしてピタリと止まる。
それでも全く起きる気配のないイシュに少しばかりいらっとする。
「おっおはようございます、薫様。お目覚めでしたか」とサラ。
「どっどうでしたか、昨夜は、お楽しみになれました？………あぁ、楽しかったんですね。分かりました」
エマがそう言って、目をそらしてしまう。
「………何？」
「いや…あの…キスマークついてます。」
「いやぁっ！！」
ぼぼぼっと顔が熱くなる。もしかしてあの時の…印をつけるとかナントカ！あのちくっとしたヤツか！
嫌だもう。穴があったら入ってる…そうだ穴！穴を作らせよう！！
まずはスコップかな！かなり大変な作業になりそうだから、エマとサラに手伝ってもらって…
....自分！ヤバイやばい。あまりの恥ずかしさにご乱心だわ！
私のあまりの身悶えようにサラが水を渡してくれた。ごきゅごきゅと飲んだら、少し落ち着いた。なるべく穏やかに説得するような声を出す。
「2人の考えてるようなことはしてません。大丈夫です」
「ふーん」
「なっ何よ！本当にしてないってば！」
結局、信じてもらえたのかよく分からないまま身支度をしに、隣の私の部屋へ向かう。
今日のドレスはレースをたくさんあしらった、ふんわりしたやつ。上からキスマークを覆い隠せるように、しっかり襟がついてる。それにしても、こういう世界でのレースは高いんじゃないのかな、後ろでサラが蓬けたようなため息をついたし。
とか考えていたら、隣のイシュの部屋のドアがぱーんっと開かれる音がして、続いてマーサさんの声が聞こえた。
…朝のアレは恒例行事ですか。マーサさん…
あれから暫くたった朝食の時でさえイシュは眠そうだった。
クロワッサン黙々と食べていたとき、イシュが言った言葉に咳き込んでしまう。
「げほっげほっげほ……え？」
「だから、俺は朝は早く起きられなくて、薫の事が見られないから、明日から起こしてくれ」
イヤそれ意味分かんないっす。
「私なんて別に見なくてもいいでしょ！」
「見たいから言ってるんだ」
その勝手な理由にまたしても腹がたって、拒否しようと思ってすぐに気が変わった。なんていうか、イシュがじっと見つめて来たから。イシュには絶対そういうチカラがある、人をまぁいいか、みたいな方向に流すチカラが。仕方なく、コクンと頷く。
「う、わかった。だけどさ…明日からも一緒に寝るの？」
「当たり前だ」
何の為の私の部屋よぉ。グスン。朝食が終わり、イシュを見送る為に席を立つ。部屋の事をやらなきゃいけないから、今日はお留守番です。
「薫、ちょっと」
部屋から出て歩き始めた廊下のすみで、首のボタンを開けられてあの”印”を確認された。印をみつけたとたんイシュは目を蕩けさせて、だけどすぐにいつも通り、キリっとした顔に戻った。やめてよそういう恥ずかしい事！私は毎回毎回っ爆発しそうです！
「恥ずかしいからやだ」
そういって不満げにイシュを見上げると、別に、全然そういうつもりじゃないのに、イシュがちゅっとキスをして離れて行った。うわ、うわわわわ、恥ずかしい...っこういうことヤメてって言ったのに...！
「行って来ます」
恐らく顔色がくるくる変わってる私を見てイシュがにっこり笑わらった。ホント、暴君だよね。私の意見なんて聞きもしないんだからっ！それでもいやじゃないのは、私ももう、イシュに夢中だからなのかもしれないけど。
馬車に乗り込んだイシュにひらひらと手を振りながらそんなことを考えた。
「いってらっしゃい！！」
って私は奥さんか....
甘すぎて気持ち悪い…。イシュも薫も…！
次回から立て直します。うん。
イシュとか完全にキャラ変わってる気がします…気のせいですか。
