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異世界と私と時々ウサギ  作者: 酢昆布
第一章 異世界
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馬車の中で。

あぁ、認めてしまった。私が肯定してからというもの、イシュの目線はもうとろとろに蕩けてしまった。そしてニッコリ笑って言うのだ、好きだ、と。どうしたらそんなに恋愛にオープンになれるのかと不思議で仕方がない。


その後向かった執務室では特にやる事がなかったから、窓から外を覗いていたら部屋の中に連れ戻されました。無言でソファーに座らされるってことは、ここから動くなってことらしい。なんでよ?


イシュが仕事を始めたから、カリカリとペン先が紙を滑る音だけが部屋に響く。私来た意味ないなコレ。初めはお城を見てみたかっただけだけど、恐ろしく暇だ。とうとうドレスのリボンと遊ぶのにも飽きた私は、イシュの観察を始めた。


イシュは集中していてこちらを向く気配がないけれど、すっと通った鼻筋とさらさらの髪はここからでも分かる。それに、イシュの手は大きくて、少し骨ばっていて、さっき触った手のひらにはゴツゴツした豆が沢山あった。多分剣の練習をしていて出来たんだろう。ーーーきゅん。


あ、また胸キュンした。努力する人は嫌いじゃないってじゃなくて!一秒ごとに新しい情報が刻まれてその度に好きになって行ってる気がする。一体どうした事だ。


イシュの観察は思っていたよりもスゴく時間をつぶしてくれた。でも大変なのはそんなことより、これからだった。そうそれは、帰りの馬車での事。


あのとき、イシュは自分がタラシではないと力説してくれたけど、マリーナさんが言っていた事についてはノータッチだった。というか、私が聞かなかった。だから、その辺が気になって、何となく聞いてみたのだ。


「マリーナさんがね、がイシュは親衛隊の人にいつも優しい、とか、この間デートに誘われたとか、会長にはすごく優しいとか言ってたんだけど、これ本当?」


別に素直な疑問だったのだ。他の意図なんてないはずなのに、イシュは無駄に艶やかな笑みを返して来た。


「気になるか?」


いやだから、そういうことではなくてですね……とか言っても無駄なことはわかっている。ここは素直にうなずこう。しかしまだまだイシュの質問攻撃は続く。


「薫、嫉妬してたのか?」


嫉妬かぁ、あの時はただただ混乱していたから、自覚がなかっただけでこれは、嫉妬……?うん、言われてみればそんな気がする。気がする程度ではあるけれど、これは驚きの新事実だ。流されている気がしないでもないけど。まぁ、もうそういうことにしておこう。


ちらりとイシュを見上げると、……何て言うんですかね。すごく、嬉しそうです。何だか犬のような可愛さだコレは。


「薫、そんな嘘で嫉妬してくれたんだな。可愛い」


…………っえ?嘘?嘘だったのあれ?仮にも嫉妬していた(という事にした)私としては、悔しい。


「嘘?なんか……悔しいっ」


嘘って……!


「ん。いつもついて来て鬱陶しいだけだあんな奴ら。優しくなんかした事ないぞ?」


それを聞いて少しホッとしてしまった。あー!もう、何なんだろうこの感じ!でもまだ少し気になるのは、デートのやつなんだけど。流石にデートは……ねぇ?


「えっじゃあマリーナさんが言ってたデートは?」


はい、イシュはコレにも即答してくれました。


「妄想の産物じゃないのか?」


「…………」


まさかですよ。ことごとく騙された私は悔しくて悔しくて悔しくて……そういえば行きは膝に抱っこ状態だったけど、帰りは私の意思を尊重して、私は普通に椅子に座ってる。イシュが手を延ばして片手で私のほっぺたを包む。


「それから、俺が優しいのは薫だけだけだから、俺はタラシじゃない」


うわっ……それってそれってすごい殺し文句だとおもう。またきゅんって、きゅんってなったもん今!血が顔に集まって来て、ほっぺたが熱い。多分今真っ赤。思わず下を向いてもすぐにイシュの手が、起動を修正して、ごく自然にキスされた。

考える間もなかったよ……!


私も熱い上に、イシュも唇が熱い。


「っふ………」


声を漏らしたすきまに舌が入り込んで来る。

口の中で舌をつつかれ引っ張られ、上顎をねっとり舐められる。


「ん………ぁ……」


頭がクラクラするけど、酸欠にならない様、時折離れながら何度も何度もキスされる。……うん、なんか長い。私はこれがファーストキスだけど、世界基準的に見てもコレは長いはず。それに突然深いやつだし……!


イシュの唇が離れた。


「ん……ちょ、セクハラ!」


かってにうるんでくる目でイシュに訴える。


「タラシじゃないと言ってるだろう?真っ赤になったりして、可愛すぎるんだ」


「だっ、だってそれはイシュが…」


「悪かったな…」


と言いながらまた顔を近づけてくる。イシュは絶対反省してない。


「あっ!また…」


拒む間もなくキスされてしまう。

どんだけキス好きなんだよ!キス魔か!

また舌を入れられては堪らないと、硬く口を結んでおく。

いつまでも口を開けない薫に業を燃やしたのか、イシュが強硬手段に出る。

イシュの指先が脇腹の辺りで動く。


「あっひゃひひゃっっ…やめっ…ぁっ………ぅ…」


そのすきを逃がすまいとイシュの舌がまた入り込んで来る。

あぁ、もうダメだ…。

イシュに逆らわない方が良い事を学んだ薫であった。


短くてすみませんっ

第1章はこれで終わり…にしたいですけど、後ちょっと続きます。

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