5【おっきくって】初体験は、おおかみさんでした【速いんです】
待っててくれたみんな愛してる。
ようやく納得のいく感じになったので投下。
翌日、特に筋肉痛とかも無く当たり前のように一日が始まった。
朝起きて、飯を食べ、おっさんが狩りに行くのを見送り、使った食器を片付ける。
うん、いつも通り『主夫』の朝ですね、わかります。
だがしかし、昨日の俺とは違うのだよ、昨日とは!
なぜなら、俺の腰に刺さっている―ついでに半分引きずっている―昨日おっさんに貰った剣があるからでしてよ奥様!
RPG風にしちゃうと
武器:グレートソード(中古)装備中
的な感じですよ。
ようやくファンタジーって実感がががががが。
と、身に着けた当初は思ってました、ええ、厨二病回路全開だったんで。
でもね、あれなんですよ。
超 邪 魔 ♪
でかすぎワロス。
腰に挿すより背負いたいわ。
いやまあ、慣れてないから背負っても邪魔なのは変わらないかもしれないが。
とりあえず今日は、男の子の意地というなの何かに後押しされ、このまま腰につけて過ごすけどな!
運がよければDEXとかVITとかSTRとかあがるかもしれないし!
まさかの魔物とのエンカウントのあるかもしれないし!!!
という言い訳を自分にしつつ、食器洗いも終わったのでハイパー水汲みタイム発動。
よーし、おじさん頑張っちゃうぞー、やけくそ的な意味で。
「それじゃあリョウさん、いきましょうか」
「おうともよっ!」
最初に作ったはずのキャラが壊れてるような気もするが、気にしないったら気にしない。
俺のキャラの変化なんて、キルトはそんな小さなこと気にするような子じゃないもんっ!!
そんなどうでもいいことを考えながら水汲みに向かって森の中を歩いていると、犬の遠吠えのようなものが聞こえてきた。
それを聞いてキルトが足を止めるので、俺も立ち止まる。
直ぐに犬の遠吠えのようなものは数を増していき、森中から聞こえてくるようになった。
もしやこれって……
イベントktkr!!!!
腰に剣を挿してたのもフラグなんですね分かります。
それを言うなら昨日剣の練習したのもフラグですねわかります。
ついでに言えば、キルトと二人きりの時にイベントが起きたのも(ry
「リョウさん、これはウルフの啼き声です!
本来はこんな所に入る魔物じゃないんですけど……。
とにかく、囲まれきってしまう前に逃げましょう!」
そう言って俺の手を握るキルト。
やわらかすぎワロスwww
あ、一応水瓶は脇に置きました。投げ捨てたりはしてないですよ?
キルトに引っ張られながら走る俺。
キルトは焦っているようだが、俺は正直全然焦ってなかったりする。
なぜなら実感がまったく沸かないからだ。
魔物とかいう見たこと無いものを怖がれと言われてもいまいちピンと来ないのが一点。
RPG的に考えれば、主人公が覚醒するためのチュートリアル的戦闘なんじゃね?とか考えてるのが一点。
ウルフって名前まんますぎじゃね?せめてワーウルフとか少しはひねれと言わざる終えない。とか考えてたのが一点。
ようするに、ゲーム脳乙状態だったわけである。
そんなことを俺が考えているうちに、早くも家が見えてきた。
そんな長距離だったわけでもないんだが、キルトは息を切らしながら、家が見えてきたことに安堵したのか少し走る速度を落とした。
と思ったら、そのまま足を止めた……。
「ん、どしたの?」
家が目と鼻の先にあるのに、急に停止したキルトを不思議に思った俺は声をかける。
しかしキルトはこちらに目を向けることなく、前方の一点を注視していた。
俺の手を握っている手にも、さっきより力がこもっている。
「……狼ってこんなに大きかったっけか?」
思わず俺の口から声がこぼれたのはしょうがないと思うんだ。
キルトの向いている方を見てみると、そこにいたのは美しく生えそろえた銀色の体毛を風に走らせている狼だった。
言えることは、とりあえずでかい。
体長とか良く分からんが、普通に四足の状態で高さが俺の腰くらいまである。
あれだ、ゴールデンレトリバーより少し?大きいくらいだと思う多分きっと。
「どうしよう、もうこんなところまで来てるなんて…………」
俺がそんな風にウルフのことを観察していると、キルトは心底おびえたように呟いた。
手も震えだしているのが分かる。
いやー、そりゃ怖いですよねー。だってあれですよ、ゴールデンレトリバーよりデカイ肉食獣がこっち狙ってるんですよ?
怖いに決まってるだろう、常識的に考えて。
「んじゃま、俺が相手してるからその間に隠れててくれや」
そう言いながら、キルトと繋いでいる手に力をこめる。
僕達男の子。やっぱりどうしようもなく、女の子の前で格好付けたくなるものなんです。
それにほら、俺精神改造受けてるはずだからこのくらいなら怖くn―――
「リョウさん、無理しないで下さいっ!手だってこんなに震えてるのに……」
おうじーざす、震えてるのは俺の手だったよHAHAHA!
そりゃーね、怖いですよ!
怒った犬ですら怖いのに、あのサイズの狼が殺しに来るんだぞ!?
怖いに決まってるだろ、常識的に考えて――!
なんて思っていることは間違いないんでございますが、そこはまあ、ほら、やっぱりね。
男の子として、可愛い女の子の盾になるのはやむなしですよ。
格好いいとこ見せたいしな!
「何、武者震いさ。それよりもきちんと俺の勇姿見ててくれよ?」
ここでウィンク!
いつもなら俺きめえwwwwwwwwとか思う所だが、今は上手く出来てることを祈らざるをえない。
俺がびびってるのばれるわけにはいかないしなっ!
「ダメですっ!ここでリョウさんに何かあったら私はっ……!!」
これなんてエロゲ。会ってたった数日でフラグですか?
やっぱイケメンだかr……キルトに限ってそれはねーか。
イケメンとか気にしなそうだし多分きっと。
他に理由があるかもしれんが、今はそんなこと聞いてる暇は無いか。
これ以上何を言うでもなく、俺はキルトから手を離す。
キルトはまだ何か言いたそうにしていたが、それでも俺の本気を感じ取ったのか、少し離れた。
俺が剣を抜くと、今まで俺達をうかがうようにしていたウルフが攻撃意識を高めたように思えた。
こんなタイミングで剣持ってたり、ウルフが俺を待ってたりと、さすがご都合主義の異世界だと思う。
だからどうせなら、この結果までご都合主義になってくれないかと思いながら、ウルフに向かって剣を向ける。
シチュエーションは完璧。
昔はこんな展開を何度夢に見たことか。
夢は夢のままで現実に押しつぶされるものなのか、
それとも夢は現実になるものなのか、その最初の関門が今ここで始まる。
――――さあ、主人公を始めよう――――
俺に向かって走り来るウルフに意識を向けながら、俺はそんなことを考えた。