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溶ける氷、ほどける距離

 ショッピングモールに着いたのは春久の方が先だった。近かったこともある。電話をすればマナーモード。けれどすぐに電話が掛かって来た。

 「今西の入り口に付いた。どの辺?」

 問われて春久は周りをぐるりと見渡した。地図と同じように区画番号が振ってある。

 「Eの5だ」

 「ここはBの3だから少し離れてるね。もう少し待って」

 駐車場は広く、いくつかに分かれている。基本は北から南、東から西に向かって番号が振られている。カイが西の入り口に着いているのに3なのは、別の駐車場に入ったからだ。平日だから立駐には入れないだろうとは思っていた。が、カイの行きたい店がそちらにあるのなら春久が移動したのにと言おうとする前に、電話は切れている。仕方が無いので、車に乗って、窓にサンシェードを付け、本格的に下りる準備だ。ちなみに、春久の車の左右は空いている。カイが気づくかどうかは不明だが。

 

 車のホーンが軽く鳴らされ、春久の隣に見慣れた車。

 「ごめん、走ってたら駐車場への入り口高架橋経由の案内が有ったんで、そっちに上がったら変なところに着いた」

 「いや、別に大丈夫だ」

 カイもいそいそとサンシェードを準備し、助手席からバッグを引っ張り出してくる。

 「大荷物だな。車の中に入れておかないのか?」

 「タブレットが入っているから、持って行く」

 「PCは?」

 「車内に入れっぱなしにしたくなかったから持ってこなかった」

 「持とうか?」

 「大丈夫。タブレットと水筒と折りたたみの傘ぐらいだから。消しゴムは?」

 「車内に入れっぱなしに出来ないから持ってこなかった。溶けるだろう」

 ここでも消しゴムにこだわるかと思ったけれど、カイを真似て言えば、カイは笑っている。この間の重苦しい空気が嘘のようだ。

 

 二人はすぐに駐車区画を分けている通路に入った。屋根付きで至れり尽くせりだ。日差しが強いぐらいで、傘が万が一にも必要になるとも思えない。置いて行けばと言おうかと思ったがあまり世話を焼きすぎる必要は無いかと、口を閉ざした。

 暑い。もう少し入り口に近いところにすれば良かったかと少し考えたが、時間があれば車を置いて近くをドライブでもと言い出したのも春久だ。少し足早に本館の中へと飛び込んだ。さすが大型ショッピングモール。空調管理がなされていて、まだ五月後半だけれど外との温度差はハッキリしている。

 

 スポーツ用品店もあれば同じ敷地内の別建物にはキャンプ道具専門店もある。

 集合をオープンに合わせたから、最終クローズまでの十時間、どんな使い方も出来る。案内図を見ながら、殆どの階層を歩き回った。ヘタをすると普段の仕事より? カイに至っては完全に歩きすぎたようで、冷房が効いた館内、フードコートでぐったりとテーブルに倒れ込んだ。

 「調子に乗りすぎだろう。自分の体力考えろ」

 「だぁって~。あれもこれも見たいところ有りすぎ~~」

 そうだ。こんな風に甘えて少し膨れるカイが、生意気な弟を見ている様でお気に入りなのだ。現実の弟は居ない代わりに生意気な後輩は居るけれど、仕事と関わりが無いことが重要で、やはり戸野原の言っていた仕事と関係無い友人という言葉が思い出される。彼の言葉は何故こうも適切なのか。少なくとも春久にとっては貴重なアドバイスだ。

 

 「ちょっと待ってろ」

 そう言うと立ち上がり、近くでフラッペを二つ購入。赤いシロップの掛かった方をカイに押し付けた。

 「昼はお前の奢りだ。だからこれは奢ってやる」

 「う~~。判った。ありがと」

 フワフワのかき氷にフルーツを載せ、シロップを掛けただけの物。春久は無色にしたけれど、甘い。眉が顰められそうになってしまうのを、人差し指で押さえて伸ばした。アイスコーヒーにすれば良かった。

 カイはすくっと立ち上がった。見ていると別の店で飲み物を買っている。カイにも甘かったらしい。

 「ハルさん、コーヒーで良いよね?」

 「ああ。サンキュー」

 「これも貰い」

 カイは春久の前のフラッペを取り上げ、代わりにアイスコーヒーを置いた。眉間を擦ったのを見られていたようだ。買ってきたのは春久のコーヒーのみで、自分の前に赤白両方並べてストロー付きスプーンでどちらも掬って食べて

 「どっちも甘いけど、赤い方がマシかも。でも、ハルさんが欲しかったら、シロップの掛かってないところかフルーツね」

 そう言って、赤い方を押し出してくる。確かに色つきなら、何も掛かっていないところはよく判る。だからコーヒーに付いているスプーンで、本当にかき氷だけのところを掬って口に入れた。

 「氷だな」

 「氷だよ」

 何を今更?と、端で聞けば笑いが漏れるような会話が積み重なっていく。その当たり前のやり取りが何よりも大事だった。あのときのメール一つに悩みに悩んでいたのが嘘のように、何でもないことでも話が弾む。

 

 話をするのなら今だ。そう判断した。この関係を維持したいなら、言うべきことは先延ばしにしない方が良い。

 「あのな、謝らなくて良いから最後まで聞いてくれ。俺はお前を責めたいんじゃ無くて、安心して貰いたいんだから」

 そう前置きをした。

 「戸野原さんからお前が垣内を苦手にしていることは聞いた。垣内にとってもお前は扱いにくいらしい」

 それでカイが項垂れていく。

 「俺は逆だと思っていたんだ。垣内は気易いからお前も付き合いやすいだろう、戸野原さんは元の職業が職業だけに厳めしさが先に立ってお前怖がるんじゃないかと。年も一回り以上違うからな。なのでお前が垣内を苦手だってことの方が違和感だったんだ。俺の思い込みでお前を哀しませた」

 自分の見る目の無さも白状した。

 「それでも俺は、お前とは一緒にツーリングに行く仲間で有り続けたい。こうやって店を回ってキャンプにも行って、次学期の授業計画を立てて」

 カイの頭は動かない。それを見ながら春久は言葉を続けた。

 

 「お前と垣内は全然違う。垣内は良くも悪くも普通のおっさんだ。妻だの子供だのと言ってる姿は、年相応の家庭人だ。お前はこれから年齢証明が必要な映画に行くかと言ったら、首を横に振るだろう? 俺もそういったのは遠慮したいんで、お前とならおかしな付き合いをしなくて済むのが助かる」

 垣内は夫婦生活マンネリ防止だとかなんとか言い訳付けて飛びつきそうで、相手の居ない春久は性犯罪を起こすなと揶揄られそうなので近づかないだけだ。けれど理由など口にする必要も無い。春久も行かないという事実だけがカイに伝われば良いのだから。

 

 カイの顔が少し上がって、春久を見ている。

 「夏のキャンプも、戸野原さんと垣内は家族総出になるだろうから、最初から日程と場所だけ伝えて、来るなら現地集合にするつもりだった。お前とは一緒に走る。

 飯だけ一緒に食って、少し子供の相手をしたら、向こうは子供たちに引っ張られて早々にテントに戻るだろう」

 家庭人と春久たちの優先順位は違うと口にする。

 「お前と一緒になら星を見るために寝転がっても良い。俺には同じ独身仲間のお前の方が気易いんだ。挨拶や日常会話が出来ていれば充分だと思っている。お前と垣内との距離感は今のままで良い。俺を放って二人でツーリングに行ったら、俺の方が怒るかもな」

 何とか安心させようと言葉を探していたら、カイは少しだけ泣きそうな顔で笑った。

 

 「仕事を離れてストレス発散させてくれる友人はお前が一番だ。もちろん垣内も大事な友人だが、お前とは別だ。判るか?」

 カイは小さく首を傾げた。

 「友人はみんな立ち位置が違う。俺にとってこうやって休みに一緒に遊べる友人は貴重なんだよ。だから、少しは自信持ってくれ」

 春久が笑えば、カイもほんの少しだけ眉根を顰めて今度はもう少し深く笑った。

 

 「だいたい、垣内と行くとすれば仕事終わりに、あいつが嫁さんから許可を貰えた時の飲み会ぐらいだ。休日の昼日中から引っ張り出してたら、家族に恨まれる」

 独身と家族持ちでは、どうしたって立ち位置が違う。

 「その上、戸野原さんにも言われた。俺は人付き合いが淡泊なんだと。だから離婚もあっさりだったし、それ以降、彼女を作ろうともしてない」

 少し間を置いて、肩をすくめる。

 「まあ、うちの職場は二十四時間三百六十五日フル稼働の、やくざな仕事だろう? 完全にタイミングを逃した気もする」

 テーブルに肘を突き、掌に顎を載せた。

 「このまま一生一人でも、別に構わないと思ってる。だからせめて、お前が独身の間ぐらいは遊んでくれ」

 その目の前で、カイは白いフラッペから、少しずつ氷の部分を春久のコーヒーに入れている。

 一応、何も言わずに見ているが、白だから区別の付けようもなく、シロップも一緒に放り込まれているだろう。

 ――それ、甘いんだが。

 

 赤白同量程度になったのを計っているかと思えば、今度は両方を一つに纏めた! 春久の思考の遙か斜め上の行動をするカイに、思わず呆気にとられていた。フルーツは適当に食べていたから、半分近く溶けた赤いフラッペ一人前の出来上がり。

 赤白混ぜたのに、赤の透明度が増しただけでピンクにならないんだなと、一瞬思考が飛んでいた。もちろん白のシロップは透明で、白く見えるのは氷の反射によるものだと認識していたが、それでもいきなりの行動に頭が付いていかなかった。

 目の前のアイスコーヒー。薄い氷が霜のように表面に少しだけ浮いている。一口飲んだ。飲んだ直後はあまり影響は感じなかったが、舌に甘みが残る。

 「これ以上入れるなよ」

 カイの行動は否定しない。制止だけすれば「判った」と素直に頷くのだ。

 腕白坊主だけど素直でダメだと言われればきちんと止める、だったら後は信用してやりたいようにやらせる、カイの扱い方はそれで良いのだと思う。

 

 カイはひとまとめにしたカップにストローを奥まで入れて、吸い込んだ。かき氷をそんなに一気に飲むと……思った通り両こめかみを押さえている。

 「ハルさん。ご飯。飲み物これで良いから。てか、これだけじゃ頭に響くからご飯食べたいです」

 冷たさは頭に響いても、甘さは平気らしい。

 「何が食いたい?」

 「買ってくるよ。俺が奢りだよね? ハルさん、何が良い?」

 先ほど、氷を奢る時の軽口を覚えている。奢る気になっているのであれば、それに甘えるのも有りだ。自分が言い出しておいて断るのも角が立ちそうだし、別の時に奢れば良いだけなので。そうやってこれからも付き合っていける関係でありたいとの願いも込めて。

 「見てくる。席で待っていてくれ」

 

 立ち上がってフードコートの中をぐるりと回るついでに、熱いお茶がフリードリンクであるのを見つけ、二人分入れて持ち帰った。カイがまた、こめかみを押さえている。学習しない奴。

 「ほら」

 春久が出したお茶を見て「ありがと」と言いつつ、吹き冷ましつつ一口飲んでいる。それからまたフラッペに。

 「お前は」

 かき氷頭痛は趣味か?わざとか?と問いたい。

 ああそうか。一般的な社会人でこんな事をする奴を見たことが無い。やって集団意識で騒ぐ大学生ぐらいまで? 他にも居るのかも知れないけれど春久の知る限りでは、カイだけだ。春久の代わりにここに垣内が居たのなら、何をやってるのかと眉を顰めるだろう。けれど春久は嫌では無いのだ。「少しは考えて飲め」と口に出来る距離に居る。その上で、春久が折角買った二人分、春久には甘すぎたそれを廃棄すること無く飲んでしまえるようにとの気遣いも判るから、何も言わずにお茶を差し出せる。

 

 「俺は親子丼。お前が以前作ってくれたのを思い出したんで、それが良い。お前は?」

 「適当に見てくる」

 こめかみを再度押さえてからお茶を飲み、それでカイは荷物を持って立ち上がった。フラッペは半分近くに減っている。一気に飲み過ぎだ。

 

 しばらくしてカイが戻ってきた。二人の間に番号札を置く。

 「ハルさんは親子丼セットにした。味噌汁付き。冷たい物ばっかりだと体を冷やすからね。俺は半ちゃんラーメン」

 「わかった。ありがとう」

 その後は番号が呼ばれるまで、カイは時々フラッペを口にしてこめかみを押さえてはお茶を飲むの繰り返しだ。

 「学習機能は無しか?」

 つい、笑いながら問えば、「折角のかき氷が溶けてしまうから」と止める気はサラサラなさそうだ。

 

 カイの番号が呼ばれ、立ち上がろうとするのを制して、春久が取りに行く。

 「伸びるから先に食べろよ」

 カイの前に盆を滑らせそう言えば、「いただきます」と箸を持って両手を合わせる。このあたりは行儀が良い。擦れてないなぁと見ているうちに、春久の番号も呼ばれた。

 親子丼セットは、味噌汁と漬け物、茶碗蒸しが付いていた。食うか?と茶碗蒸しを見せたが、カイは首を振った。彼の目の前のラーメンと半分チャーハンで充分らしい。その盆の隅に、まだ残っているフラッペまで置かれているのは、食事の後でまだ手を付けるつもりらしい。本当に律儀な奴だ。

 

 ところで、と、春久は休憩を入れる寸前までの行動を思い起こしつつ

 「今までのところで欲しいものというか、気になった物は有るのか? あれなら戻っても良いし、無ければ続きを歩いても良い。このままここでだらだらしても良いぞ? 車の中は熱そうだからな」

 ひとまずサンシェードはセットしたけれど、暑いどころか、熱い、だろう。フードコート以外に普通のレストランもあるので、ショッピングモールで涼しくなるまで時間を潰して夕食を奢っても構わない。魚も肉も有ったのは確かめた。財布の中には現金もカードも有る。

 「もうちょっと見たい。おしりに根っこが生えそうだから」

 「あれなら年齢制限有りの映画に連れて行ってやろうか?」

 カイは思いっきり嫌そうな顔をしている。

 「グロいのもエロいのも気持ち悪いからお断り」

 「そうか。そうやってちゃんと好き嫌いを口にしてくれると助かる」

 春久の口元が緩むと、カイの口元も同じように綻んだ。ハッキリ聞いたのは初めてだったが、ここでも戸野原の言っていたことが当たっていた。刺激の強いものが苦手なのだ。

 垣内は放っておけば下世話な冗談も平気で口にする。自分の子供たちが居るときはもう少し健全な話題だろうけれど、カイのような見た目普通の社会人相手に遠慮させるのも難しい。二人には当たり障りの無い会話で留めておいて貰うのが一番良さそうだ。

 

 「明日は早いのか?」

 「テレワークにしてるから、出勤が無い分ゆっくり出来る。夜は判んないけど、やっぱり移動が無い分、出社するよりは早く解放される。気持の切り替えが難しいけどね」

 「そうか。なら良い」

 「なので、今日はゆっくりしてても大丈夫。ハルさんの靴も見るよね」

 今日の解散時間を何時にするかと考えて明日のことを確認したのだが、きちんと通じていたようだ。会話が成り立つことに安堵して、それが何度でも嬉しくなる。

 「そうだな。良い物が見つかればとは思っている」

 

 歩いている途中、ベンチに座れば、カイは自分の水筒を出してきてお茶を飲む。春久は自動販売機に直行だ。形が崩れるからジャケットのポケットを膨らませるわけにもいかず、飲み終えるまでは動けない。かといって、毎回飲み干していると頻繁にトイレを探さなくてはいけない羽目に陥る。ペットボトルならまだ持ち歩いても人にぶつかって汚すことも、誤って零すことも無いかと、持ち運ぶことに決めた。

 「ん」

 声に見れば、カイが自分のトートバッグを開いている。

 「入れといて良いよ」

 ああ、そう言う気遣いも有るのかと、カイの少し大きめのバッグの意味を知った。

 「頼む」

 すっとバッグにペットボトルが入っていく。

 「タブレットに当ったり濡れたりしないだろうな?」

 同じバッグに入っているはずのタブレットを故障させては大変だと、念押しをした。

 「ファスナー付きポケットに入れてるから大丈夫。あ、ちょっと待って」

 そう言うとカイは、今度は自分が自動販売機に行き、水のペットボトルを買った。またベンチに座り、バッグの中から顆粒茶を出してきて水筒に注ぎ、そこに冷たい水をいれた。残った数口分の水を飲み干して、ペットボトルを所定の場所に捨てる。

 

 「お待たせ」

 春久も立ち上がった。

 「そうか。水筒なら冷たいまま飲めるな。保冷剤より確実だ」

 「空の時は邪魔だけどね。でも、俺は便利に使ってるよ」

 「俺も水筒を買うかな。職場でも冷たい飲み物は出しっ放しになるから次に飲むときは温まっているんだ」

 冷たいペットボトルを購入しても、一々冷蔵庫に戻すことも無い。席を空ければ、机の隅で徒に温まっていくだけだ。気をつけないと周りの書類を巻き込んで。水滴が染みこんでしわになった書類は目も当てられない。珪藻土のコースターなら吸水性があるからと、カイからツーリング土産で貰った。最初は自分が気に入って、どうせならと春久の分も考えてくれて。それを使い始めて書類の水没案件が格段に減った。一年以上も前だ。

 ただ、コースターでは保冷にはならない。

 「ツーリングの時でも何処でも適温の飲み物が飲めるからね」

 夏の暑い盛りだけで無く、冬場に凍えるときも。

 

 「本当はもう少し大きめのが欲しいなと思ってるんだ。一日出るときは足りないし。後は保冷ボトルかなぁ。氷持って行けるから」

 「氷なら保冷バッグ有るぞ? 山の上に持って行く奴だろう?」

 次のキャンプは四人で山の上だ。それなら既に有るのだからと言えば

 「保冷バッグの氷は溶けるからね」と、少しズレた答えが返ってきた。

 いや、氷は溶けるだろう? それは自然の摂理だろうと思う。

 「氷専用のボトルなら溶けづらいから。保冷バッグに入れるのは凍らせた保冷剤の方が良いと思う。でも、冬場を考えたら保温保冷両方出来る方が良いかな。でもってそうしたらコップ別だね。シェラカップでも良いんだけど。授業の時は目立つかな」

 確かに、タンブラーなら机の上に置いても違和感は無いが、アウトドア感むき出しのシェラカップは目立つだろう。第一、教室などの公的な場所では蓋付きでないと、腕やノートが当たって零したときが大変だ。

 「コップはセラミック加工されているのか、チタンとかが良いね。金属臭が無いから」

 「今のは?」

 「セラミック加工されてる奴だよ。ああでも、あまり大きいと重くなるかな。車だったら中身を詰め替えれば軽くて済むけど」

 腕を組んでう~んと唸るカイを見て、春久は肩を叩いた。

 「現物見て決めれば良いだろう」と、歩みを促した。カイはにこりと笑って歩き始める。今日気に入る物が見つかるかどうか、いざとなったらネットで探すことも出来るだろうから、今日はカイの普段の運動不足を解消するつもりで歩き回るのも良いか、と、春久もすぐに続いた。


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