ティベリウムの上の影
ティベリウムの街は、恐怖という見えない霧に包まれていた。それは、古びた迷信と、冷たい科学の理性の間で揺れ動く、人々の心に忍び寄る影だった。学生であるカエルは、ただその流れに身を任せるだけの存在ではなかった。彼は、この世界に潜む不協和音、そしてその背後にある真実を探求する旅の渦中にいた。
この章では、カエルの日常が徐々に非日常へと変貌していく様が描かれる。学校のカフェテリアで、友人たちとの間に交わされる奇妙な会話。社会科学の授業で、信仰と証拠の境界線が問い直される瞬間。そして、静かな医務室や修道院の図書館で、彼自身の存在と、この世界に隠された謎が、少しずつ彼の心を蝕んでいく。
これは、神聖なものと人工的なものの間に横たわる疑問、そして自己の存在の理由を問う物語の始まりだ。
シーン1 - ヴェルカン地区、午前7時45分
街はノイズと共に目覚めるが、その呼吸はゆっくりと、不本意だ。通りは半ば空で、コンクリートの奥深くにある何かが一日を始めることを拒んでいるかのようだ。
カエルは歩く。
彼の足音は、時間と共に染みついた壁に反響する。遠くには、霧に広がる鏡面タワーの列。近くには、広告とホログラフィックの祈りで散らばった狭い路地が、宗教的な落書きの横にちらついている。「彼はあなたを見ている」「今、バランスを取れ」「一神教、あるいは無神論」。
カエル(ナレーション): 「毎朝、ティベリウムはマスクを選ぶ。時には科学。時には迷信。今日は...恐怖の方に傾いている。」
彼は埃っぽい店の窓の前で立ち止まる。彼の反射像が彼を見つめ返す。青白い肌、くぼんだ目、バックパックの重さの下でわずかに前かがみになった姿。
カエル(ナレーション): 「僕はいつもこんな感じだった。薄れていくエコーのように。二度印刷された線のように。無視するには大きすぎるが、重要になるには静かすぎる。」
彼はバックパックのストラップを調整し、歩き続ける。灰色の景色に飲み込まれていく。
シーン1.5 - 公衆トイレの鏡、午前10時02分
蛍光灯が頭上でブーンと音を立てる。カエルは冷たい水を顔に跳ねかけ、鏡の中の自分を見つめる。
彼の指は目の縁の近くでためらう。
カエル(ナレーション): 「もし僕が反射に映らなくなったら…誰か気づくだろうか?」
彼は反射から目を逸らさずに手を拭き、外へ出る。
シーン2 - 学校のカフェテリア、午後1時05分
ノイズが彼らを囲んでいる。トレイがガタガタと音を立て、椅子が擦れ、声が重なり合う。世界は混沌としているが、奇妙に均一な制服を着ている。カフェテリアの隅の奥には、中心から切り離されているが、何か静かなものに縛られた三人の生徒がいる。
リナ・イェラー。カーリーヘア、分厚い眼鏡、絶えずタブレットを叩く指。彼女は細いワイヤーの上で揺れている信念のように、神経質なエネルギーを放っている。
リナ: 「パターンを見つけたわ。見て」—彼女は地図を広げ、テーブルの上に広げる。—「宗教的な崩壊はすべて、三角形を形成する地点で起こったの。完璧ではないけど、地図上では十分に近いの。」
マルコス・セン。広い肩、フードを肘までまくっているが、目は鋭いまま。顔には永続的な薄笑いが浮かんでいる。
マルコス: 「—0.01%の確率か。あるいは100%、もしそれがアルミホイルの帽子をかぶった男からのものなら。リナ…これはWi-Fiで幽霊を見つけるようなものだ。」
カエルは地図を黙って見つめる。
そして、彼は—落ち着いて、冷静に、感情なく—話す。
カエル: 「—問題はそれが本物かどうかじゃない。問題は、なぜそれが人々をこんなにも深く揺さぶり続けるのか、だ。」
リナは彼を研究する。彼女はまばたきをする。
リナ: 「—あなたは怖がっていないような話し方をするわね。」
カエルは目の前の手つかずのパンを見下ろす。
カエル: 「—たぶん、そうだった。たぶん、それは去っていった。」
カエル(ナレーション): 「あるいは、恐怖は形を変えたのかもしれない。そして僕はそれと戦う代わりに、それに餌を与え始めたのかもしれない。」
シーン3 - 社会科学の授業、午後3時12分
教師はゆっくりと教卓まで歩き、沈黙を引きずっていく。
彼女の後ろでは、プロジェクターがニュース記事を映している。「宗教現象後に子供がサンスクリット語を話す」。その下には、血の涙を流した像のぼやけた写真がある。
教師: 「—これらの出来事を確認するために委員会が形成されています…しかし、本当の疑問はこうです。もし神が証拠を残したら…信仰は必要なくなるのか?」
沈黙。
後ろの生徒がぼそりとつぶやく。
生徒: 「—ああ…それはゲーム全体を台無しにするだろうな。」
カエル(ナレーション): 「もしマジシャンがトリックを明かしたら…幻想は死ぬ。しかし、もし神が真実を明かしたら…代わりに何が死ぬのだろうか?」
プロジェクターがちらつく。誰も息をしない。
シーン4 - 医務室、午後4時40分
カエルは医務室のベッドの端に座っている。彼のジーンズは膝のところで破れ、小さな痣がすでに黒ずみ始めている。
看護師(彼の脈をチェックしながら): 「—あなたの心拍は、あなたの年齢の人にしては異常に低いわ。あなたは走るの?」
カエルは肩をすくめる。
カエル: 「—何かに追われていない限り、僕は走りません。」
看護師(微笑む):
看護師: 「—それが決して起こらないことを願う
わ。」
彼女は診察を終える。カエルはしばらく座ったままで、心臓モニターがゆっくりと鳴り続けるのを見つめる。
カエル(ナレーション): 「身長:1.78。体重:低い。目:暗い。診断:安定。結論:忘れられる。」
彼は立ち上がり、静かに看護師に感謝を言って、出て行く。
シーン5 - 修道院の図書館、午後6時20分
見えない儀式からか、お香の香りが漂っている。
カエルは本をめくる。ほとんどのページはぼやけている—古すぎるか、難解すぎる—だが、彼の指は何かの上に止まる。
厚い紙。ひび割れた革で装丁されている。
黒いインクが時間と共に薄れている。
円。壊れている。六つのマークがはっきりと刻まれている。七つ目は…かろうじて見える。
カエル(ナレーション): 「七。いつも七。しかし、この一つは…まるでその意味を恐れているかのように。」
彼の後ろで物音がする。彼は振り向く—誰もいない。
彼は本を閉じ、そのイメージを心に焼き付けたまま立ち去る。
シーン6 - カエルの部屋、夜
彼の机は一つのランプに照らされている。外では、都市が暗い雲の毛布の下でブーンと音を立てている。
カエルは動かずに座っている。目の前には、一枚の紙。リスト。彼自身の疑問。
なぜ?
他の人たちはどこにいる?
もしこれが神聖なものではなく…人工的なものだとしたら?
彼は背もたれにもたれかかり、天井を見上げる。
カエル(ナレーション): 「彼らはそれを『神聖な選択』と呼ぶ。しかし、もしそれがただの…テストだとしたら?」
彼はペンを手に取る。
そして、もう一行書き加える。
カエル: 「—もしバランスが壊れたなら…誰がそれを壊したのか?」
コデックス・グノーシス・デイ - 断片III
「選ばれた者は七人だったが、一人残されなければならなかった。そして、残された一人は、他の誰よりも多くを見た。」
「世界を歪めるのは信仰ではない。あまりにも遅れて疑問を投げかける人々の沈黙なのだ。」
夜が深まり、ティベリウムの街が眠りにつく頃、カエルの部屋にはただ一つのランプの光が灯っていた。彼が紙に書きつけた最後の疑問—「もしバランスが壊れたなら…誰がそれを壊したのか?」—は、単なる好奇心ではなかった。それは、彼自身の運命と、彼がまだ理解しきれていない世界のルールを問い直す、静かな反抗だった。
図書館で見つけた「七つのマーク」と、その最後の「沈黙する一つ」のイメージが、彼の心に焼き付いている。そして、古い書物に記された「あまりにも遅れて疑問を投げかける人々の沈黙」という言葉が、彼の胸に重くのしかかる。
この夜、カエルは知らず知らずのうちに、一つの道を選んでいた。それは、恐怖に餌を与える道ではなく、その正体を暴き、崩壊し始めた世界のバランスを取り戻すための、孤独な戦いの始まりだった。彼の物語は、今、まさに幕を開けたばかりなのだ。