疑う者たちの重み
静寂に包まれた教室の片隅、カエルは世界から隔絶されたように座っていた。彼の心の中で渦巻く疑念は、教授の言葉が描く一神教の世界をかき乱す波紋となる。信仰が絶対的な証明とされるこの世界で、彼は真実と信仰の間に横たわる、決して埋まらない溝を見つめていた。それは、やがて彼の個人的な闘いから、世界そのものの均衡を揺るがす戦いへと変貌していく兆しだった。
古い神々の奇跡がささやかれ、新たな神の権威が揺らぎ始める中、カエルは自らの疑いが単なる個人的な反逆ではないことを知る。それは、古代のサイクルを再び呼び覚ます、力強い導火線だったのだ。この物語は、すべてを疑う一人の若者が、世界に隠された真実の片鱗を掴み取る旅の始まりである。
シーン1 - タイベリオン学院、哲学教室、午前8時12分
薄暗く、だだっ広い教室。ネオンライトがかすかに点滅している。壁はくすんだ灰色で、ギリシャ哲学者の古いポスターが破れてぶら下がっている。空気は重く、埃さえも耳を澄ませているかのようだ。
(教室には24人の生徒。何人かは机に頭を伏せている。また、何人かは机の下でスマホをスクロールしている。
最後から2列目にいるカエルだけが背筋を伸ばしている。彼に当たる光はなぜか弱く、まるで世界そのものが彼を避けているかのようだ。)
ダリエン教授:
「…そして、多神教文化はゆっくりと一神教に取って代わられていった。
力はもはや多数の中にはなく…ただ一人の中に存在するようになった。
全てを見渡し、全てを裁き、全てを約束する者の中に。」
カエルのナレーション(一人称):
「全てを約束し、全てを要求する…だが、それを誰が証明する?
それが現代の神々の問題だ。彼らはもはや雷のように恐れられてはいない。彼らは裁きのように恐れられている。」
(カメラが下がっていく。彼のノートの、白紙のページの中央に、黒いインクで書かれた一つのフレーズ。真っ直ぐで、汚れ一つない文字。)
「真実 ≠ 信仰」
シーン2 - 学校の廊下、休憩時間
窓の高い、長い廊下。生徒たちは、使い古された金属製のロッカーの間を影のように歩いていく。彼らの足音の反響は、彼らの声よりも大きく響く。
おしゃべりな女子生徒:
「聞いた?北の方で、アメン・ラーの像が血の涙を
流したんだって。昨日のニュースでやってたわ。」
懐疑的な男子生徒:
「ふん、どうせトリックか化学物質だろ。」
おしゃべりな女子生徒:
「違うの。てんかん持ちの子供がそれに触れたら…サンスクリット語を話し始めたんだって。聞いたこともない言語なのに。」
(カエルは彼らの横を、脇に本を抱えて通り過ぎる。彼は立ち止まらない。カメラは彼の後ろから彼を追い、そのささやき声は彼の足音とともに薄れていく。)
シーン2.5 - 倫理学教室、予定外の討論
小さな部屋で、椅子が半円形に並べられている。「宗教討論クラブ - 任意活動」と書かれた看板がある。生徒は約8人。カエルは隅に座り、沈黙している。一つのフレーズが彼を刺激するまでは。
狂信的な生徒(毅然とした声):
「これほど多くの偽りの神々が存在するからといって、唯一の真の神が少しでも現実味を失うわけではありません。神に証明は必要ありません。信仰こそが証明なのです。」
カエル(冷静だが鋭く):
「もしその信仰が、ただ受け継がれた響きに過ぎないとしたら?
疑いを持たない信仰は強さではありません…魂のない伝統です。」
生徒:
「じゃあ、何をすればいいんですか?全てを疑えと?」
カエル:
「疑いは真実を破壊しない。
疑いは、真実を恐怖から切り離す。」
(沈黙。司会者は仲裁しようとするが、誰も言葉を発さない。)
カエル(締めくくり):
「もしあなたの神が、一つの質問に腹を立てるのなら…
あなたの神は答えを恐れているのです。」
(カメラは司会者に焦点を当てる。一筋の汗が彼のこめかみを伝い落ちる。誰も笑わない。誰も何も言わない。カエルは立ち上がり、去っていく。)
シーン3 - 修道院の図書館、午後5時44分
その場所は時間が止まっているようだ。高く、曲がった棚は軋む木でできている。カエルが分厚い本の山に手を走らせると、埃が雪のように舞い落ちる。空気は古い紙と、古代の香…そして何か別のもの、金属的なものの匂いがする。
(カエルは分厚い古書をめくる。宿題をしているのではない。彼はパターンを探しているのだ。彼が見始めた言語に一致する図やシンボルを。)
(彼の指が、ある挿絵で止まる。)
「7つに分けられた円、それぞれに秘術のシンボルが描かれている。
下に、古いゴシック体で:
『均衡は砕かれた。』」
カエルのナレーション:
「私には見えていた。あのシンボルは私のビジョンの中にあった。
7つの封印を持つ円。もしこれが『コデックス』からのものなら…それは新しいものではない。それは一つのサイクルなのだ。」
シーン4 - カエルの部屋、夕暮れ
四角い部屋。簡素に整えられている。本はテーマごとに整理されている:
哲学、心理学、比較神話学、神学、無神論、グノーシス主義。
(彼の机から発せられる温かい光と、壁に忍び寄る闇が対照的だ。外の世界はすでに見えなくなっており、ガラスには彼の反射だけが残っている。)
(カエルは背筋を伸ばして座り、虚空に視線を固定している。ペンが指の間で回転し、何も書かれていない。)
カエルのナレーション:
「最初の先生に疑問を投げかけた時、私は叩かれた。
家族に疑問を投げかけた時、私は追放された。
今、私は世界に疑問を投げかける…そして世界が応え始めた。」
(カメラは窓に焦点を当てる。蒸気が形成され始める。見えない指によって描かれた一つのシンボルが現れる: 7つの円。)
シーン5 - 地下鉄のホーム、午後7時20分
(カエルは人気のないホームを歩いている。電車はちょうど出発したところだ。古いスクリーンの柱には、ぼやけたニュース放送が流れている。)
カエル(静かに):
「また君か…」
ニュースキャスター:
「…サン・タレム教会の突然の崩壊について、地元当局は依然として説明がつかないままです。
目撃者たちは、崩壊の前に『人間ではない』声を聞いたと話しています。
祭壇には、石に焼き付けられたフレーズがありました: 『均衡は触れられた。』」
カエルのナレーション:
「まず、私の確信が壊れた。
今、神殿が壊れている。」
シーン6 - カエルの部屋、深夜
(彼が戻ってくる。全ては静かだ。しかし、彼のノートはもはや白紙ではない。あのシンボルが再び現れている――完璧で、黒く、新鮮なまま。)
(一つの声が聞こえる。外からではない。それは内なるものだ。古く、性別も言語もない。それはカエルがすでに理解しているものを介して語りかける。)
声:
「七つの印。」
「七つの選ばれし者。」
「信じない者。見ることのできる者。」
「均衡は修復されることを望んでいない…支配されることを望んでいる。」
カエル(低い声で):
「もし私が関わりたくないと言ったら?」
声:
「お前はもう関わっている…疑うことで。」
コデックス・グノーシス・デイ – 断片II
「純粋な信仰は山を動かす。
だが、純粋な疑いは天国を打ち倒すことができる。」
「均衡は献身によって保たれるのではなく、知識によって保たれる。
無知な者は仕える。
疑う者は…乱す。」
暗い部屋に戻ったカエルの心は、静寂の中、未だに響く声に支配されていた。ノートに浮かび上がったシンボルは、彼が疑うことで開いてしまった扉の証。それは、彼がもはや傍観者ではいられないことを意味していた。
「七つの印」「七つの選ばれし者」。そして、「疑うことで、お前はもう関わっている」。
この言葉は、彼の個人的な葛藤が、古代の予言と結びついていることを示唆している。そして、コデックスの断片が語る「純粋な疑いは天国を打ち倒す」という言葉は、彼の内に秘められた力がどれほど危険で、そして偉大なものかを物語っていた。
もはや信仰は安らぎではなく、疑いは孤独な反逆ではない。カエルは、世界の均衡を乱す「疑う者」として、定められた運命の道を歩み始めたのだ。彼の旅は、これからさらに深く、そして暗い闇の中へと続いていくだろう。