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DIVINVM  作者: KennetWrites
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禁じられた質問

この世界は、真実と嘘で織りなされている。

誰もが知る穏やかな日常の裏に、誰もが知らない深淵が横たわっている。

ただ一つの問いが、その世界の帳を押し開けるまでは。

これは、神々の存在を疑った少年が、その神々の戦争に巻き込まれていく物語の始まり。

時計が午前11時23分を指していた。哲学の授業に響く遠いざわめきは、どこか遠い国の噂話のように聞こえ、カエルはそれをほとんど意識していなかった。彼の意識ではなく、むしろ彼の潜在意識がじっとしていることを拒否していた。ノートに視線を落としながら、鉛筆の先は紙に何も描かずに止まっていた。ノートにメモはなく、彼の心が埋めようと必死になる空白だけがあった。やがて、その鉛筆の先は、教室の眠たげな雰囲気とは対照的な、確固たる動きで動き始めた。


彼はただ一行の文章を書き記した。


「もしすべての神が同時に真実を語るとしたら、どうなるだろうか?」


教室は完全に静まり返っていたが、誰もそれに気づいていないようだった。ただ一人、教授だけが腕を組み、片方の眉を上げて彼を見ていた。教授の鋭く乾いた目が、彼を見つめていた。


「カエル」と、教授は静寂を破るかのように、鋭い声で言った。「私の授業で一体何をしているんだ?」

カエルは視線を上げず、ページに目を落としたまま答えた。「失礼なわけではありません…ただ、考えているだけです」


教授の顔に、皮肉に満ちた薄い笑みが浮かんだ。「ああ、考えていると。では、我々を啓蒙してくれたまえ」


カエルはゆっくりと顔を上げた。彼の深く、真剣な目が教授の目と交差した。その答えは、まるで揺るぎない真実であるかのように口からこぼれ落ちた。


「もしすべての宗教が真実だとしたら、そのうちの一柱の神は嘘をついているはずです。そして、もし一柱でも嘘をつくのなら…皆が嘘をつく可能性も否定できません」


教授は何も言わず、ただ沈黙した。クラスメイトたちの間から神経質な笑い声が漏れ、やがて消えていった。緊張が和らぎ、カエルは再び視線を落とした。彼は、先ほどと同じ確信を込めて、ページの隅に一つの言葉を書き記した。それは、彼の思考の結論であるかのようだった。


疑念。


その日の午後、カエルは街の古い地区を歩いていた。空気は重く、湿気と古紙の匂いが街路に染み付いていた。彼は方角ではなく、むしろある感情に導かれるように、忘れ去られた場所へと向かっていた。噂では誰も訪れないという、とある修道院の図書館が彼の目的地だった。


木製の扉が軋む音を立てて開き、抑圧的な暗闇とカビの強烈な匂いが広がった。カエルはそこで見つけたろうそくに火を灯し、その弱い光が果てしなく続く書架の通路を照らした。彼はその中を歩き、本の背表紙を眺めていたが、ある一冊が彼の注意を引いた。それは黒い革の表紙で、タイトルはなく、ただ一つの記号が刻まれていた。円の中に三角形があり、その各頂点に目が描かれている。棚の最上段には、「コーデックス・グノーシス・デイ」という名が記されていた。


彼は本を開いた。ページはすべて空白だったが、ただ一ページだけ、淡い光を放つ文章が書かれていた。ラテン語、ギリシャ語、アラビア語、日本語など、複数の言語で書かれたその文章は、こう告げていた。「これを読み、理解する者は、最後に死ぬだろう。」


「意味がわからない…」とカエルはつぶやき、背筋に悪寒が走るのを感じた。彼はその場で動けなくなった。誰かに見られているような気がしたのだ。


フードを被った人影が、書棚の上にじっと立っていた。呼吸も言葉もなかった。ただそこに存在していた。


その人影が口を開くことなく、深く、この世のものとは思えない声が部屋に響き渡った。


「君は虚無を信じている…だからこそ、すべてを見ることができるのだ」


カエルは何も恐れぬ者の冷たさで振り返った。「君は誰だ?」


「私は…ではない。私は観察している。君は…神の数式における間違いだ」


そして、その人影は現れたときと同じくらい素早く、暗闇の中に溶けて消えた。カエルはただ一人、その言葉の反響と、ろうそくの淡い光の中に残された。


その夜、自分の部屋に戻ったカエルはベッドに座り、まだその出会いの衝撃から立ち直れずにいた。目を閉じ、再び開けると、理解不能な光景が広がっていた。街を行く人々の頭上に、名前が浮かんで見えたのだ。「ヤハウェ - キリスト教の信仰」、「ウィツィロポチトリ - メキシカの遺産」、「カルマ - 仏教の輪廻」。人々は、気づかないうちに目に見えない重荷を背負っていた。


好奇心から、彼は鏡を覗き込んだ。自身の頭上には何もなかった。ただ虚無だけがあった。彼は解放感と恐怖を同時に感じた。


翌日、悲劇がカエルの人生に突然訪れた。無神論者だと公言していたクラスメイトが、自ら命を絶ったのだ。警察が見つけた遺書は、カエルにとって忘れられない、恐ろしい言葉だった。「私は無神論者だと告白した。彼らは私を罰した。私には見えたのだ。私が否定した、あの神が…」


自分の部屋に戻ったカエルは、壁に以前はなかった何かを見つけた。それは、ヘブライ語の神の名が逆さまに刻まれた記号だった。その記号に触れると、彼の心に幻影が押し寄せ、現実から引きずり込まれる感覚に襲われた。


彼は暗く無限の空間にいた。その周りには、玉座が円形に浮かんでいた。それぞれの玉座には神が座っていた。ゼウス、イエス、ブッダ、シヴァ、ケツァルコアトル、アッラー。神々は口論し、その声は耳をつんざくような轟音で響いた。カエルは、彼らが皆、支配を求めていることを理解した。しかし、彼らは人間界に直接介入することはできず、人間の代表者を必要としていた。その混沌の中で、彼はある深い真実に気づいた。彼は彼らの誰からも選ばれていなかった。それが、彼らの目から彼を不可視な存在にしていた。


そして、それが彼を自由にしたのだ。


自分の部屋に戻ると、カエルはノートと鉛筆を手に取った。疑念は消え、今や他の誰にもない確信がその空虚を満たしていた。


彼は書き始めた。「地獄は存在しない。存在するのは、ただ偽りの思想に囚われた心だけだ。」

ページ越しに、彼は部屋の暗闇を、まるで向こう側に誰かがいるかのように見つめた。

もし神々が私を恐れるのなら…それは、私が服従す


るために生まれてきたのではないからだ。

そして、彼の部屋の暗闇は、より深く、より心地よく、可能性に満ちているように思えた。


世界は、カエルの前でその顔を変えた。

彼はもう、教室で疑問を抱く一介の学生ではない。神々の視界から外れた存在。数千年の嘘から生まれた、ただ一つの空白。

これから始まる道は孤独だ。信仰という名の鎖に縛られた世界で、彼はその自由という名の刃をどう使うのか。

物語は、まだ始まったばかりだ。

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