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君。呼びかけに答えてはくれないか。

作者: Mea

世界の始まりが彼であるなら、世界の終わりも彼であるだろう。







「誰かの物語を書いている。」


ーーと。君は言った。


そんな馬鹿な。


「君は、正真正銘の作家じゃないか。自分はゴーストライターだとでも言うつもりか?」


呆れた様に鼻から息を吐きながら、投げかけた言葉に、彼は一つ瞬きをして口を開いた。


「そうかもしれない。」


ふざけているとは思えない、真面目な表情で。


「言葉を綴るのは俺だ。」


ーーでも。


「言葉を生み出すのはーーー」


ーーー誰だというのか。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




分からずじまいの謎がある。


分からないからこそ、『謎』であるという戯言は置いておく。


かつて俺に、到底理解できない言葉を吐いた友がいた。


いや、彼が亡くなったとかではなく。


彼との仲が悪くなった訳でもない。


今でも、親友と呼べるとまではいかないが、それなりに仲の良い友人として接している。


ある晩、彼と飲みに行った居酒屋で、ふと。


「そういえば、あの時。」


結局お前は何て言ったんだっけ?


あの時を思い出して、投げかけた言葉に彼は。


「そんなこと言ったか?俺が?」


果たして、問いの答えは得られぬまま。


浮かんだ疑問は浮かんだまま、宙に揺蕩いゆらゆらと。


俺の思考を漂っている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




終ぞ解けない謎がある。


「ーーー成程。これは。」


ーーー成程。



終ぞ解けない謎がある。


かつて彼が言った言葉の続きか。


果たして、彼がソレを忘れたと言った理由か。


後者はともかく前者は。






ーーーああ。もう。


まどろっこしいのは無しにしよう。


なぁ、君。


そう、君だよ、君。


ーーー静かに。


声は出さないで。


こちらの言葉が見えているならば、一つ瞬きをしてくれないか。


それから、一つ。


頼みがある。


君、僕と彼を隔てる壁の向こう側にいるだろう?


つまりは君。そうだとも。


君は、彼と同じ世界にいる。


ーーーそうだろう?


なぁ、君。


お願いだ。


一生に一度の願いだとも。


君、彼のその手を止めてはくれないか。


粛々と言葉を綴り、自らが生み出した世界の幕を今にも下ろさんとする。彼の手を。







ーーー君。


僕の嘘に気付いているなら。


一つ瞬きをしてはくれないか。


ああ、白状しようとも。


僕は、彼の友人ではないし、彼との会話も全くの出鱈目だ。


真に一つ、正解があるなら、きっと、彼が「誰かの物語を書いている。」唯それだけだ。


上げた幕の舞台の上で、一度もスポットライトを浴びることなく全てを見届けて、幕を下ろす。


ーーーそれが、彼の仕事?


そうだな、そうだろうとも。


ただ、君。


君は一度でも舞台の上の人物の行く末を、彼らが、ーーーつまりはまぁ、僕らが、生まれてから死ぬまでの一部始終を見たことがあると言うのか。


舞台の半ばで消えたスポットライトの下を見たことは?


ああ、こんなのもあるぞ!


開幕したはずの舞台が一夜にして消え去った!


跡形もなく。


周囲の奴らはてんやわんやだ。


無理もない。


昨日まで確かにあったものが、急に無くなるんだからな。









まぁ、兎も角。


俺と約束をしてくれないか、キミ。


俺の舞台の幕を今にも下ろさんとする、あの男を。


男が舞台の幕に手をかける前に、その手を掴んで止めてくれ。






















キミ。


ーーー頼んだからな、確かに。


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