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2話

「入るわよ……」

ドメニカの顔が赤い。 急に呼ばれて驚いただろう。 「ど、どうしたのよ。急に呼び出したりして」

「ドメニカに言いたいことっていうか、聞きたいことがあってな……」

「そ、そそそれって……!?」

 ドメニカの顔がさらに赤くなり、慌てる。そんなに俺に呼ばれたのが嫌なのか!?それにさっきから目線が泳いでいるし、一刻も早く逃げたいんだろう……辛い。

「こんな強引なことをしてしまってすまないな。だが、どうしても聞きたいんだ」

「……し、しょうがないわね。仕方ないから付き合ってあげるわよ。アタシもアンタのこと気になってたし……」

「本当か!?」

「え、えぇ」

 (しまったあああああ!!!急に手を繋ぐのはダメだろ!普通に!)

 心做しかドメニカが気まずそうだ。そうだよな、完全に主人と従者のやっていい事じゃないよな。部屋にまで呼んだのに。

「さ、早速なんだが…女の子って何が好きなんだ?」

「……は?」

「いやっ、別にサクラに贈るってわけじゃないくてだな!単純にいつもお世話になってるからさ日頃の感謝を……べ、別に好きって訳じゃないからな!……ドメニカ?」

 ドメニカが呆然としている。一体どうしたのだろうか。

 (もしかして……急に早口になったのがキモかったのか!?)

 もし、そうだったとしたらさすがに傷つくぞと思いながらドメニカの様子を伺う。

「……っあ。な、なんでもない、わよ」

「ドメニカ、無理してるのか?だとしたらすまないな。もう戻っても……」

「~~~っ!もう!アタシは大丈夫だから!とにかくっ、サクラさんが好きそうな物はリストアップしておくからもう戻るわね」

「!あぁ、ドメニカ。サンキューな!」

「ふんっ!」






 使用人には宿舎が用意されており、ほとんどの使用人がここで暮らしている。ドメニカとて例外ではなかった。宿舎の一室で、ドメニカはメモ帳を握り、壁に寄りかかっていた。

「……そう。アタシ、フラれたのね」

 (最初から分かってたわ。報われない恋ってことなんて。だってあいつ、アタシのことなんて見向きもしなかったもの)

 呻きながらずるずると床に座る。木製の冷たい床が余計に悲観的になってしまう。この恋は叶わないならせめて、アンタには幸せになって欲しい。

「絶対に成功させなさいよーーーー!!!!」









あの日から一週間がすぎた。

 窓の外で木々が揺れている。爽やかな朝にコーヒーの匂いが漂う。

 ドメニカは先日の件でまとめたことをマシューに報告していた。

「――以上です。はぁ……な、何とかまとめましたよ」

「おぉ!さすがドメニカだな」

 ドメニカが渡したメモ帳を受け取り喜ぶ姿は年相応の少年のようだ。ドメニカはくすりと笑う。こんなことが出来るのはアタシだけ――それでいいのだ。好きな人の隣にいるだけで。

「ばーか」

「なんか言ったか?」

「いーえ!ほら、朝食の時間ですよ!」

「ドメニカが敬語使ってるの慣れないな。なにかあったのか?」

「……私ももう、大人ですから」

「そうか」

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