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78 番外編3・青は藍より出でて①

坂市家を訪ねるとじいちゃんは縁側で目釘を削っていた。俺が近づいても気が付かない。

あの件を考えているんだろう。


「じいちゃん、やっぱり向こうの世界が気になるよね?」

「康義か。そうだなぁ、やるべき事をやらず逃げた感じだな、そうでは無い事はわかっているがな・・・厳密に言うと気になるのは、向こうの世界というより向こうの日本だな」


「元公安だし愛国心は強いよね」

「ああ、わしは強烈な愛国者だな。これは間違い無い。体制とかじゃ無く先祖が守って来たあの地を愛している。「國敗れても國滅せず」これは先の大戦で特攻隊だった先輩の言葉だ」

「なるほどじいちゃんの愛国ってそう言う事なんだね」


縁側のじいちゃんの横に座る。

じいちゃんにお土産の揚げ饅頭を出した。

ぶら下がっているシエラカップを俺に渡し、ポットから黒豆茶を入れてくれる。


「俺は向こうのオリの出現を体験して無いから、正直ピンと来ないんだよね」

「そりゃそうだろうな。向こうは突然侵略者が現れたからちょっとしたパニックだったぞ、いやヒステリーか?」

「想像はできるよ、映画とかでよくある話しだからね。ただリアルだけどね」

「そうなんだよ、平和に慣れ腑抜けた日本にはキツいな。ただ剣士の人口が世界一多いのが救いか?」

「レベルはともかく人口が多いのは良いよね」

「レベルは稽古で上げられるからな」


「兼坊は大丈夫かの・・・」

「神域だけではキツいんじゃ無いかな?もう少し単発の技を覚え無いと、まぁ神域を使えるのだから四門流の基礎動作で結構戦えるけどね」

「そうなんだが、足がアレだと技が限定されるな」

「基礎納めているしあの才能なら動画とデータで解説して、稽古方方法も指導すれば大丈夫だと思う」

「兼坊限定だな・・・」


ヒュルルルルル

ヒュルルルルル


鏑矢の音が鳴る。

俺とじいちゃんのスマホだ。

1時間後、不忍池の研究所に集合と表示されている。

縁側を片付け、じいちゃんのトヨタオリジンに乗り込み移動する。


◾️◾️◾️◾️


キリがない・・・

「坂市夫妻一度おさがり下さい!」

桜が奥まで進んでいる。

「桜さがれ!進みすぎだ!急ぐな!」

「大丈夫よ兼廣!」

2尺2寸のお気に入りの薙刀直しを持って、オリが大量発生し、ゴーストタウン化した商店街をどんどん進んで行く。


桜が大きくステップを踏み前方の敵を切った同時に、左右の通路からオリが出て来る。

前からも現れ囲まれてしまった。

慌てて斬り込み刀を店の門柱にぶつけてしまう。


急いで切り込み、桜の側に寄り背を守る。

6体屠り桜の手を引き下がった。

お気に入りの薙刀直しは中央から折れた。

「桜、うかつだそ!」

「・・・ごめんなさい」

「気持ちは分かるけど、全体をちゃんと見なくちゃダメだよ」


三枝の家と縁を切って3年経った俺は20歳になった。

公安の金子さんの紹介で対オリの新部隊に入った。

桜も同じ部隊に入った。

俺は今年桜と結婚し、坂市の家に入り坂市兼廣になった。


この部隊はバディシステムと言って2人で1つのチームを作っている。

基本的に同性がバディだが、俺と桜は夫婦なのでチームを組んでいる。

我々のチームは1番強いのでエースと呼ばれている。


俺の剣は基本的におじちゃん達に教わった四門流の基礎だけだ。技は奥義の神域を伝授されたが、アレは集中力がいるのでそう何回も使える技では無い。

単発の連続技が欲しいところだが、こればっかりはしょうがない。


ここ3年は桜も四門流の基礎稽古を一緒に行なっている。かなり才能があるのでかなり厳しく稽古をしているが、持ち前の負けん気でくらい付いてくる。

桜の身体のバネは素晴らしい。

あれを活かせる技があれば良いのだが・・・


「あなたーはやくー!お家帰るよー夕ごはん食べるよー!」

桜が手を振っている。

最近、料理に目覚めハマっているのだ。

肝心の料理の腕だが・・・

恐ろしく美味いのだ、胃袋を掴まれてしまった・・・

特に坂市家の冬の定番ほうとうは絶品だ。

隠し味が決めてらしいが教えてくれない。

つい3年前は焼きそばも作れなかったくせに、何か負けたような感じがする。


◾️◾️◾️◾️


「杏どうした?」

部屋に入ると坂市総理とお偉いさん・杏・静・牧野・清水・社と揃い踏みだ。

杏が指輪のケースを出し開けると中央に紅白の石が置かれていた。


「これは!! クローリーが持っていた石と同じ!?」

「大きさは違うけど多分同じ、チョモランマに住む現地の人が見つけたの。工芸に使うから綺麗な石があったら買い取るって声をかけてあるのよ、3年目にして当たりよ!」

クローリーのはゴルフボール大だったそうだが、これは大豆ぐらいだ。


「それで?」

みんなも頷いている。

「こっちから1回分と向こうからちょっと送れるのよ」

「具体的な量は?」

「こっちからは刀2本ぐらいかしらね?向こうからはレターパックぐらいね」


「よし!それだけ送れれば十分じゃ!」

じいちゃんが強く頷いている。

「では義秋さんにお任せします、康義バックアップを頼むわね」

坂市総理が部屋を出て行った。

じいちゃんは向こうの世界からこっちに来た自分は、何か無責任のようで負目を感じている事を説明する。

親族でもある兼廣に奥義の一つの技だけ教え、ほかの剣技を伝承出来なかったのも心残りと言う事だ。


こうして向こうの世界への、四門流伝承プロジェクトがスタートした。









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