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2 弟子入り

牧野が握った右手が軋む。

「まて牧野手を離せ!」

「すっ、すみません・・・、」

「でも、先輩にしかこんな事頼めないです!お願いです!」

「まぁ、話は聞くからとにかく落ち着け!」

2本目のドクターペッパーと、牧野が持ってきた茶菓子から雷鳥を開けつまみながら話を聞く。


千葉で生まれ育った牧野は運動が苦手・人見知り・小太りな子供で、そんな事で仲間外れにされバカにされたりからかわれていたそうだ。

そんな状態でも将来はこいつらを見返してやろうと、勉強はかなり頑張っていたので「プロフェッサーぽんぽこ」という何とも言いがたいあだ名で、小学校〜大学までからかわれ続けたらしい。小中高大の一貫教育校の閉鎖的空間だったので地獄だったそうだ。


護国省に入省してから工藤の下に付き、面倒見のかなり良かったこっちの俺に懐いたらしい。

その影響から工藤の趣味だった車・バイクに興味を持ち、免許を取得し車・バイクを手に入れ一緒に走りまわっていたそうだ。


「え?バイクも車も乗らないんですか?」っと不安げに聞いてくる。

「いや乗るよ」と答えると安心した表情を見せた。

結構一人で楽しめるタイプだったのでいつもソロだったが・・・

祖父の家に置いていた愛車は、こっちの世界にあるのか?思わずすぐ確認したくなるが牧野との話を続ける。

「ずっと逃げてたので戦えるようになりたかったんです・・・いまさらですけど」

牧野は恥いるように言うのだが・・・


(そもそも将来見返しやろうと何年も勉強してた時点で、思いっきり根性もあると思うのだが・・・)


「構わないがこの世界の武術がわからないから、しばらくは他言しないようにな」

「わかりました、ありがとうございます!」

「やっぱり先輩はどの世界でも先輩ですね!先輩だなぁー」

っと訳の分からない事を嬉しそうにつぶやいている。


夜も23時をまわったので牧野は省の官舎に帰る準備をはじめた。

場所を聞くと湯島天神方面でちょうど湯島の祖父の家あたりなので送って行く事にした。

ドイツピューマのホワイトハンターをベルトに通し、右ヒップ側に移す。クローゼットからコリンスのM65フィールドジャケットを選び羽織る。

こちらでは一般人でも、全長40センチまでの刃物ならば携帯しても違反にはならないそうだ。


犯罪に対しては元の世界よりかなり厳しい刑になる。

強盗傷害で死刑になる、1ヶ月で刑は施行され遺体は36時間晒される。

放火も薬物販売も死刑である。

死刑はギロチンによる斬首のみ。

法律は外国人や外交官にも適応されるという、かなり厳しい事になっている。


遺体は晒している時にオリに持って行かれるそうなので、実際のところ回収される事は無いそうだ。

この遺体も残らない事が抑止力になっていて、犯罪件数はかなり少ないそうだ。


家を出て公園を下り右に曲がって湯島天神方面へと歩く。

立ち並ぶ店舗に元の世界との違いを確認し、自分の記憶を修正しながら進む。


「先輩、ここが官舎です」

そこは祖父の家であった。正確には向こうでの祖父の家があった場所だ。

場所を聞いた時何となくそんな予感はしたのだが・・・

実際目にすると何とも言えない気持ちになる。

祖父はどこに居るのか?


工藤の様子から色々と察した牧野は、101号室のドアをあけ部屋に招く。

工藤を座らせた牧野は冷蔵庫からコーヒーの入ってるらしいタッパを取り出し、カリタ式ドリッパーを温めコーヒーを入れる。

部屋の中にインドネシアのマンデリンG-1の香り

が広がる。

「一昨日焙煎して、今朝挽いたんでうまいですよー」

カップを受け取り口を付けると、マンデリン特有の苦味とコクが広がり何とも心地よい。


「先輩のお爺様の件ですが・・・そもそもこちらの先輩に祖父は居なかったと思います、」「そんな話しは聞いた事が無かったので・・・ただご両親の事故の件ついては同じなようですが・・・、」

「この隣りの102号室がこの前まで先輩の部屋だったんですけど、入寮から6年したら退寮しなければならない規定だったので向こうに家を購入したんですよ」

「俺よくそんな金あったな?」

「ご両親の遺産と生命保険・事故の示談金と、まとまったお金が入ったそうです」

「あぁ、なるほど・・・」


(祖父の家に置いていた愛車、クラウザードマーニとセリカGT-four RCは残念だったな・・・)

愛車とツーリングした日々を思い出す。

さすがに長年相棒だったので寂しさを感じる。


「バイクと車も無くなったな・・・」

「え?先輩の愛車新居のガレージにありましたよ?」

「クラウザードマーニとセリカか?」

「はい?・・・何ですかそれ?」

「先輩の愛車はADV160とマーチ Rですけど?」

「ちなみに私はPCX160とサニーV Rです!可愛い相棒です!」

こっちの世界でも自分は自分だから、好みも同じかと思いきや・・・そうでもないようだ)


俺と牧野のチームは先ここ2ヶ月の出勤が多すぎたので、他チームとのバランスを取るためシフト調整中で4日間休みという事だ。 どうやら労働基準法に抵触するらしい。

牧野の弟子入りに伴い色々買い揃える物があるので、明日の昼前に家に来てもらう約束をし帰宅した。


途中のコンビニで食料品を色々買い込み家に戻る。玄関ドア脇のガレージには、確かに赤いオフロード系?スクーターとボンネットにダクトがある古い形のマーチが置かれていた。

マーチはグラベル用のタイヤが履かれ、マッドガードとアンダーガードが付いているようだ。

この2台は俺の持ち物らしい。

明日にでも動かしてみようかと横目で見ながら家に入る。


そのまま服を脱ぎソファーに投げ、クローゼットから見つけたモンベルの作務衣を着るとそのままベッドに飛び込んだ。

(全くなんて日だ・・・)

さすがに疲れていたらしく、目を閉じると泥のような眠りに落ちた。



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