101・番外編6・静インターセクト・7
「早く立ちなさい」
「くっ・・・グゥ・・」
血だらけの蘭がうずくまっている。
第一道場の周りには免許皆伝者が、真っ青な顔をして稽古を拝見している。
天位の俺と桜と大気もその中にいる。
金子総理の提案で工藤静さんに稽古をつけてもらっている。
手加減が難しいので天位のみの稽古と言う事だが、蘭は天位を受験しようとしているので、本人の強い希望で特別稽古のメンバーに入れてもらった。
「やめて下さい!妻がこれ以上傷付けられるのは見てられません!」
「静姉様やり過ぎです!」
「・・・・なら、あなた達止めてみなさい。兼坊あなたもいらっしゃい、3人で掛かって来なさい」
大気が大木刀を掴み蘭の前に立つ。
「金剛夜叉!」
「・・・・デトネーション」
大気の身体が浮く。
胃の中の物をぶちまけなから壁に吹き飛ばされ、激しく頭をぶつけた。
身体が痺れる。
「・・・身体の重心と軸をしっかり意識しなさい。その程度で吹き飛ぶのは悪し。私の旦那様はあれを受けつつ前に出るわよ」
兼廣と桜の方を見る。
「貴方達、早くいらっしゃい。隙を見せてあげてたのに来なかったのね。全く甘ちゃんね」
「アルルカン!」
「双天ノ剣!」
「・・・花風」
「ぎゃぁ!がっ!」
「グゥ、ゴホッ・・」
静さんの右手の剣がアルルカンの動きを止め、そのまま一瞬で喉を突かれ桜が壁に串刺しにされている。
左手に持ち変えた剣で、俺の右の小手を打ち右の剣を叩き落とした。
壁に串刺しだった桜がずり落ちる。
完全に気を失っている。
右の剣を落とされたが、俺は同時に左の剣で斬りかかっていた。
その剣を蹴りあげ、そのまま踏み込み顎に飛び膝蹴りをくらい、さらに面を打たれ頭から血が流れる。
めまいがしてその場で膝を付いた。
その首筋を木刀で撫でられる。
自分の首が飛んだ感覚がした。
あまりの恐怖に背筋が寒くなった。
「貴方達甘いのよ。そしてその程度の腕で自惚れてはダメ。力はだけなら私と同じ程度はあるのよ。でも動作1つ1つが大雑把で無駄がありすぎ。身体の燃費も悪いのよ」
「さて蘭、何度も言わせないでくれるかしら?早く立ちなさい!」
「ヒック、ヒッ、えっえっ、えぐっ・・・」
泣きながら立ち上がる。
「デッ、ディストーション!」
「・・・ディストーション」
蘭が吐きながら床を転がって行く。
「わかる?踏み込みが甘いのよ、予備動作で足をもっと自然に盗みなさい。あと突っ込む時の重心はもっともっと前!いざとなったら退がれるマージンは不要!後退は死!」
「ひっ、飛燕剣」
「飛燕剣」
「ぎゃぁぁぁーーー!」
構えようとした両腕をしこたま打たれる。
「持ち変えた振り上げが低い!防御に移れるような中途半端な構えはしない!この子はなんでいつも安全マージン取っているのかしら?」
「モッ、モジュレーション!」
「モジュレーション」
「うぎぁぁーーーー!あぁぁぁーーーー!」
両腕両足を打たれ、痛みで転がり回る。
「さっきから何?何故、安全マージン取っているの?覚悟が足りないのよ」
「いだぃ、痛いでずう・・やっ、やめてください姉様お願いします・・」
静は泣きながら土下座する蘭の正面に立って、思い切り蹴り上げ壁に叩き付けた。
蘭は壁に背を付け泣きながらイヤイヤをしている。
「立ちなさい・・・」
「ううぅ、ぐっぐぇぇーーー」
泣きながら、吐きながらも気力で立ち上がった。
「蘭、構えなさい」
空気が大きく揺らぐ。
静が恐ろしい殺気を放出しはじめた!
あまりの恐怖に何人か吐いている。
(こっ、怖い!こっ、殺される殺される絶対殺される)
「ううっ・・うわぁぁぁぁーーーーーーーー!」
蘭が静に向かって一直線に斬り込んだ。
ガッ!
軽く受け止められ、素早く木刀を巻き上げられ天井を突き破った。
「それよ、その生への一歩。後退は死、迷わず切り込みなさい!その方が生き残る率は高いのよ。蘭お聞きなさい、立って戦わなければ死ぬの」
蘭は静に抱かれ優しく撫でられている。
「立ちなさい、そして戦いなさい。いいわね?」
「あっ、あい、静姉様ありがとうございまずぅぅーー」
「大気、盾となり剣となり、ちゃんとツガイを護りなさい、不退転の覚悟が足りません」
「それと桜・兼坊、あなた達一言で言うと雑。無駄だらけだわ。死にたく無ければもっともっと削ぎ落としなさい!生きる為には無駄な剣を振ってる暇は無いのよ!稽古不足なのよ!」
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【兼廣視点】
厳しい・・・
これが長い間、何度も何度も死戦をこえて来た者か。
生存率を上げる為、その技1つ1つが丁寧で正確だ。
体力を減らさ無いように全く無駄が無い。
【桜視点】
化け物よ!
向こうの天位って化け物だわ!
私のアルルカンは無敵と思っていたのに・・・
これより工藤のおじいちゃんと、静姉様の旦那様は強いっておかしい・・・おかしすぎるわ・・・
まるで昔の剣豪、そう剣豪だわ!
向こうでは太天位とか剣聖とか言うんだっけ。
でも向こうはそれだけ死が近いって事か・・・
【大気視点】
デトネーション?
金剛夜叉が簡単に吹き飛ばされた。
防御には絶対の自信があったのが、ただの思いあがりだった。
静さんの旦那はあれを受けつつ前に出る?
死地へ踏み込むのか?
信じられない・・・いや怖い・・・怖いが進まなければ・・・
【蘭視点】
こっ、こっ怖い・・・
死ぬ、こっ、殺される・・・しっ、静姉様にころ、殺される絶対・・・
だっ、ダメダメダメだ!しっ、しっ、死ね無い!あた、あだじ、あたし、まだ死にたく無いのよ!死ね無い!
自然と最初に教わったディストーションを放つ。
後は無いぐらいの覚悟で踏み込む!
だが、あっけなくその剣は跳ね上げられる。
だっ、ダメ、ぐや、悔しい・・・届かない・・・高みが違う・・・
ひぃぃーー!だっ、だめ殴られる!
次の瞬間、静姉様がとっても優しく抱きしめてくれていた。
優しく優しく撫でて、凄く凄く褒めてくれる。
あぁ、そうか・・・私、どこか覚悟が足りなかったんだ。
こんなんじゃ近々死んでいたわね。
私分かったわ、絶対絶対絶対生きて帰る!
静姉様そう言う事なのですね。
本当にありがとう!
大大大好きです!




