8話 図書館にて
部屋に戻った瑛二は、オートゴーレムたちを“ストレージ”に収納する。オートゴーレムは、人工生命体であるため、生物判定されないので、収納可能なのである。
そして収納し終えると、ベットに入り、眠りについた。
その翌日、瑛二は着替えを済ませて、雫を起こす。
「お嬢様。起床の時間でございます」
「うーん、あと2分だけ……」
「ダメです。今すぐに起きてください。」
雫は、とにかく朝にとてつもなく弱い。瑛二に起こしてはもらうが、それでも起きるのに時間がかかる。そのため、瑛二は本来の起床時間よりも早く起こしているのである。
「お嬢様、起こすこちらの身になってください……」
だが、雫はまだ起きようとしない。
「仕方ありませんね。お嬢様が悪いのですから、怒らないでください」
そう言って瑛二は、雫の布団をはがした。
「お嬢様。いい加減に起きてください」
「瑛二……寒いから返して」
「返してではありません。そろそろ寝ぼけてないで、顔を洗って目を覚ましてください」
「うん……」
雫は、眠たそうな目を擦りながら洗面所へと向かう。
顔を洗い、今度こそ目を覚ました。
「おはよう瑛二」
「はい、おはようございます。お嬢様」
「毎朝ごめんね」
「自覚があるのでしたら、もう少しどうにかなりませんか?」
「それができたら苦労しないわよ」
すると、ドアをノックする音が聞こえた。そして、瑛二が部屋の鍵を開け、扉を開けると、メイド姿のイーディスがいた。
「雫様、瑛二様。お食事のご用意ができましたので、食堂までお越しください」
「わかりました」
「それでは、失礼致します」
そう言って、イーディスは部屋をあとにした。
「お嬢様。私は部屋の外におりますので、着替えが済み次第、食堂へ向かいましょう」
「わかったわ」
瑛二は、部屋の外に行き、その間に雫は、着替えを済ませた。
そして、雫が着替え終わり、部屋から出てきた。
「それじゃあ、行きましょうか。瑛二」
食堂まで、2人で向かった。
食堂には、既に何人か来ており、来た順に食事を始めていた。そして、瑛二たちも席に座り、食事をとる。
食事を終えると……。
「ねぇ、瑛二。この城の図書館?って何処にあるかわかる?」
「いえ、私もそこまで知っているわけではありませんので……」
近くにいた、メイドのイーディスに図書館の場所を尋ねる。
「すみません。図書館……本の仕舞ってある場所は、何処にありますか?」
「こちらの世界でも図書館で伝わるので大丈夫ですよ。あ、図書館でしたね。でしたら、この後、私がご案内致します」
「では、よろしくお願いします」
その後、朝食を済ませた瑛二たちは、イーディスの案内の下、図書館に向かった。
長い廊下をしばらく歩くと、図書館の扉の前に着く。
「こちらが図書館となります。私は、こちらにおりますので、何かあればお声がけください」
「わかりました」
そこで調べ物をしばらくする。とある一冊の本を取り、内容を見る。
(どうやら、私の予想通り、魔族と人間は、昔は大きな争いもなく平穏に暮らしていたが、人間の身勝手な言動などにより、徐々に関係性は悪化し、100年程前から戦争をするようになった、か……この本の内容通りだと、魔族と人間の関係性の回復は、難しそうですね。でも、もしかしたら、代表同士が話し合いを行えば僅かな希望があるかもしれませんね)
瑛二は、読み終えた本を本棚に戻す。
「瑛二は、探してた本は見つかったのかしら?」
「やはりバレておりましたか」
「何年一緒にいると思ってるのよ。それぐらいわかるわ。それで?見つかったの?」
「ええ。興味深いのが一冊……お嬢様の方は、何か興味のある物がありましたか?」
「私は、魔法について書かれている本ね。あと、簡単なこの世界についてのことなんかも書かれている本もあったわよ」
「そうですか。ですが、そういったものは、私の“固有能力”でどうにでもなりますので」
「なら、なんでわざわざ図書館まで来て調べ物をしていたの?」
普通ならば、メーティスを使えばいい。だが、瑛二がわざわざ図書館まで来て調べたのには、理由がある。
「お嬢様。必ずしも、真実が答えとは限りません」
「どういうこと?」
「語り継がれているものが本当のことだと思われているなかに、突然まったく違うものが本当のことだと言われて、お嬢様はそれを簡単に信じますか?」
「簡単には信じられないわね」
「私が言いたいのはつまり、私の“固有能力”で知った真実を伝えたとしても、今まで伝わっているこれまでの真実と違った場合、人はその真実を受け入れることはありません。ですので、図書館にある、今伝わっているとされる真実がどのようなものかを一度知る必要があったのです」
「そういうことだったのね」
「はい。わざわざ付き合ってくださりありがとうございます」
「別にこれぐらいどうてことないわ。それに私としても、この世界について少しでも知る機会になったから丁度良かったと思っているわ」
「そうですか。それなら何よりです」
その会話をドア越しに覗いている者がいた。そう、イーディスである。
(あのお2人は、いつになったらいい関係になるのでしょうか?今の光景を見れば、誰から見ても両想いのように思うのですが、他人の恋に口出しするのは、野暮ですね)
メイド(イーディス)からそのようなことを思われながらドア越しに見られる、瑛二と雫であった。
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