7話 オートゴーレム
自分たちの部屋へと入った雫と瑛二は、クローゼットの中に自分たちの服を入れる。この服は、すべて瑛二の鞄の中から取り出した物である。これには雫も、ツッコミを入れた。
「ねぇ瑛二?」
「何でしょう?」
「どうして私の服が、瑛二の鞄の中に入っているのかしら?」
「予備です。お嬢様がご購入なされた衣類などは、同じ物を購入して、鞄の中に入れております。また、サイズが合わなくなったり、着なくなったものなどは、入れておりません」
「もしかしてだけども……下着なんかも入ってたり……する?」
「……黙秘します」
「この馬鹿!変態!!」
「な、なぜ!?」
「当たり前でしょ!!女の子の下着を男の人が鞄の中にしまっていて、それを使えと言うんだもの!」
雫は、瑛二にそう恥ずかしさと怒りが合わさった声でそう言い放った。
「……確かに、お嬢様の言う通りでございますね。ご配慮が足りず、申し訳ありませんでした」
瑛二は、そう雫に謝罪する。
「わかれば良いのよ。わかれば……でも、私以外にはやらないでよね。他の人に同じことをすれば、瑛二の人格を疑われるし、何より、私の主人としての尊厳にも関わるのだから」
「畏まりました。では、これからは、お嬢様の許可を取ってから行います」
「全然わかってないじゃないの!!」
そう叫んだ後、雫は大きく溜め息を吐く。
「ハァ〜。……もういいわ。それよりも、レヴォネ王女のところに行くのよね?」
「そうですね。レヴォネ王女殿下とお話をすることがありますので」
「そう?なら、私は先に寝てるわね。今日一日で本当に疲れたわ」
「そうですね。お休みなさいませ、お嬢様」
雫は、ベッドに入り、眠りにつく。
《メーティス。少し良いですか?》
《何でしょうか?》
《魔法の中に、護衛に使えるものとかはあったりしませんか?》
《もう少し具体的な内容をお願いします》
《私が出掛けている間にお嬢様をお護りすることができる魔法且つ、私が使えるものをを頼みます》
《検索中……検索完了。条件に合うのは、結界魔法、ゴーレム生成魔法、遠距離監視スキルです》
瑛二は、少し考えた後、すべて獲得することにした。
《その全てを獲得することは可能ですか?》
《可能です。すべて獲得するのに、3分ですが、よろしいですか?》
《構いません。始めてください》
《了》
3分後……。
《結界魔法、ゴーレム生成魔法、遠距離監視スキルの獲得に成功しました》
《獲得しました。では次に、魔法の使用方法の説明をお願いします》
(魔法を使うときに、使い方がわからなければ、意味がありませんからね)
《結界魔法には、幾つかの種類があります。物理攻撃の無効化、魔法攻撃の無効化、精神攻撃の無効化などがあります。また、使用方法に関しては、私の方で行いますので大丈夫です》
《そうですか。ではとりあえず、先程言っていた物理攻撃の無効化、魔法攻撃の無効化、精神攻撃の無効化の結界をこの部屋に張って下さい》
すると、部屋の中に雫の眠るベッドを中心に、ドーム状の結界が3つ張らさった。
《結界魔法の発動が完了しました。他には、ありますか?》
《では、ゴーレム生成魔法というのを頼みます》
《ゴーレムの種類は、どうなさいますか?》
《ゴーレムの種類?》
《ゴーレムの種類には、大きく分けて、作業用と戦闘用の2種類があります》
《戦闘用をお願いします》
《では、生成するゴーレムの姿と生成する数を教えて下さい》
(護衛とはいえ、お嬢様にあまり違和感を覚えさせるような見た目ではない方が良いでしょうね)
《ゴーレムの完成した姿は、できるだけ人と同じような見た目とし、数は6体頼みます》
瑛二は、ゴーレムを部屋で出すのでは、人の姿に偽装する意味があまりないと感じて、一旦部屋の外に出た。
《ゴーレム生成魔法発動……完了しました。ゴーレムを出現させます》
すると、床に6つの魔法陣が現れ、その魔法陣から6体のゴーレムが現れた。そのゴーレムの見た目は、人間とまったく変わらない見た目だった。
だが、まったく動く様子はない。
《それぞれのゴーレムに名前を与えて下さい》
《名前が必要なのですか?》
《必ずしも必要ではありませんが、マナゴーレムは、名前を与えて別のゴーレムに進化しなければ起動することができません》
それぞれに名前を与えていく。因みに、男性形態と女性形態が三体ずつの計六体となっている。
「では、右から順番に、流奏、業渡、心尊、麗奈、檜織、咲夢と名付けます」
全員分の名付けが終わった瞬間、瑛二の魔力が6体に流れていく。
そして、マナゴーレムが光だした。
《一応確認なのですが、これは大丈夫な光なのですよね?》
《進化の光ですので、問題ありません》
そして、眩い光が収まり、ゴーレムが起動し始めた。
《確認しました。種族:マナゴーレムからオートゴーレムへ進化しました》
オートゴーレムたちの進化状態のステータスは、以下のようになっている。
《ステータス》
【名前】流奏
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】男性モデル
【年齢】23歳(見た目)
【レベル】20
【体力】980/980
【魔力】1073/1073
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル5 魔法レベル2 狙撃レベル3 体術レベル6 索敵
【常時発動スキル】魔法攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】風 土 闇
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
《ステータス》
【名前】業渡
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】男性モデル
【年齢】23歳(見た目)
【レベル】20
【体力】1020/1020
【魔力】1080/1080
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル6 魔法レベル3 狙撃レベル4 体術レベル7 索敵
【常時発動スキル】魔法攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】風 土 闇
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
《ステータス》
【名前】心尊
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】男性モデル
【年齢】23歳(見た目)
【レベル】20
【体力】1000/1000
【魔力】1076/1076
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル5 魔法レベル2 狙撃レベル3 体術レベル6 索敵
【常時発動スキル】魔法攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】風 土 闇
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
《ステータス》
【名前】麗奈
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】女性モデル
【年齢】18歳(見た目)
【レベル】30
【体力】1060/1060
【魔力】1200/1200
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル4 魔法レベル6 狙撃レベル3 体術レベル6 索敵 魔力操作
【常時発動スキル】物理攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】風 土 光 聖
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
《ステータス》
【名前】檜織
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】女性モデル
【年齢】18歳(見た目)
【レベル】30
【体力】1100/1100
【魔力】1150/1150
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル5 魔法レベル5 狙撃レベル3 体術レベル6 索敵
【常時発動スキル】物理攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】風 土 聖
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
《ステータス》
【名前】咲夢
【職業】守護者
【種族】オートゴーレム
【性別】女性モデル
【年齢】18歳(見た目)
【レベル】30
【体力】1000/1000
【魔力】1200/1200
【エクストラスキル】鑑定 隠蔽
【スキル】剣術レベル3 魔法レベル7 狙撃レベル4 体術レベル4 索敵 魔力操作 宮廷作法
【常時発動スキル】物理攻撃耐性 精神攻撃耐性
【魔法適正】水 風 土 光 聖
【称号】使徒の眷属
【加護】なし
進化が完了すると、オートゴーレムは、ゆっくりと目を開けると同時に、瑛二の前に跪く。
『マスター。ご命令を』
「では、流奏と業渡はこの扉の前で警備。残りの心尊、麗奈、檜織、咲夢は、部屋の中にいるお嬢様を警護をお願いします」
『御意』
それぞれ命令通りに動く。そして、瑛二もレヴォネのところへと向かった。
レヴォネの執務室に入った瑛二は、ソファーに腰掛け、正面に座るレヴォネと話す。
「わざわざ、時間を設けてくださりありがとうございます」
「いえいえ。それで、私に何のご用でしょうか?わざわざ、私以外に聞かれないようにするなんて……」
「実は、お嬢様が国王派の者たちに命を狙われています」
「いきなりとんでもないことを言いましたね」
「食事前にたまたまある部屋の前を通りかかったときに、お嬢様を暗殺しようと計画している声が聞こえてきたのです」
「え?それだと、雫さんにもその話し声が聞こえたのでは?」
「あ、いえ。私の耳は、かなり良くてですね。その気になれば、例えば、扉から机の後ろの窓のところに人が立っていたとして、その人の心音を正確に聞き取ることができます」
「それは、スキルか何かですか?」
「いえ。これは、元の世界から使える私の能力みたいなものですね」
この瑛二の異常とも言える聴力は、生まれつきのものではなく、聴力トレーニングで身につけたものである。
「それで?その話を私にして、いったい私に何をさせようとしているのですか?」
「国王派の者たちに、お嬢様に手出しできないように圧力をかけてもらいたいのです」
「いくら私でも、それは少し難しいですね」
「どうしてですか?」
「国王派の者たちは、自分が有益な方に味方する者やお父様に古くから仕える家系、古い考えの者などがおります」
「なるほど、そういうことですか。つまり国王派は、表向きには従うかもしれないけれども、本当は、レヴォネ王女殿下に従わないということですね」
レヴォネは、少し困った顔を瑛二に見せた。
「耳が痛い話ですが、そういうことです。例え王女という立場だとしても、派閥が違えば、従わないというのは、残念ながらよくある話です」
「正直、伊集院グループでも派閥は存在していましたが、そのようなことはありませんでしたよ?」
「なんだか羨ましいですね……こちらもそのような感じだったら、まだ良かったのかもしれないですけれども……」
「そちらよりかはマシなのかもしれませんが、こちらもこちらで大変なんですよ」
瑛二は、レヴォネにそう返答する。
「話が少し逸れてしまいましたね」
「そうですね」
「それでは、レヴォネ王女殿下。できる範囲で構いませんので、国王派のこと。よろしくお願いします」
瑛二は、レヴォネに頭を下げた。
「はい。私ができる範囲でやってみますので、頭を上げてください」
レヴォネに言われて頭を上げる。
「あの……もし、国王派が今以上に過激な手段にでそうになった場合は、その前に私直属の諜報部隊「ヤタガラス」の者がそちらにお伺いします。あ、多分近くにいると思うので、瑛二さんに紹介しますね」
レヴォネがそう言うと、ドアから1人のメイド姿の女性が入って来た。そして瑛二は、その人物を見て驚く。それはそうだろう。なんせ、そのメイドの女性は、食事の際に瑛二たちを呼びに来たメイドだったのだから。
「紹介します。彼女は「ヤタガラス」の諜報員の一人で、瑛二さんと私の仲介役になる者の一人です」
「一人ということは、もう一人いらっしゃるのですか?」
「はい。生憎今は、任務中により紹介できませんが、いずれ会うと思います。そして、彼女は瑛二さん付きですので、何かあれば、彼女のことを使ってくださって構いませんので」
「ありがとうございます」
そして、瑛二は彼女と挨拶する。
「改めまして。私は、久遠瑛二と申します」
「改めまして、私は、レヴォネ王女殿下直属諜報部隊「ヤタガラス」諜報員兼王女専属メイドのイーディス・オブライエンと申します。普段は、王女殿下専属のメイドとして活動しておりますが、いつでも瑛二様のお近くにおりますので、何かあればお声がけくださいませ」
「分かりました」
そう言って、イーディスは姿を一瞬で消した。
「今、イーディスさんが消えたのは、スキルか何かでしょうか?」
「彼女をはじめ「ヤタガラス」の全員が“影空間”というエクストラスキルを所持しています。」
瑛二が影空間について、レヴォネに尋ねようと思った瞬間、メーティスが先に疑問に答える。
《エクストラスキル“影空間”とは、影の空間を利用して、ものを収納・保管することができます。また、生きた人間なども入ることが可能であるため“影空間”は、この世界ではかなり重宝されているスキルのひとつです。ただし“影空間”は“ストレージ”とは違い、空間内の時間はそのまま経過してしまうため、食べ物などの長期間の保存などには適さないスキルです》
(だとしても“影空間”のスキルはかなり便利ですね。ですが、扱い方によっては、暗殺などにも利用できそうな危険スキルでもありますね)
その疑問を直接レヴォネに聞く。
「先程の“影空間”のスキルは、場合によっては暗殺がしやすくなると思うのですが、こちらではどのような対策をなされているのですか?」
「そうですねぇ。例えば、空間系のスキルなどを使用できなくする結界を寝室や重要な場所に常時展開していますね」
「やはり対策は、なされているのですね」
「当然です。そうでなければ、いつ寝込みなんかを襲われるかわからないじゃないですか」
「そうですね」
「瑛二さん。ここに来てからかなり時間が経ちましたし、そろそろお部屋に戻らなければ、雫さんが起きてしまいますよ」
「もう、それほどの時間が経っていましたか」
ソファーから立ち上がる。
「では、私はこれで失礼します」
「はい。おやみなさい、瑛二さん」
「おやすみなさい、レヴォネ王女殿下」
そうして、瑛二は寝室へと戻って行った。
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