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4話 異世界会談

「異世界会談ってなんだか大袈裟過ぎませんか?それにこの会談は、非公式のものだと伺っているのですが?」

「確かにその通りです。ですが、異世界人との話し合いです。もしもこの会談が外部に漏れた際の名称を決めておかなければなりません。ですから、僭越ながら、このような名称にさせていただきました」


 その話を聞き、瑛二と雫は納得した。


「それでは、今後の召喚された異世界人について、異世界人側から何か希望はありますか?」


 瑛二が手を挙げる。


「私の方からひとつ、よろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「私たち異世界人は、マゼル前国王によって召喚されました」

「はい……」


 申し訳なさそうにレヴォネがそう返答する。


「その時、マゼル前国王は、私たちに魔王討伐を命じました。そのため、レヴォネ王女殿下にも何か私たちにやらせたいことがあるのではないかと思ってしまうのです」

「え、瑛二!?申し訳ありませんレヴォネ王女殿下!」

「お気になさらないで下さい。瑛二さんがそう思われるのもわかりますので。ですが、私から異世界人の方々に対して、何かをしろという風に命じるということはありません」

「失礼なことを言い申し訳ございません」

「気にしてませんので大丈夫ですよ。そういえば、私としたことが、お茶をお出しし忘れていましたね。今、メイドに持って来てもらいますね」


 レヴォネがメイドを呼ぼうとするのを瑛二が止める。


「レヴォネ王女殿下。それには及びません。僭越ながらこの私がご用意致しますので」


 瑛二はそう言い、足元に置いていた鞄の中からティーカップを2つとティーポットを1つ取り出す。

 ティーカップにティーポットから紅茶を注ぎ、2人の前に出す。

 その後さらに、鞄から衛生管理上問題のない袋を取り出し、その中からマカロンや一口サイズのチョコレートを取り出してテーブルの真ん中にアフタヌーンティースタンドに置いた。


「ねぇ、瑛二」

「なんでしょうか?」

「今までずっと気になっていたのですけれども、その鞄の中ってどうなってるのですか?明らかに見た目よりも入ってますよね。地球にいた頃からその鞄の容量に疑問があったのだけども、この際だから教えてくれませんか?」

「それをお教えする前に、お嬢様は望月春人殿をご存知でしょうか?」

「当たり前です。望月春人様といえば、あの望月家で歴代最年少且つ、歴代最強と言われる第87代当主。そして望月家は、我が伊集院家よりも遥かに長い歴史と高い権力を持ち、表世界から裏世界まで望月家の人脈やその構成員がいるという。その春人様で間違いないですか?」

「えぇ。それで間違いありません。話の続きに戻りますが、実はこの鞄は、その春人殿に頂いた物なのです。なんでも、この鞄の中に特殊な術式を展開して、擬似的な位相(いそう)とよばれるものを作ったらしいです。詳しいことはわかりませんが、この鞄のおかげで、武器の持ち込みや銃弾の予備なんかも十分に確保できています」


 そんな瑛二に対して、雫が気になったことを聞く。


「ところで、瑛二はいつ、春人様とお会いになったというか、そのような特別な鞄を貰えるような仲になったのですか?まぁ、伊集院家と望月家は古くから繋がりがあるから、その伊集院家に代々仕えている久遠家ならば、望月家とも接点があっても特段おかしくはないといえばないのだけれども……」

「以前に望月家での食事会があったのは、覚えていますか?」

「覚えてるいますよ」

「その際に春人殿から声を掛けられたのです。そして何故か、そのまま模擬戦を行うこととなりました」

「その結果はどうだったのですか?」

「全敗でしたね」

「瑛二が全敗!?そんなことがあり得るのですか?だって瑛二は、世界でもトップレベルの実力者なのですよ!?」


 瑛二が春人に全敗したことに雫がそのように驚いていた。


「あれはもう、人間の強さの範囲のレベルではありませんでした」

「瑛二にそれほどまでに言わせるなんて相当ですね。春人様は、本当に人間なのでしょうか……」

「本人曰く、特殊な存在だと言っていました。どうやら、生まれた時から強大な力を持っており、ある事件をきっかけに自身の力を押さえているそうです。そんな状態でもあれだけの力があるのは、人間ではありません。本人も自身が一般的な人間の括りに入るのか怪しいと言っておりましたね」

「それはそれでどうなのですか?」

「私にはわかりません」

「あの、よろしいですか?」


 レヴォネが小さく手を挙げる。


「あれ?お口に合いませんでしたか?」

「いえ!とても美味しいです。こんなにも美味しいのは、城でもなかなか出ませんので」

「お口に合ったようでしたら何よりです。それではどうなされたのですか?」

「先程から言っておられるその望月春人さん?というのは、さっきの言葉からなんとなく想像はついたのですが、その鞄のような物は、そちらの世界では珍しいのですか?」

「失礼ながら逆にお聞きしますが、こちらの世界では、こういった鞄などは存在しているのですか?」

「容量は異なりますし、かなり高価な品にはなりますが、少し大きな商会などでは売られていますよ。そちらの世界では違うのですか?」

「そうですね。私たちがいた世界には、魔法というのは存在しないことになっています。ですので、こういったのは存在がバレるとかなり問題になります」


 すると、雫がすぐさま手を挙げる。


「どうなさいましたかお嬢様?」

「さっき存在しないことになっているって言っていましたよね?」

「はい。言いました」

「しないことになっているということは、存在はしているってことですね?」

「意外と細かいところまでお聞きになられているのですね」

「あなた、私のことを馬鹿にしてます?」

「滅相もございません。魔法が地球でも存在しているかという点で答えるのであれば、魔法は存在します」

「本当に存在するのですか!?」

「正確には、魔術というべきですね。魔術には、赤魔術・青魔術・白魔術・黒魔術・黄魔術だったりと、様々な魔術が存在しています」

「それって、なんかの作り話かなんかだと思っていました……」

「そう思っているのが普通であり、魔術なんて知らない方が身のためです。それに魔術には、自身の命を代償に行う魔術だったり、死者を利用する魔術なんかも存在します。それに魔術とは異なりますが、妖術や陰陽術なんかもそれに近い存在ですよ」

「言われてみれば確かにそうかもしれないわね」


(本当は、魔術と妖術や陰陽術は全くの別物ですが、説明するのも少し面倒ですし、黙っておくことにしましょう)


「春人殿は、特別な存在ということで覚えていただければ問題ないと思います」

「そうですね」

「では、そろそろ続きを行いませんか?」

「そうですね。ではそろそろ再開しましょうか」


 2人は置いてあったマカロンを2つ食べた後に、紅茶を飲んだ。そして、飲み終わったティーカップを鞄から取り出した専用の袋に瑛二が仕舞おうとしていると、レヴォネが瑛二に提案をする。


「瑛二さん。もし、よろしければティーセットは、こちらで洗った後にお返ししましょうか?」

「よろしいのですか?」

「えぇ、構いませんよ」

「では、お手数ですがよろしくお願いします」


 レヴォネがメイドを呼びに行っている間に、瑛二は、アフタヌーンティースタンドに残っていたお菓子を鞄から取り出した真空パックに入れた。

 因みにこの鞄の中の位相では、時間がまったく進まないため、食べ物が傷んだりする心配はまったくないのである。

 レヴォネがメイドを呼んで来て、洗う必要のある物をすべて持って行った。


「それでは、再開します」

「まず、私としては、先程も言いましたが、あなた方異世界人をどうこうするつもりは一切ありません。そして、私は異世界人の方々をこの城で保護したいと考えています」

「それは、自分たちが私たちを保護する代わりに何かをしろということかしら?」

「そこまでは言いませんが、流石にただ保護している状態だと、城にいる者たちから不満が出てしまう可能性もあるので、それぞれの得意分野を活かせる仕事に就いてもらいたいと思っています」

「得意分野と言われてもそれぞれ異なりますし、機械系が得意な方もいらっしゃいますので、この世界では、そういった方は難しいと思います。それに、この世界には普段地球では当たり前に使っているような便利機器は、存在していませんので、それだけでも難しいと思われます」

「確かに瑛二の言うことには一理ありますね。ですが、この世界から地球へと帰ることが出来ない以上、この世界で仕事を出来なければならないのは確実です」

「一応、地球でも私たちをこの世界と地球を繋げる方法を模索しているとは思いますよ」

「それってどういうこと?」


 瑛二が言ったことがわからず、その意味を聞く雫。


「旦那様は、お嬢様をとても大切になされております。言ってしまえば親バカです。そんな方が何も手を打たないはずがありません。一応、召喚される直前に、できる限りの情報を学園の敷地内外に待機させていた護衛たちと伊集院家本邸の聡之様のパソコンと私の父のスマホに一斉送信をしました。またこれは、私の推測なのですが、旦那様は我々のことを春人殿に依頼するはずです。望月家では、異世界に関する研究も行っているそうなので、あの状態だと、恐らくというか間違いなく望月家が出て来ると思われます」

「確かにそうね。お父様は、超が付く程の親バカですものね。春人様がなんとかしてくださる可能性があるというわけですね」

「お嬢様。とても言い難いのですが、それは楽観的なお考えかと思います。何故なら、例え異世界へと召喚されたという事実がわかったとしても、その召喚された世界へと繋げるのはほぼ不可能だからです。それに、向こうの世界には魔法陣も残っていないでしょうし、それに、世界を渡るには、膨大な魔力が必要となるはずです。向こうの世界で、そのようなことができるとはとても思えません」

「それじゃあ、地球に帰る手段はないということなのですか?」


 雫が僅かな希望が消えたかのように落胆する。


「お嬢様。確かに地球に帰ることは、今のところほぼ不可能です。ですが、この世界でしばらく過ごしてみるというのもよろしいのではないでしょうか?」

「瑛二は、地球には帰りたくないのですか?」

「帰りたくないと言えば嘘になります。ですが、この世界では、お嬢様に重責を与える者はおりません。この世界で休息を取られるのもよろしいかと思います」

「……そうね。この世界では、伊集院家当主の娘としている必要なんてないものね。この世界でしばらく過ごしてみるというのもありかもしれないわ」


 瑛二のそんな言葉で、雫は今まで使っていたお嬢様モードを解除して砕けた口調で話し出した。ただし、レヴォネ相手や周りにクラスメイトがいる場合は、別なようで、あくまでも、瑛二のみのようだ。


「さて、話を戻しますが、これから先もしも他の方々がこの城から出て行くと言った際には、そちらではどのような対応をとられるのでしょうか?」


 瑛二の質問にレヴォネが少し考え込んだ後、口を開く。


「基本的には、その本人の自由にさせたいと思います。少しですが、お金もお渡ししましょう」


(なるほど。つまりレヴォネ王女殿下は、異世界人を助ける意思はあるものの、城から離れた場合、必要以上に庇護してしまうと、城で働く者から不満が出てしまう可能性があるため、お金だけを渡してあとは、基本的に本人の自由にさせるということですか)


「レヴォネ王女殿下の対応方法は、理解致しました。この話は、後ほど皆さんと相談した後にお伝えしてもよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。存分にご相談なされて下さい」

「はい」


 3人が立ち上がる。


「本日は、このような機会を設けてくださりありがとうございまた」

「こちらとしても、あなた方とお話が出来てとても楽しかったです。今度は、ゆっくりとお話してみたいものです」

「そう言ってくださると嬉しいですね。では」


 雫とレヴォネは、互いに握手を交わした。

 そして、2人は部屋を出て行き、みんなの所へと戻って行った。

『良かった』、『続きが気になる』などと思っていただけたなら、評価やブックマークをしてくださると、とても嬉しいです。投稿日時は特に決めていませんが、どうぞこれからもよろしくお願いします。

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