プロローグ
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、瑛二」
「朝食のご用意が終わりましたのでお食べください」
「わかったわ」
この少女は、彼が使えるお嬢様の伊集院雫。そして彼は、そのお嬢様の側近兼執事を務めている、久遠瑛二だ。
「今日のご予定ですが、午前9時から午後16時まで学校。午後17時から午後17時40分まで弓術の稽古、午後18時から午後18時50分まで勉強、午後19時から午後19時30分まで夕食。午後19時40分から午後20時まで入浴。午後20時以降は自由時間となっております」
「ご馳走様。予定についてはわかったわ。それじゃ、私は着替えてくるから」
「かしこまりました。車を入り口前に用意させます」
(私も早く着替えないとですね)
彼もまた、雫と一緒の高校に通う高校3年生だ。
ただし、その高校は優秀な人材を多く輩出している星王学園というかなり良い高校であり、この二人はその学園の主席と次席である。ちなみに主席が雫で次席が瑛二だ。
だが、本来ならこの逆になる。なんせ、この瑛二という少年は、代々伊集院家に仕える家系であり、歴代最強と言われ、幼い頃からいろいろな訓練を受けさせられてきた。
時には無人島で1ヶ月間のサバイバル。またある時は、自衛隊のレンジャー訓練と同等の内容を5歳の時に受け、ほぼ無傷で終わらせるといった実績を持ち、さらには剣道四段を持っており、他にも柔道などといった体術も扱う実力者だ。
そして、瑛二は雫よりもIQも高く、その数値は130であるが、雫も負けず劣らず、その数値は120である。
また、この家に仕えるボディーガードはキャリア警察官の警部級の権限を持っており、警察官に現場で直接指示を出すことが可能だが、この久遠瑛二だけは警視級の権限を持っており、拳銃の所持並び発砲許可も出されている(他のボディーガードもだが)。ちなみに、この家に仕えるボディーガードは、元陸上自衛隊特殊作戦群だった者や警視庁警備部特殊急襲部隊(SAT)だった者や、警備部警護課のSPだった者などの優秀な者達であるためにこれらの特別な許可が国から正式に許可されている。
だが、その瑛二が仕える伊集院の家系もかなりのもので、世界でもトップレベルの財閥で、その発言力は国にも影響があるほどである。そしてその令嬢である雫もまた弓術の腕前も実戦で使えるレベルであり、瑛二よりも扱いが上手い。その他にも剣も実戦レベルで扱えるが、瑛二には一度も勝てていない。
「お待たせ」
「玄関前に車を用意しております」
「瑛二はいつも通り走って学校まで行くようだけど……時間いつもより遅いけど大丈夫?」
「問題ありません。屋根伝いで学校まで行きますので」
「……あまり無茶はしないでよね」
「分かっております。それではまた学校でお会いしましょう」
雫を乗せた車は学校まで向かった。瑛二は、学校では雫の護衛だと知られてはいけないため、行きと帰りはそれぞれ別々に行動をしているが、雫の周りには常に護衛が数人いるのであまり問題がないが雫といる時だけは、瑛二だけが護衛として側にいることになっている。
雫の父親である聡之曰く、「他の護衛が近くにいたらお前の邪魔になる」というわけで、瑛二が一人だけとなったのだ。
「それじゃあ、私も行くとしましょうか」
勢いよくジャンプし、屋根伝いに学校へと向かう。
そして、学校の少し前で屋根から誰も見ていないのを確認して降りて、そこからは歩いて行く。流石に見つかったら問題だからである。
「おはよう瑛二」
「おはよう。一」
彼の名前は、工藤一。工藤グループ会長の子息であり、彼も父親同様に人柄のいい人物で、彼自身もまた、アプリ開発でかなりの功績を出している。
そして、瑛二の学友でもある。
教室に着きいつも通り授業が始まる。ちなみに1時間目の教科は歴史の時間だ。
そうして、今日の全ての授業が終わり、生徒会の仕事に雫と共に行こうとした時、突如として教室内の床が何かの陣のような円形状に光だした。その陣に書かれている文字のようなものは、この世界のどの文明でも使われていない文字だった。
(いったい何が起こっているというのですか!?とにかくお嬢様をお護りしなくては!)
瑛二は、瞬間的に近くにあった自身の大きめなバッグを雫の周りに囲うように置き、足りない部分は瑛二が被さる。それと同時に、スマホで学園の敷地内外にいる他の仲間に状況をできる限り書いた後、すぐに送信する。その間、僅か3秒の出来事である。
そして、瑛二が身構えた刹那、辺り一帯が青白くなり思わず目をつぶってしまった。
これが後に、最強お嬢様と最強の万能執事の夫婦と言われる事となる、とある世界での物語りの始まりである。
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