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中 第五十一幕 転化

 殴った御者から解け落ちていく包帯……


 その下から現れた素顔に私は困惑してしばらく動けずにいた。


 私は自身の目を疑う。


 しかし、目の前に居るその男は確かに私がよく知る人物だった。


「…………ハースト……」


 私は漸くその名を口にした。


 いつも見ていたヘラついた笑みは浮かべていない。


 別人のように無機質な表情……


 しかし確かに今目の前に居るのほハーストだった。


「……どうして……どうしてなのハースト!!?」


 私は問いを投げつけるように叫んだ。


「最初からそんな男はいない……この世のどこにもな……」


 ハーストは抑揚のない口調でそう答えた。


「それなら……それなら、あなたは誰なのよ!!?」


「……No.1153……それが俺に与えられた本当の名だ……」


 ハーストの答えに私は呆気に取られる。

 理解するのに少し時間がかかった。


「……は?……そんな数字が人の名前なわけないでしょ!ふざけないでっ!!」


 私はハーストの言葉に激昂した。


「俺はここに居ながらにしてどこにも居ない……誰でもない……」


「何……それ……」


 私は呟く。


 ハースの言葉は理解していたが内容にまで思考が追いついてこない。


「お前に何がわかる……貴族として産まれ、何も知らず恵まれた環境でのうのうと生きてきたお前に……」


 ハーストの口から出るとは思えない言葉に私は目を見開く。


 その時、ジャハンナが声を上げて笑いだす。


 私は驚いて彼女を見る。


 ジャハンナは目に涙を浮かべて洪笑を上げ続けるが、どうにか笑いを噛み殺すようにして止める。


「……思いついても普通この状況でその行動に出る?……こんなに笑ったのは久々……あなたって結構豪胆ね……あなたが男だったら惚れてるかも……」


 ジャハンナは涙を指で拭いつつもまだ笑いを堪えているようだった。


「邪魔をしないで!私はハーストに用があるの!」


 私の言葉にジャハンナは微笑みの仮面をつける。


「あら、つれない……でも、この世には番号を振られた人であって人でない存在なんていくらでもいる……彼もその内の1人……」


 ジャハンナは私から離れてハーストの傍に絡まるように寄り添う。


『無粋ですね……今世いまよの支配者達は……』


 久々に聞いた気がするその声に私は少し安堵感を覚える。


『レイン!今まで何してたの!?』


『なんですか、その呼び方は……?』


 念での呼びかけに私と体を共有する存在、レインフォルト=アーデルハイムは怪訝な声音を私の脳内に響かせる。


『前からずっと思ってたけど、あなたの名前って面倒くさくて呼びにくいの!』


 私の思念に対しレインフォルトはため息を吐き


『……まぁ、いいでしょう……何をしていたのか、でしたね……ジャハンナ……でしたか、彼女が張っていた術を妨害する結界が緩んだから出て来れたんですよ……私の存在自体が術そのものといったところでしてね、こういった術式に少々弱い……故に観測は出来ていましたが、一切の干渉ができない状況に陥っていました……』


「……お寝坊さんがお目覚め?」


 レインフォルトの説明が終わった頃にジャハンナが声をかけてくる。


『代わっていただけますか?』


 レインフォルトの呼びかけに私は無言で頷くと私の身体の主導権が移る。


「私を寝かしつけたのは貴女でしょう……なかなかに大したものだ……そして、このような形で"夜の眷属(ノスフェラトゥ)"への転化者……いえ、貴女と相見あいまみえようとは……因果なものですね……」


「……貴方は私以上の化け物に見えるけど……?」


 ジャハンナは言って軽く握った手で口元を隠して声を立てずに笑い


「一体何人取り込んだらそんな存在に成れるのか興味を惹かれるところね……そして、今回こそは貴方にご同行を願いたいところね……わかっているとは思うけれど、貴方の患者が危険な状態なの」


「残念ながら教皇猊下の延命はもう既に限界を迎えています……次の発作を耐えるのは難しいでしょう……私にできることはもうありませんよ」


 レインフォルトの言葉にジャハンナは苦笑し


「教皇猊下は"契約の変更"をお望みなのよ……病に侵された肉体を捨てて貴方のような存在へと転化する……それが今の猊下のご意思」

教皇猊下はまだ生きててあと数ヶ月は生きます……最後は以前書いた通りですが……

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