中 第四十六幕 花瓶の間
荘厳さを湛えた広大な円形の広間は衛兵や各地からの来客で賑わっている。
「はぁ……どうしたもんやら……」
そんな中、鎧を着込んだ男が覇気なく肩を落とし脚を引き摺るように歩いている。
その姿からは哀愁すら感じる。
男は壁際に設えられた長椅子に腰掛け再び深いため息をついた。
壁に広く取られた大窓から差し込む陽射しはあるものの、あまりにも広いため昼間から各所で篝火が焚かれている。
少数の柱でこの広大かつ高さのあるドーム状の天井を支えられているのは帝国の有する建築技術の高さを物語っている。
揺らめく燈に照らされ居並ぶ夥しい数の見事な造りの彫像や美しい白磁の甕など、一級というべき美術品の数々がこの空間に華を添えている。
造形も作られた地域も様々なこれらは、そのほとんどが帝国が今までに奪ってきた戦利品だ。
これらの"花"を映えさせるためにこの広間は敢えて簡素な構造になっている。
故にこの広間は"花瓶の間"と呼ばれている。
ここは待合室のような役割を持っており、皇帝との謁見を待ちながら他国からの来賓は帝国の国威を目の当たりにさせられることになる。
その片隅で男は再び盛大なため息をついた。
「ガイウス師団長、しっかりしていただけますか?私まで気が滅入ってしまいます……」
現れたのは銀の鎧を纏うメガネをかけた女性だった。
彼女は男の前に立ってその名を呼ぶ
「中将の職は先刻めでたく皇帝陛下直々に解任されたよ……さらに、やったこともない人探しの命を下されてさぁ……失敗したらどうなることやら……おじさん胃が痛くて死にそう……」
「いい歳した大人が泣きそうな声で何言ってるんですか……あと、自分のことをおじさんと呼ぶのをやめてください、仮にも私の上司であり主なのですから……しっかりなさってください」
「好きで君の上役になったわけじゃないんだから、無茶言わないでくれよアウラ……」
「……いつか愛想をつかしてしまいますよ……」
ガイウスの言葉にアウラはため息混じりに言葉を吐き出した。
「まぁ、そう言わずにこれからも付き合ってよ……なんだかんだ頼りにしてるんだからさ」
笑顔を見せるガイウスに対してアウラため息をまたついた。
「で、どうして役職を解かれたのでしょうか、ガイウス様?」
「それがねぇ……」
アウラの問いにガイウスは先程のことを思い起こす。




