中 第三十四幕 鳥籠
「……レイチェル……おかえり……」
私のかけた言葉にレイチェルは力なく笑った。
「やっぱりダメだったの……チェル姉……?」
ミーナの言葉にレイチェルは近くの椅子に腰掛けて項垂れ肩を落とし
「なんで見つかんないんだろ……仕事……」
レイチェルらしくない小さな声がその唇から漏れ出てくる。
「……なんか、レイチェルはそういう器に収まるって感じがしないよね……」
私はいつものレイチェルから感じることを口にする。
とにかく口が悪いし思ったことをすぐ口にする彼女は良い見方をすれば自由、悪く見れば身勝手と言える。
今は彼女の持つ悪い面が現れている気がしてならない。
しかし、私は彼女のいい所を知っているし、彼女が他者に劣っているどころかすごい能力を持っていることも知っている。
身体能力はもちろん、美的感覚や興味のあることに対する勤勉さと集中力は目を見張るものがある。
レイナードはそんなレイチェルの特性を理解して、レイチェルの興味あることを引き合いにした教え方でずっと覚えの悪かったレイチェルにあっという間に読み書きを覚えさせた。
星や花、詩など意外に乙女チックなことに興味を持つレイチェルに思わず笑ってしまい彼女を怒らせてしまったのも今はいい思い出だ。
私は密かにレイチェルには自由でいてほしいと思っている。
仕事や社会というものは人が発展して身の回りが便利になっていくシステムなのかもしれないが、システムというものは即ちルールだ。
ルールは縛りと言えるだろう。
鳥は大空を飛んでこそ鳥だ。
ルールという名の鳥籠に入れられたら彼女はさぞ窮屈に思うだろう。
何よりそういう生き方をして幸せに暮らしているレイチェルの姿が私には想像出来ない。
今までレイチェルとバートには重荷を背負わせ過ぎた……その恩を返したいのもある。
「……ハァ、こんなんならシノギに戻るかな……」
「それはダメだよっ!レイチェル!!」
レイチェルの溜め息混じりに零した言葉に私は立ち上がって叫んだ。
「バートはレイチェルや皆にそれをさせないためにレイナードをリーダーにして今も汚れ仕事を頑張ってくれてるんだよ!」
皆が動きを止めて私を見ていた。
「……悪かったよ……だからそんな怖い顔しないでくれよ……」
レイチェルは驚いていたが顔を背けてバツが悪そうに俯く。
「こっちこそごめん……言い過ぎたね……」
ミーナの驚きの視線に気づいて私は冷静になり謝ってまた座る。
その時ドアを開けて入ってきたのはバートとレイナードだった。
「……どうした……何かあったか?」
バートの戸惑いの言葉が静まり返った廃屋同然の粗末な家の中に響いた。




