中 第三十三幕 仕事
夢パートになります。
少し改変しました。
私は窓辺で縫い物をしていた。
私は今、軍服の襟の部分に手を加える内職をしている。
固い上に厚手の生地は縫いにくいが、必要な道具も揃えてもらっているし、比較的安定していて身入りがいい仕事だ。
私が生まれるよりずっと前の話だが、王政から帝政に変わってから戦争が増えたと聞いている。
帝国が火蓋を切った隣国への侵略戦争は苛烈を極め、今もそれは続いている。
いくつもの国が帝国の版図に収まり屍の山はその嵩を増している
ここにいる子供達はほとんどが元々国境付近に住んでいた戦災孤児だ。
私は事情が違い2年程前に父と母が流行り病で死んでしまった……たった2年だが、あまりに濃密な時に埋もれて遠退き褪せかけてきた記憶……その中に幼い頃から母に裁縫を習っていたことがここで活きた。
だからこそ、この仕事ができている。
周囲では子供達がそれぞれに与えられた役割をこなしたり遊んだりしている。
ふと顔を上げてその様を見ているとレイチェルが稼げていることが誇りだと言っていたことが本当の意味で理解できた気がする。
「シェリー姉さん、手伝おうか?」
申し出てくれた女の子に私は笑みを向け
「大丈夫だよ、ミーナもみんなのお世話ご苦労様、少し休んだら?」
私の言葉にミーナは俯き躊躇いがちに口を開く。
「……実は、私もシェリー姉さんみたいに裁縫で身を立てたいって思ってて……その……教えてほしい……です」
ミーナの言葉に私は少し驚く
ミーナは私より少し年下で生意気なところがあり、よく私に対して反抗したり馬鹿にした態度を取ることがあった。
逆にレイチェルとは馬が合うようで以前はレイチェルによく盗みの技を教わっていた。
そんなこともあって言い辛かったのかもしれないが、環境の変化に伴い考えが変わったようで私に対する態度が変わってきたとは思っていたが……こんなことを考えていたというのは意外だった。
「……わかった、一緒にやろう」
私の言葉に嬉しそうにミーナは顔を上げて椅子を取って来て私の傍に座る。
私はレイナードの教え方を思い出しながらミーナに手解きをしていく。
レイナードがリーダーになりもう一年以上が経っている。
私も含めて成長期の子共だ、皆一回り以上大きくなり、読み書きの基礎も小さすぎる子を除いてほぼ全員が習得できていた。
そして、私は幸運にも最初に仕事を得ることができた。
針子の内職……その情報に触れられたのは正に幸運だった。
そして、もし文字が読めなかったら私はそれに気づくことさえもできなかった。
知識は選択肢になる……それを私は皆に示すことができた。
私がミーナに裁縫を教えていると、ドアを開けてレイチェルが入ってくる。
レイチェルはひたすらに疲れた顔をしていた、心なしか頬がこけているようにさえ見える。
「……レイチェル……おかえり……」
私のかけた言葉にレイチェルは力なく笑った。




