中 第二十九幕 反撃の狼煙
怪我をして休職中なので書けてます……
読む方も頑張りたい……
勉強もしなきゃ……
「…………なるほど……悪くない提案だ……」
少しの沈黙を置いて背中越しに返されたカルロスの言葉に私は喉元に刃を突きつけられた心持ちになり青褪めた。
「これ以上は有り得ない好条件でしょう、いかがですかな?」
ミシュパートは髭を触りつつカルロスの後ろ姿を見る。
「……情報収集力とそれを使う能力は流石は凄腕の異端審問官と言わざるを得ないな……」
カルロスは肩越しにミシュパートを見て口元で笑みを浮かべる。
ミシュパートは満足げな表情で頷きその笑みに応える。
「……だがな……お前自身がどう言われているか把握していないのか?……少々俺を見くびりすぎだよ……ミシュパート=アスカロン……いや"不義のミシュパート"と言うべきか?」
突然カルロスは表情を鋭くし低い声音で凄んだ。
「ほう……」
ミシュパートは声を漏らし目を細める
「……お前は甘言で人を懐柔して裏切りを促して告発をさせ異端者をでっち上げ異端審問にかけた……そして裏切りを唆され利用された奴も諸共に火刑台に送る……この約束を守らない非道なやり口の代名詞としてお前のこの通り名は貴族社会じゃ知れ渡ってるんだよ……そんな奴の言葉を信じられるか……」
カルロスは剣を構えたまま肩越しにミシュパートを睨みつけてそう低く鋭い声音で言葉を吐き捨てる。
「これは手痛いご指摘ですな……なるほど貴殿を侮っていたようだ……貴殿の情報を知り与し易しと見て楽に仕事が出来そうだと思っていましたが……少々残念ですな」
ミシュパートはカルロスの刺すような視線を涼しい顔をして飄々として受け流す。
カルロスの言葉が真実なら、このミシュパート=アスカロンという男は正に最低最悪のクソ野郎というエレノア及び彼女の父親の言葉通りの人間ということになる。
「まぁ、いいでしょう……少々手間が増えた、それだけのこと……かかれ!」
ミシュパートの声に応じて私達を囲む男達がけたたましい靴音を響かせながら距離を詰めてくる。
追うも者の足音によって追われる者を萎縮させるために異端審問官付きの兵の靴は態と足音が大きく出るよう作られているという話を聞いたことがある。
その時、炎で描かれた夥しい数の図形と読めない文字らしきものが空を埋め尽くさんばかりの規模で展開された。
ミシュパートの兵達が足を止めて警戒態勢をとる。
『……お待たせしました……代わっていただけますか?』
頭の中に響くレインフォルトの言葉に私は承諾の意を返す。
「……久しいですね、ミシュパート……ここからはお望み通りこの私……レインフォルト=アーデルハイムがお相手を致しましょう……」
私の口がレインフォルトの言葉を紡ぎ、その片端を歪に吊り上げた。




