第二十一幕 今代最上の医師
「……聖騎士団長!?」
私は思わず体の主導権を奪取して声を上げていた。
「久しぶり……というほどでもないか……とりあえず無事で何よりだよクレア……あと、もう聖騎士団長ではないよ」
彼は確かに聖騎士団長カルロス=マクシミリアンだった。
「なんでこんなところに!?」
私の問いにカルロスは苦笑し
「後ろ盾のアルフレッドがいなくなってしまったんでな、いろいろ知りすぎてるおかげで勢いづいたヴァロワレアン家の反アルフレッド派の連中に命を狙われている……聖騎士団長の地位を返上して家名も捨てて命懸けのかくれんぼ中だ」
カルロスの皮肉に私は瞼を伏せる。
「あの日……何があったのか聞かせてくれるか、あと知っていればアルフレッドのことも頼む」
私はカルロスにあの日私と一緒に任務についていた聖騎士達が全滅したことと、ヴァロワレアン卿が死んだであろうことを簡単に話した」
「そうか……君だけでも生き残れたのは幸いだな、こうして部下達の末路と現状の確認ができた…….聞かせてくれたことに感謝するよ」
カルロスはグラスの酒を一気に飲み干す。
かなり強い酒らしかったが全く酔っている様子はない。
「今日の酒は苦いな……慰みにはなりそうもない」
横目に見たカルロスは苦味の走った笑みを浮かべていた。
そうしている間に店主が紅茶を出してくれる。
大した茶葉ではないが、落ち着く香りがした。
「…….俺を軽蔑するか?」
突然のカルロスの問いかけに私は戸惑う。
「家の為など柵もあったが、俺は全てを知った上でアルフレッドの所業に協力していた……アルフレッドのやってきたことはだいたい知っているんだろう?」
私は俯き紅茶の水面に目をやる。
「……わかりません……確かにヴァロワレアン卿がやっていたことは赦されることじゃない……でも、私も最近まで貴族で……思い起こせば……奴隷も家にいました……そんな私にあなたを裁く権利は多分ないです」
「変わったな君は……まぁ、一度にいろいろなことがありすぎたな……お互いに……」
カルロスは目を細める。
「……そろそろもう1人の彼が話したがっているんじゃないか?、代わってくれ」
カルロスの言葉と共に私はレインフォルトに身体の支配権を譲る。
「やれやれ、元々の身体の持ち主には敵わない……といったところですかね……初めまして、カルロス=マクシミリアン殿」
「捨てた家名だ……カルロスで構わない、それよりも、話には聞いている……お会いできて光栄だよ、今代最上の医師レインフォルト=アーデルハイム殿」
元聖騎士団団長は異端者に対し敬意を込めてその名を呼んだ。




