中 第二十幕 思わぬ再会
私はまだ本調子ではないアリアを馬車に残して薬師を探していた。
しかし、本当に今現在戦争の最前線となっているこの町に従軍していない薬師などいるのだろうか。
そんなことを考えながら裏通りをうろつく
『……あそこの酒場に行ってください』
レインフォルトの呼びかけに視界を巡らせると、いかにもな古びた酒場が目に入る。
トビーの酒場という店主の名を冠しているであろう店名の書かれた看板が掲げられている。
私は少し顔を顰める。
今まで縁の無かった場所だ。
どう考えても不快な思いをする予感しかしない。
しかたなく酒場に入ろうとするが、準備中の札がかかっていることに気づく。
『少し代わっていただけますか?』
レインフォルトの言葉に私は一つ溜息をついて了承する。
身体の支配権を得たレインフォルトがドアを押すとそれは抵抗なく開いた。
中には店主らしき男と、旅行者らしき男がカウンターを挟んで話している。
旅行者らしき男は室内にも関わらずコートを着て帽子を目深に被っているが、体格は明らかに大柄で聖騎士団でもなかなかいないほどに恵まれた体躯だ。
カウンターに手を置き振り向きもせず佇んでいる。
店主は気難しそうな老人で、こちらを睨みつけ
「おい嬢ちゃん、字が読めなくてもあれくらいの意味はわかんだろうが、準備中だ帰れ!」
「そう言わずともいいでしょう……久しいですね、私が治療した娘さんは元気ですか、マスター……いや、トビーと呼ぶべきでしょうか?」
レインフォルトの呼びかけに店主は訝しげにしていたが、すぐ驚きの表情を浮かべ
「……まさか……レインフォルトの旦那か!?」
レインフォルトはその間にもカウンターに腰掛ける。
「久しぶりですね、まだここでお店をしておられたとは意外でした……」
レインフォルトは懐かしむように目を細める。
「ああ……あん時は世話になった……恩が返せそうで何よりだ……何か飲むか?」
「アルコールの類は手元が怪しくなりますのでね、酒以外で頼みます」
レインフォルトの言葉に店主は苦笑して湯を沸かし始める
「おっと、カルロスの旦那、話しの途中すみませんね、昔の恩人なもんで」
「かまわんさ……聞いた名……というより会えると思っていなかった存在に思わぬ所で会えて俺も悪い気がしてない……」
旅行者らしき男は帽子を脱いでこちらを見る。
眼鏡をかけた赤い瞳と赤毛が印象的な男だった。
「……聖騎士団長!?」
私は思わず体の主導権を奪取して声を上げていた。




