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中 第十七幕 行き倒れ

 薄暗い粗末な廃屋らしき家に私を含めた何人かの少年少女達が身を寄せ合うように過ごしている。


 見知った顔ばかりだったが、以前見た時より明らかに人数が減っていたし、住んでいる場所も以前の所とは違っているようだった。


 私は自然とこれがこの間見た夢の続きだと察していた。


「シェリーお姉ちゃん、お腹すいた……」


 私だが私でない存在に幼い少女が話しかけてくる。


「もう少ししたらバートとレイチェルが帰ってくるから、もう少し待とう……ね?」


 私は少女を宥める。


 やはり以前見た夢と同じ少女として私はここに存在しているようだった。


 身体はやはり言うことを聞いてくれない。


 全く知らない場所、知らない子供達のはずだが、あまりにリアルで鮮明だった。


 (これって、この身体の持ち主……シェリーの見聞きしたものを見せられているの……?)


 そんな考えが私の頭に浮かぶ。


 しかし、もしそうなら何故こんな誰ともわからない少女の記憶が私の夢で流れているのかがわからない。


 シェリーの口から出たバートとレイチェルという名前も記憶に刻まれていた。


 ここでは私、シェリーは孤児としてスラムに同じ境遇の子供達と肩を寄せ合って暮らしており、バートとレイチェルは盗みをして私達の暮らしを支えてくれている年長の2人だ。


 私の場合は普通なら夢の内容などというのは大体すぐに忘れてしまうのだが、前回の夢の内容を不思議と鮮明に覚えていた。


 シェリーも空腹を抱えているようだが、気丈に年少の子供達に気を遣っている。


 それが健気だった。


 どこかにいるこんな子供達が飢えに苦しみ懸命に生きなければならない……そんな現実があることを頭ではわかっていたつもりだったが、いざ体験すると心が痛んだ。


 そんなことを考えていると、バートとレイチェルが帰ってくる。


 みんなが喜び勇んで彼らを出迎える。


「みんな喧嘩せずに食うんだぞ、他の奴の取り分を奪るのもなしだ!やったらアタシがブン殴るからな!!」


 レイチェルが相変わらず荒い言葉遣いで言い、持ち帰ったパンを鮮やかにナイフで切り分け、バートが革袋から水を瓶に注ぐ


 子供達は我先にとパンを手に取り食べ始める。


 水も瞬く間にそれぞれのコップで掬い取られていく。


 皆食べられる喜びに笑顔を咲かせている。


 その様を見るレイチェルの眼差しはとても優しい。


 バートも同じように子供達を見ていた。


 バートはレイチェルに比べて無口だが、頼りになる雰囲気を持っていた。


 見ているだけでパンを取らない私にレイチェルはパンを押し付けるように手渡してくる。


「私も年から言ったら食べ物を取ってくる側なのに……いいの?」


「何言ってんだよ、シェリーみたいに鈍臭かったら逆にあっさり捕まって終わりだよ……それよりシェリーがコイツらの世話してくれるからアタシもバートも安心して稼ぎに行けてるんだ、シェリーもちゃんと役目を果たしてる……遠慮なく食ったらいいんだよ」


 レイチェルの眩しい程の笑顔と彼女らしい素直ではない言葉に私はパンにおずおずと手を伸ばし受け取る。


 ふと視線が上がった時、格子窓から見える景色の中にボロボロの格好の少年がフラフラと地面が剥き出しの通りを歩いて行き、そして倒れる姿が目に入った。


 次の瞬間には私の身体は外へと駆け出していた。

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