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中 第13幕 情報

『異端審問官がこの町にいます』


 レインフォルトの念話に私は心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた。


 異端審問官……教会のいわば治安維持機関とも言える存在。


 異端者狩りで広まったその悪名を知らぬ者はいない。


 彼らが教えと正義の名の下に火に焚べた人々の数は最早数えられない程にのぼる。


『それでもっ、それでもアリアの両親が町にまだいる!』


『気の毒ですが二人は捕らえられました……隣人にでも売られたのでしょう』


『どうしてそんなことがわかるの!?、もしそれが本当だとしてもアリアの両親を助けなきゃ!』


『どうやって助けますか?、異端審問官は武装した私兵を従えています、逆らえば捕らえられるか返り討ちにあうのは私達です』


 レインフォルトの言葉に私は口籠る。


『そしてどうして私に今の状況がわかるのか種明かしをしましょう……異端審問官の実態を交えて……ね』


 レインフォルトは私の体で手綱を繰りながら語りかけてくる


『私は異端者として生きてきました、異端審問官によって何人もの仲間達やせっかく救った患者達が捕らえられて意味なく拷問にかけられ死に追いやられました……あのヴァロワレアンがそうしていたように……』


 一旦言葉が切れる。


 レインフォルトは苦々しい思いを噛み潰しているようだった。


 伝わってくるのは彼らを救えなかった無念とも言える悔恨の念。


『だからこそ私は情報の重要性を誰よりも認識しています……聖アリエラ教徒という傲慢で残虐な悪魔の手から逃れるために』


 私は彼から吹き付けるように伝わってくる怒りにただ黙っているしか無かった。


 彼が異端者狩りの時代を異端者として生きてきたことが伝わってくる。


『外で(からす)が騒いでいるのは以前から私が屍術で操り斥候として使っている数羽の烏の骸がこの地域に元々いる烏と衝突しているからです……視覚共有をしているその眼が私の知る異端審問官の姿を捉えました……』


 レインフォルトの言葉にはいつもの余裕がない。


『異端審問官ミシュパート……またあの姿を見ることになるとは……老いてはいましたが間違いなくあれはミシュパートだ、以前から蛇のようにしつこい男でした……未だ現役とは風の噂に聞いていましたが、彼に見つかることだけは避けたいところです』


 レインフォルトの言葉から伝わってくる焦燥感、そして怒りと悲しみが混ざった感情に私は気圧されてしまっていた。


「……う……ん……」


 そんな中、アリアが目を覚ましたようだった。

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