[Data05:進一とそよ③]
※こちらは本編第十五話までの間に起きた、迫田進一とそよの物語になります。
「こいつッ!ちょこまかと!」
俺はケンオーの右腕を振りかざし《ケンオーナックル》の発射態勢を作る。
「その動作、必要かな?進一くん!」
ナックルを発射するより先にそよのムラマサがケンオーの懐に割って入って来た。
「くッ!」
俺は咄嵯に左腕で防御しようとする。
しかし、
「遅いです!」
そよは素早く身を翻すと、ケンオーの胴を斬りつける。
「ぐッ!!」
俺は確かなダメージを感じて後退する。
そしてムラマサの咥えた太刀がケンオーの背後で寸止めされた。
「…参った。俺の負けだ…」
俺は今日何度目かの敗北を認め、電神を粒子に戻す。
「やったー!私の勝ちですね!」
そよが嬉しそうに電神から出て来て、両手を挙げて飛び跳ねる。
「……お前、最近手加減しなくなったな」
「それだけ進一くんが強くなってるってことですよ!」
そよが笑顔で答える。
「まぁ、それはそうかも知れんが…にしても、相変わらず強いな」
俺は苦笑いしながら言った。
「いえ、私なんてまだまだですよ!」
そよは謙遜しながらも、どこか誇らしげに胸を張る。
「そうだな。少なくとも俺なんか足元にも及ばない」
俺は本心で答える。
「ふふ、またそんなことを言って。進一君は十分強いと思いますよ?自身を鍛え、努力し続けられることも、進一くんの強さだと思います」
そよは俺を見つめ真剣に答えた。
「そうか。フォローも上手くなったな」
俺は少し茶化すように言う。
「もう!真面目に答えてるんですけど!」
そよは頬を膨らませて不満げに俺を見つめる。
「まったく、嫌になるくらい強いよ、お前は」
俺は冗談交じりに言ったつもりだったが、そよは
「え…!?嫌に…?嫌いに、なっちゃうの…?」
言葉の意味をそのまま受け取ってしまったのか、不安気に小さく呟く。そのことに俺は気が付かなかった。
「じゃあ、ここでの特訓はここまでにして、また新宿目指して動くぞ。特訓出来そうな場所があったらその都度相手をしてくれ」
俺はそよの頭をポンと一つ撫でながら言う。
「あ、はい!頑張りましょうね進一くん!……あ、あと一つだけお願いがあります!」
そよは俺の手を掴みながら、真っ直ぐに俺の目を見る。
「何だよ?」
「えっと、そのまま頭を撫で撫でして下さい…」
そよは少し恥ずかしそうに言う。
「は?何でだ?」
俺は困惑気味に聞き返す。
「そうしてもらえると、何だか気持ちがほんわかしそうな気がするんです…」
そよが俯き気味に答える。
「そうなのか?」
俺はいまいちよく分からなかったが、とりあえず言われた通りにそよの頭を再び軽く撫でてやる。
するとそよは本当に幸せそうに目を細めた。
「……進一くん」
「ん?」
「やっぱりこれ、良いです…」
「そうか」
俺はそよの言葉を聞いて、何だか照れくさくなりそよの髪をわしゃわしゃと乱暴に掻き回してみる。
「うわ!ちょっと進一くん!?」
そよは驚いた様子で俺の方を見た。
「あ、悪い。手が滑った」
俺はわざとらしく手を離す。
「もう!折角いい気分だったのにぃ」
そよが口を尖らせて文句を言う。
「そんなことより、風待進次郎がいる新宿へ向かうぞ。何故爺と関わりがあるのか気になるからな」
俺はそよを無視して歩き出す。
「あ!ちょっと!置いてかないでくださいよぉ!」
そよが慌てて俺を追いかけてくる。
…風待進次郎。何で『ダイタニア』の開発者が爺と知り合いなんだ?
この疑問ばかりは実際に会って確かめる必要がある。
俺たちの旅の目標はまず風待進次郎に会うことに絞られていた。
寺から出て、俺たちはようやく最寄り駅へと辿り着いた。
ここまで来る間に特訓に良さ気な広場を見付けては電神を召喚し特訓していた為、牛歩の歩みで進んでいた。
俺一人なら野宿でも構わなかったのだが、今はこいつも一緒だ。
日が暮れる度に寝床を探すのが何かと手間が掛かる。
そんなで、駅に辿り着いたはいいが、時計の針は既に十八時を指している。
今日はこの辺りで宿を探す必要がありそうだ。
「なぁ、そろそろ今日の宿を探さないか?流石にこれ以上遅くなると色々不便だ」
俺は隣を歩くそよに声を掛ける。
「はい。だけど、私はお金を持っていないので……その、どこに泊まるかは進一くんにお任せします」
そよが申し訳なさそうに言う。
「あぁ、金のことなら心配するな。何故だか今は貯金がある」
俺は安心させるように答える。
「ありがとうございます」
そよは俺に微笑む。
「とは言え、俺はあんまり金を使わない質だから、高い所は無理だぞ?」
俺は釘を刺しておく。
「大丈夫ですよ!私も贅沢をしたいって訳じゃないですし」
そよはその薄い胸を張って答える。
だからと言って、女のこいつをネカフェやカラオケなんかに泊まらせるわけにはいかないしな……
俺はどうしたものかと考えながら、駅前を歩いていた。
「あ!進一くん。あそこのホテル安いですよ!休憩二千五百円、宿泊六千円からだって!」
隣を歩いていたそよが突然大きな声で、そのきらびやかな建物を指差しながら言う。
俺たちはいつのまにか歓楽街に迷い込んでしまっていたようだ。
「……お前、あれがどういう場所か分かってるのか?」
ラブホテルを指さしているそよに、俺は呆れ顔で訊く。
「え?もちろん!ホテルですよね?そのくらい私でも分かりますよ〜」
そよはあっけらかんと言う。
「確かに、ホテルには違いないんだが、その、普通のホテルとは利用目的がだな」
俺は何とかそよに説明しようと試みるが上手く言葉が出て来ない。
そよはそんな俺の腕を掴み
「進一くん!今日はここに泊まりたいです!お城のデザインがかわいい!」
「え!?あ!ちょッ!」
そよが半ば俺の腕を掴み引きずるようにその門を潜って行く。
「すみませーん。二人宿泊できますかー?」
そよが無人の受付に声を掛ける。返事はない。
「あの、誰もいないみたいですね……」
そよが困り顔で言う。
「あ、あぁ……」
俺はどこか上の空で答える。
「今はどこも無人化が進んでるからな…」
俺は少し混乱してか、見当違いな事を言っている。
「そうなんですね!じゃあやっぱり、このお部屋のパネルから好きに選んでいいんでしょうか?」
そよが興味深そうに言う。
「そ、そうだな……」
俺は適当に相槌を打つ。
「進一くん、このお部屋がいいです!」
そよはそう言って一つのパネルを指さした。
「そうか……」
俺の頭はまだ状況に追いついていなかった。
パネルに表示された部屋の内装は豪華そうだが、値段は至ってリーズナブルに見える。
「じゃあ、チェックインするか……」
俺はそう言い、タッチパネルを操作する。
「はい!楽しみです!」
そよは嬉しそうに俺の後に着いて来る。
(…あ、俺、まだ未成年だった……こんな所入っていいんだっけか?でも一晩寝床として借りるだけだ。それなら構わんだろう…)
俺はそう自分に言い聞かせて、部屋のドアを開けた。
「わぁ!すごい!広い!」
そよは子供のようにベッドの上で飛び跳ねている。
「あんまり騒ぐなよ」
俺は苦笑いを浮かべながら注意する。
「ごめんなさい。だってすごく綺麗なお部屋なんだもん!」
そよが謝りながらも楽しげに言う。
「そういえば、ここって、どうやってお金を払うのかな?」
そよは不思議そうに呟く。
「さぁな。だが、まぁ、カードキーもあるし、恐らくそれで払うんじゃないのか?」
俺は適当なことを言う。
「へぇ〜。便利な世の中になったものですね〜」
そよは感心したように言う。
「さてと、風呂でも入るか」
俺は荷物を置き、伸びをしながら言う。
「あ!私も入りたいです!」
そよが目を輝かせながら言う。
「おう。先に入っていいぞ」
「ありがとう進一くん!」
そよはそう礼を言うと浴室へと消えていった。
そよの奴、あんなにはしゃいで……まぁ無理もない。
俺だって『ダイタニア』を始めた時は興奮が止まらなかったものだ。目新しいものに触れるのは興奮するよな。
「さてと…」
俺はテレビの電源を入れる。
すると画面に嬌声と共に男女の赤裸々な行為が映し出された。
俺は目にも止まらぬ速さでテレビの電源を落とした。
「……馬鹿な…どうしちまったんだ、このテレビは……?」
俺は肩で息をし、頬に汗が流れるのを感じた。
「…何かの間違いじゃないのか?」
俺は再びテレビのリモコンを手に取り、恐る恐るテレビの電源を入れようとした。
ゴクンと唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。
その時だった。
「進一くーん!助けてー!ブクブクが止まらないー!」
浴室の方からそよが大声で助けを呼ぶ声が聞こえた。
「どうしたッ!?」
俺は床から両足が浮くほど驚いたが、直ぐ様浴室の方を振り返りそよの安否を確認しようとする。
が、何故か浴室の壁にある鏡は透けていて、ここからでも風呂場の中の様子が見て取れた。
裸のそよがバスタブから溢れ出た泡に埋もれそうになっている。
「な、ん、でッ!丸見えなんだよッ!!」
俺は心の底からツッコミを入れた。
「え?進一くん?あ!コレどうしようッ!?」
そよは自分の身体も隠さず俺の声に向き直る。
頼むから今はこっちを見ないでくれ!
「何で泡まみれになってるんだ!?」
俺は至極真っ当な質問をする。
「えっと、お風呂に入れて下さいってあったから、入れてこのボタンを押したらブクブクブクー!って」
「このボタンだな!?」
俺はそよが指差したボタンを押して、風呂の波打つ機能を止めた。次第に泡はおとなしくなる。やはりこのボタンが悪さしていたようだ。
「ふう!治まったな…」
俺はやれやれと、そよの方を向こうとしたが、今そよは何も着ていないことを思い出し、そよとは反対方向に勢いよく向き直りそのまま浴室を後にした。
「もう変なボタンは押さず、ゆっくり入ってこい…」
「はーい。ありがとう進一くん!」
「おう…」
背中でそよに返事をする。
どっと疲れた。
俺は部屋に戻り浴室に背中を向けて、ベッドに腰を下ろす。
ん?ベッド?
俺はハッとしてベッドを見渡す。
やっぱり、ベッドは一つしかなかった。
(はぁ……)
俺はベッドからソファに移動し、改めて腰を下ろす。
(今夜はソファだな…まあ、野宿よりは断然マシだ)
そんなことを考えていると、
「進一くーん。お風呂お先ありがとー!」
そよが元気な笑顔で浴室から出て来た。
その身体には備え付けのバスローブを巻いている。
上気した頬がいやに艶かしく映る。
「あ、あぁ……」
俺はドギマギしながら答える。
「お風呂、凄く気持ち良かったよ!」
そよは満足げに言う。
「そうか、それはよかったな……」
俺はどこか上の空で言う。
「進一くんも入ってきたら?私髪乾かしちゃおっと!」
そう言うとそよは上機嫌で鼻歌交じりにドライヤーで髪を乾かし始める。
「じゃあ、俺も入ってくるけど、いいか!絶対に風呂場の方を見るんじゃないぞ?」
俺は念を押しながら言う。
「ん?わかりました!」
そよは頭にハテナマークを浮かべながら元気に答えた。
(よし……!)
俺は少し安堵し、浴室へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎながら俺は考える。
(これからどうするか……)
そよはこの世界のことを何も知らない。
俺が教えてやるのか?ダメだ、柄じゃない。
あいつがダイタニアに戻るその日までは、せめて見守っていてやる。そのくらいが俺に出来る精一杯だ。
俺も所詮高校生のガキだ。あいつに教えてやれる知識にも限界がある。
俺はそんな事を考えながら頭から熱いシャワーを浴びていた。
眼の前の鏡に視線を落とすと、何故か視線を感じた。
まさか!
「そよ!まさかそこにいないよなッ!?」
俺は慌てて振り向く。
「ねえねえ進一くん!不思議なんだよ!この鏡、お風呂からだと鏡だったのに、こっちからだとガラスみたいにお風呂の中が見えるの!」
そよが無邪気に笑いかける。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は絶叫を上げ、急いで浴槽に飛び込み、湯船に潜った。
「ぷはぁ!!そよ!お前絶対こっち見んなって言ったろッ!!」
俺は浴槽から顔を出し、鏡面に向かって怒鳴る。
「ごめんなさい……つい……ね?」
そよは申し訳なさそうに微笑む。
「もういい……とにかく今日は早く寝よう……」
俺は呆れてため息をつく。
「うん!そうだね!明日も早いもんね!」
そよは嬉しそうに笑みを浮かべる。
俺も仕方無しに備え付けのバスローブを着て浴室から出る。
すると、そよはテレビの前に座り、リモコンのスイッチを押そうとしている。
「ちょっと待て!」
「え?」
俺はすかさず制止しようとするが、そよはそのままテレビを付けてしまった。
テレビには先程と同じ裸の男女の行為が映し出される。
「おいッ!そよ!消してくれッ!!」
俺はそよの肩を掴み懇願する。
「え?なんで?綺麗だよ?進一くんも見てみなよ」
そよはキョトンとした表情で俺に振り返る。
「いや、これは……その……違うんだ」
俺は顔を赤らめ、目を泳がせる。
「何が違うの?進一くん?」
そよは不思議そうな表情で首を傾げる。
「そよ、あのな……」
俺は言葉を選びながら慎重に話そうとする。
「お前はこの行為が何なのか分かっているのか?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「えっと……人間の赤ちゃんを作る為に必要なことだよね?」
そよは当たり前のように答える。
「それは、そうなんだが……」
俺はしどろもどろになりながら言葉を濁す。
「私は精霊だから、赤ちゃんは出来ないんだけど、人間って凄いよねー!」
そよは感心したように言う。
「ああ、そうだな……」
俺は苦笑いしながら相槌を打つ。
そうか。こいつは精霊だから人間の性に対する羞恥とか後ろめたさのようなものは感じないんだ。
恥じらいが欠如しているとかじゃなく、最初から違う概念を持っているんだ。
俺だけが意識して、馬鹿みたいだな…
俺はそんなことを思いながら、そよからリモコンを取り上げテレビの電源を切った。
そして、俺はそよの隣に腰を下ろした。
すると、
「進一くん!」
そよは急に俺に飛びついて来た。
「おわぁ!な、なんだよ!?」
俺は不意をつかれ、そよに押し倒される形で仰向けに倒れる。
バスローブ越しに柔らかい身体の感触を感じる。
「ねえねえ!進一くん!」
そよは興奮気味に言う。
「なんだ?どうした!?」
俺は戸惑いながら返事をする。
「私すごいこと思い付いちゃった!ケンオーとムラマサ、合体出来ないかな!?」
「が、合体ッ!!?」
俺は驚きの声を上げる。
「だって、私と進一くんが一つになれば無敵じゃない?進一くんと私の力を合わせれば、どんな敵でもイチコロだよ!」
そよは俺の上で無邪気に笑う。
「あ、あぁ……確かにそれは凄いな……合体、か……」
この状況で『合体』と言われてしまうとどうしても意識がそっちの方向に言ってしまい集中出来ない。
「でしょでしょー!早速やってみよー!」
そう言いそよは俺の上に跨るような体勢になる。
「えっ!ちょっ!まっ!」
俺の言葉は遮られ、次の瞬間には視界が暗転していた。
「…ん?」
カーテンの隙間から射し込む朝日の光で俺は目を覚ました。
昨夜の事を思い出し、俺は跳ね起きる。
俺は何故かベッドで寝ていて、その隣ではそよが気持ち良さげに規則正しい寝息をたてている。
「……待て待て。どこまでが現実だったんだ…?」
どうやら俺は昨日ベッドでそよと話してる内に寝落ちしてしまったらしい。
ソファで寝るはずだったのに、今ベッドにいるのが何よりの証拠だ。
しかし、問題はその後だ。
俺は確か、風呂から上がってそよがテレビをつけたのを止めようとして、そのまま押し倒された。
それから……
俺は必死に記憶を辿る。
「うぅ……ん……」
そよは寝返りを打ち、こちらに顔を向ける。
(人の気も知らず、呑気に寝やがって……)
俺はそう思ったものの、彼女の寝顔を見つめると自然と口元が緩んでしまう。
「ん……おはよう……進一くん……」
そよは眠そうに眼を擦りながら起き上がる。
「おう……おは……」
俺はそう返しかけて、あることに気が付き慌てて横を向く。
「あれ?進一くんどうかしたの?」
そよは不思議そうに俺を見る。
「おまッ!前ッ!はだけてるぞ!!」
俺はそよの胸の辺りを指差す。
「え?」
そよは自分の姿を確認する。
「わッ、本当だ」
そよは慌ててバスローブの乱れを整える。
「お前なぁ!もう少し恥じらいというものをだな」
俺はそう言いつつ、そよにはそういう人間のような感情が無いということを思い出した。
だが、そよは
「えへへ。ごめんなさい」
と、頬を軽く朱に染め、上目遣いで俺に誤ってきた。
ん!?
この表情は何だ?
俺には恥ずかしがっているようにも見えるが…
「なぁ、そよ」
「なに?進一くん?」
「お前、もしかして、俺のこと好きか?」
「え?どうして?」
そよは少し驚いた表情を浮かべる。
「いや、何となくそんな感じがしたんだが……俺の勘違いのようだ」
俺は苦笑いしながら答える。
「ふーん……」
そよは不思議そうな表情のまま首を傾げる。
「なんだよ?」
俺は怪しむようにそよを見る。
「進一くんって、エスパーなのかなーって思って……」
そよはクスリと笑みを浮かべる。
「はぁ?何言ってんだ?そんなわけないだろ?」
俺は呆れたように言う。
「そうだよね。うん。変なこと聞いてごめんね」
そよは少しだけ笑顔を崩し、申し訳なさそうな顔をする。
「ところでさ、進一くん!昨日のアレ!やってみようよ!」
そよが突然提案してくる。
「えっ!?」
「ほら!合体!合体だよ!」
「あ、ああ……そうだな」
俺は戸惑いながら、昨夜の事を思い出し返事をする。
俺たちはチェックアウトを済ませ、駅前の広いバスのロータリーにいた。
「…来い来い来い来いッ……!」
「…来て来て来て来てッ……!」
お互いが詠唱を始め、そこに召喚門が描かれる。
「来い!ケンオー!」
「来て!ムラマサ!」
そして、上半身の様なケンオーと、下半身の様なムラマサが召喚された。
「電神は精霊の力によって動き……」
「精霊はヒトの願いによって動くんだよ…!」
この瞬間、何故か俺はそよと気持ちが一つになっているかのような感覚を覚えていた。
「進一くん願って!私たちの新しい力を!」
そよが叫ぶ。
「あぁ……行くぜ!」
俺は右手を前に突き出し、唱えた。
「無敵合体ッ!!」
すると、俺とそよの身体が一瞬にして光に包まれる。
ケンオーとムラマサがお互いに引かれ合い、各部が変形していく。
ケンオーの胴体部に、ムラマサと結合出来そうなジョイントが形成される。
ムラマサもその形状を変え、より人型のフォルムへと各部を変形させていく。
ガキン!ガキン!と、ケンオーとムラマサが確実に連結し一つの電神になろうと合体していく。
光に包まれていた俺たちは、気が付くと上下複座型のコクピットにいた。
俺が上の操縦席でそよが下の操縦席だ。
ケンオーの胴体上部から勢いよく頭部が迫り上がる。
その顔には人型の目鼻口があった。
その電神が力を込めた両腕からプラズマが発生し、全身に血液が巡るように力を漲らせる。
ムラマサから放たれた《妖刀村正》を右手で受け取り、天高くかざす!
そして俺とそよの声が重なる!
「「無敵合体ッ!《マケンオー》!!」」
そこには太刀を構えた黒光りする鎧武者の様な電神がいた。
その名も《マケンオー》!
【次回予告】
[そよ]
その名も!マケンオぉー!やったあ!
[進一]
今回は色々危なかったが、
何とか着実に強くなっていってるな。
[そよ]
進一くんはちっともザコじゃありません!
次回!『超次元電神ダイタニア Data Files』!
Data07「進一とそよ④」
…何だか胸の奥がトクトクするの。これは何?
※次回の Data07「進一とそよ④」は本文を拡大してスペシャル特版でお送り致します。お楽しみ下さい。