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エピソード03

どれくらい経ったのだろうか···

学友たちは、クロエに目もくれず会場へ入り

会場前の広場には、クロエだけが立ち尽くしていた。


『クロエ・ジェラート、か···

クロエって、アイルの口から久しぶりに聞いたわ』


義弟の辛辣な言葉から現実逃避するように

ぼんやり昔のことを思い出す。


『そうだ、私がロベルト様との婚約をお受けした時だ···』


アイルの実母と、クロエの亡き母は非常に仲が良く

クロエとアイルは、物心つく前から交流があった。

同じ歳ということもあり、物心ついた頃には

自然とお互いが特別な存在になっていた。

それは、クロエの母が亡くなってからも変わらず···


クロエの母ソフィアは、生来身体が弱く

無理をすると寝込むこともあったが

性格はそれを全く感じさせぬ

天真爛漫でどこか浮世離れしたような人だった。


クロエとソフィアは味覚が似ており

常に一緒にとる食事では、苦手な料理を

2人で褒め合い、応援し合い食べていた。

そして、どうにも頑張れない料理が出た時には

母に手を引かれ、2人で庭の隅っこに作った

秘密基地へと脱走するのだ。


仕事から帰ってきた父には

使用人を困らせるなと怒られたけど

そんな楽し過ぎる毎日を全力で過ごしていた。


母との別れから、クロエに起こった1つ目の異変は

母との思い出が詰まった【食事】だった。


好きとか嫌い以前の問題で、お腹が空かない。

心配する父の声は、もちろん耳に届いており

安心させてあげなきゃ!と子供心に思い

どれでもいいから少しでも食べてくれと

手当り次第に用意された料理の中から

クロエの好物であり、比較的食べやすいであろう

プリンに手を伸ばす。


しかし、味がしない匂いがしない。

冷たい、柔らかい、そんな事ならわかる。

でも、甘いもほろ苦いも感じない。


記憶の中にある味と、実際食べた味との違いにより

胃が情報の不一致に耐えきれず、嘔吐する。


そして、母との楽しかったはずの食事は

悪循環の坂道を転がり落ちる。


違うものを頑張って食べても

やはり味はせず嘔吐してしまう。

しかし、食べなければ死んでしまう。

自分を奮い立たせ、無理矢理食べるが

嘔吐の苦しさへの恐怖から口へ運ぶ量も減る。

小さくなった胃のせいでさらに食欲をなくす。


色々試した結果、クロエが嘔吐せず食べられたのは

皮肉にも、母と一緒に逃げだすほど苦手な

《ナットーゴハン》のみ。


何故食べられるかというと

大っ嫌いな匂いと味がしないからだ。

それでもネバネバの食感はしっかり感じるので

食べれはするが、本当は食べたくない。

しかし、そんな贅沢なことは言ってられない。


幸運なことに《ナットーゴハン》は非常に栄養価が高い。

大っ嫌いな《ナットーゴハン》にクロエの命は救われたのだから

《ナットーゴハン》を含む

《ニホンショク》の文化を根付かせてくれた

長い歴史を持つ、このアース国の初代王妃には

感謝してもしきれないほどだ。

クロエとクロエママの苦手な食べ物は

ほぼほぼ《ニホンショク》です。多分···

ーーーーーーーーーーーーーー

大っ嫌い→ナットーゴハン

苦手→ニモノ、ヒモノ、ミソ味

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