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エピソード19

「ただいまクロエ嬢···

って···どうしたの!?その顔??」


上機嫌なまま、クロエの元に戻ったハーツは

クロエの虚無感を掲げた表情に慌てふためく。


言わずとも変化に気づいてくれたハーツに

喜びの気持ちを抑えつつ、クロエは苦言を呈する。


「ハーツ様···

考えあってのことだとわかっておりますが

異性の心を掻き乱すような真似はお控えください。

心臓と呼吸が乱れて···しんどいのです。」


「ふふっ、少しは焼いてくれた?

先ほどは仕方なしの部分が多かったのだけど···

クロエ嬢が望むなら、やめようかな?

でも···貴女だけは私を許してくれるでしょ?」


ほんの少しだけ慌てた様子が垣間見えたが

すぐ余裕綽々としたハーツに戻ってしまい

結局やり込められてしまうのだった。


『んんんーーーっ!!!

ハーツ様、本当にそういうところです···』


諦めから肩の力を抜いたクロエに

実のところ、ハーツはホッとしていた。


『良かった···

母君が宝を盗んだと誤解させる言い方を

わざとしていたから、軽蔑されたかと思った···

信じて待っていてくれたんだね、クロエ嬢?』


「さぁ、クロエ嬢の家に向かおうか?」


気を取り直し、再びクロエの手を取ると

くるっとアイルに視線だけ向ける。


「アイルは罰として1人で帰ってね?

あ、公爵も立ち会った方がいいんじゃないかな?

次期当主だけじゃ力不足でしょ?」


ニタニタと煽るような表情と言葉に

アイルは半分ムッとし、半分は呆れた。


「···当然だ、当主にも一緒に監視してもらう。

今から王城の執務室へ報告しに行き

そのまま一緒に公爵邸へ向かう。

···当主不在に勝手に入られては不快だ

街にでも行き、時間を潰してから来い。」


「ふふっ、そうそういい感じだよ?

クロエ嬢、お許しが出たことだし

街で旅支度を整えたり、軽く食事をしたり

楽しくデートしようね?」


「ででで、デート???」


家族と、生まれ育った家との決別を控えた今

場違い過ぎる単語の出現に

もしや聞き間違いかと思うほど驚愕する。


クロエとてデートしたことぐらいある。

出会った頃を含めば12年

マメすぎるロベルトとは、デートどころか

大袈裟にいえば、おはようからおやすみまでの間

お互いの外せない予定以外は

同じ時を過ごしてきたのだから。


『···朝は迎えに来てくれて

学園では同じ教室で学び

王城で受ける教育の合間に一緒に食事を取り

帰りも欠かさず送ってくれた···

休みの日は色々なところに連れ出してくれた···』


しかし、6歳からの12年。

幼子のうちに、共に過ごすことは当たり前となり

刺激とは程遠い穏やかな関係であったため

ロベルト以外とのデートを想像するだけで

クロエは緊張感に包まれた。


「そう、デート!

私とクロエ嬢の最初で最後の

アース国でのデートだよ?

恐らくこれで街へ行くのは最後だから···

しっかり目に焼き付けてね?」


旅支度と食事は、先が見えない状態の

クロエにとっては必要不可欠なことで

本来であれば、一番の目的なのだろうが

きっと、先ほど聞いてくれたとおり

思い残すことがないよう配慮してくれたのだ。

それが十分過ぎるほどクロエには伝わった。


「ハーツ様···

生まれ育ったこの国を···私の心に刻みます。」


『それにしても······』


クロエは、ハーツとアイルの会話に

何度も違和感を感じていた。


『2人の会話は、額面通り受け取れば

険悪そのものだけど···なにか違う···

言葉遊びをしているような···

阿吽の呼吸でお互いの本心を

違えることなく理解しているような···

(言動)に異常があったとしても

意思の疎通は図れるということなの?』


クロエは、こちらを見ようともしないアイルから

視線を離すことができなかった。


『アイル···

貴方の本心を理解することができるの···?』

クロエの虚無感顔は

チベスナ顔をイメージして書きました!


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