エピソード17
「美しい人、ご挨拶遅れましたことお詫び申し上げます。」
「ふぇっ!!わ、私!?」
「はい。他に相応しい者はおりません。」
「にゃ、な、なにっ!?
さっきまであの女の味方してたじゃんっ!!」
人目にもわかるほど、ナオコは動揺しているが
訝しげな表情は保ったままだ。
「ふふっ、貴女の憂いを晴らすには
あの者がこの国にいては不都合でしょ?
我が国の者として、適切に処置しいたします。
それで···貴女に1つお許しいただきたいことがあるのです。」
「うぅ、、、取り引きとかそんな系??」
「いいえ、優しい貴女に乞い縋るしかできない
哀れな男をお救いください。」
ハーツは、ソファーに座るナオコに跪き
そっと取った手の甲へ軽い口付けを落とす。
「お願いします、私の美しい貴女。」
「なぁーー!!ぐぅっ!!ハァハァ···」
上目遣いのハーツに、ナオコの顔は
恥ずかしいほど緩みきっている。
『わかるわ。あんなことをされれば
心臓と呼吸がしんどくなってしまうもの···』
クロエも思わず同情してしまうほどだった。
『確か隣国の皇子っていってたっけ?
もしかして隠しキャラかなんか??
知らない間に別ルート開いちゃった?!
てか、こんな小説もゲームも知らないから
選択肢不明すぎるんだけどっ!!』
「···聞くだけならいいけど!?」
「ナオコ様、ありがとうございます。
実は···あの者の母が我国の宝を有したまま
この国へ渡ってしまったため
私はその返還を求め、この国へ来たのです。
金銭的、美術的価値は無いに等しいのですが
それを持つ者に、与えられる爵位があるのです。
私は第5皇子の身の上であるゆえ
それらを手に入れ、その爵位を継承したいのです!」
「ぷはっ!悪役令嬢の母親は泥棒?w
マジウケるwww
でー?その宝を寄越せーって話??」
「はい。
元はガイル帝国の有する宝。
その全てを取り戻すことができなければ、
次は国として動くほか道はありません···
貴女と貴女のいるこの国を
無用な争いには巻き込みたくはないのです。」
『へぇっ?!
ちょっ!これ戦争始まったりするやつ??』
「ロ、ロ!ロベルトっ!!
ちょっと!こっち来てっ!!」
近くで跪くハーツに声が漏れないように
クロエとハーツのそれより密着した
間を隔てる物がないほどの距離で
ナオコとロベルトの密談が行われる。
「あいつ、あのハーツ?ってやつ!!
あの女の母親が盗んだもの返さなきゃ
戦争するみたいなこと言ってるけどマジっ?!
断れんの?断れないの?どっち?!」
「···っ!!」
『あらぁ〜、こりゃダメだ···顔死んでんじゃん···
聞いただけで負け犬の顔とか···雑魚すぎっ!』
「あいつの国ってヤバいの??」
「······この世界で最大最強と言われています。」
『あぁ~あ!!さいっあく!!
ルート選択ミスった?!
私の異世界ライフ詰んでんじゃん!!』
ナオコは天を仰いでから
投げやりな動きで、ドカッとソファーに座り直し
深く身を沈め、頭を抱えてしまった。
いまふと思ったんですが
主要キャラたちがあれこれしてる時
モブキャラたちは
なにしてるんでしょうねー?
踊っり食べたりする訳にもいかないだろうし
見守るほかない感じですかね?
モブのお仕事もなかなか辛いですね!