ロベルト・アースside02
読み聞かせてもらうほどの幼さはなくなったが
いつからか、眠る前にあの絵本を読むことが日課になっていた。
···いや、読まずには眠りにつくことができなくなっていた···
幼い頃より始まった王太子教育だけにとどまらず
《迷いの愛し子》からアース国が授かった
この世界にはない類まれなる知識を
余すことなく最大限に習得するため
ロベルトは年齢にそぐわない日々を送っていた。
本来であれば、さらに王族でなければ
遊び食べ眠り両親に甘えるだけの年齢である
6歳だというのに、すでにその教養と知識は
同年代と比べることすら恐れ多いほどで
その程度は、王都学園への入学水準を軽く超える程だった。
そんなロベルトは、この国を憂えていた。
アース国は、他国にはない文化に溢れており
それはひとえに、《迷いの愛し子》の知識の恩恵である。
しかし、国民はそれを当然のものとして享受し
感謝しながら過ごす者など当たり前にいない。
無茶な要求なのは、重々わかっていた。
自分自身も、王家の一員であることは
もはや当たり前で、王族としての暮らしぶりに
日々感謝し続けながら過ごすなど無理がある。
国民とて同じで、それが普通の感覚なのだ。
わかってはいるが、求めずにはいられなかった。
《迷いの愛し子》が敬われ愛されていなければ
どうにも我慢ならないのだ···
崇拝とも言える自身の異常性を
聡いロベルトが気づかぬはずもなく
その異常性が露見しないよう取り繕い
身を隠す思いで日々をやり過ごしていた。
『もう何人目だ···』
同年代の遊び相手を探すというていで
引き合わされた婚約者候補の数は
10を超えた頃から、覚える気もなくなった。
『誰にも期待はしていない。
けれど、せめて生涯の伴侶となる者には
少しでも同じ価値観を持っていて欲しい···
そう思ってしまうのは、私の我儘なのか?』
顔合わせした令嬢は、同年齢ばかりで
6歳の子供に求めることすら間違っているのだが
《迷いの愛し子》に対し、なんの理解も
なんの感情も持ち合わせていない彼女たちに
ロベルト自身も、特別な感情を持つことはできなかった。
『仕方のないことだ···婚約者の選考は
少なくとも王都学園への入学まで待ってもらおう···』
ロベルトの希望は叶い
この国の成り立ちが理解できるであろう年齢まで
婚約者選考は延期された。
しかし、あの日
先送りにしたはずの婚約者選考を覆すほどの
決定的な出会いがあったのだ···
「あのね、ロベルト殿下
私は《ナットーゴハン》に命を救ってもらいました。
なので···《ナットーゴハン》を教えてくれた
初代王妃様を、すっごくすっご〜く尊敬しています!
ずっとお礼を言いたかったから···
今日、ロベルト殿下にお会いできて嬉しいです!」
『初代王妃の知識に命を??
···この令嬢は正しい、正しく理解できている!
我々アース人は《迷いの愛し子》から
与えられた知識により命を繋いでいるのだから!
あぁ···神よ!今初めて貴方に感謝します!!』
同じ価値観を持つ者との奇跡とも言える出会いに
ロベルトは、喜びを噛み締めるよりも先に
身震いするほどの興奮を抑えることに必死だった。
『ダメだ!怖がらせてしまう!
この狂気にも近い想いを悟られでもしたら
純真な心を持つこの令嬢を怯えさせてしまう···
絶対に逃がすわけにはいかないのだから!
心を深く鎮めなければ···』
「······同じだね!
私も初代王妃様をとても尊敬しているんだよ?
クロエ嬢、私と友達になってくれないかい?
私達はきっと気が合うと思うんだ!
私は王城で暮らしているから
同年代と出会うこともあまりなくて···
少し寂しいんだ···」
ロベルトは無理やり心を鎮め
できる限りクロエに合わせて言葉を選んだ。
『お願い···受け入れて···!』
「はい!
私も寂しかったから···
お母様と会えなくなっちゃって
毎日涙が零れちゃうんです···
だからロベルト殿下とお友達になれたら
すっごく嬉しいです!」
公爵夫人の不幸を知っていたロベルトは
その返事に、同情が含まれていると気づいていたが
むしろ都合が良いとすら思い、神の巡り合わせに感謝した。
書きたいところまで納まらなかった···
もう1話ロベルト続きそうです(汗
ガチオタの域を
遥かに超えてしまったロベルトくん
6歳でこれとか無理無理の無理です···
ちなみに学園での成績は万年3位でした!
1位2位のアイルとハーツが天才すぎたことと
《迷いの愛し子》関連に特化し過ぎたことが敗因です!
(誰も競ったつもりはないと思います!)