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ロベルト・アースside01

「そして、《迷いの愛し子》を愛し守った国は幸せになりました。おしまい。」


もう何百回も読み聞かせてもらった絵本を

今日初めて読んでもらったかのように

キラキラした目を見開き、興奮をあらわにする。


「ロベルト殿下は、本当に《迷いの愛し子》様がお好きなんですね。」


ロベルトは、お気に入りの使用人マリアに

毎日この【《迷いの愛し子》と幸せになった国】

という絵本をせがんで読んでもらう。


観劇と読書が趣味のマリアによって

オーバーリアクション気味に演じられる物語が

幼いロベルトの浅いツボを大いに刺激するのだ。


「だって!だってボクのおばあ様なんでしょ!?」


「ふふふっ···むかしむかしのおばあ様ですよ?」


いつもと同じ流れだが、マリアは今日も

ロベルトに優しく解くように語り聞かせる。


「《迷いの愛し子》様は、別の世界から

不思議な力によって、この国に来られるのです。

最初に来られたミキ様は、とても美しく

とても博学多才な方だったそうです。」


「ボクのむかしむかしのおばあ様だ!!」


「その通りです!

たった1人でこの世界に来られたミキ様は

とてもとても心細い思いをされていました。

でも、ミキ様と同じ《黒い瞳》を持つ民族が

ミキ様を守り、そして首長のご子息であられた

レア様と恋に落ち、結婚されました。」


「よかったぁ〜!」


「はい、本当に喜ばしいことです!

《黒い瞳》を持つ民族は

ミキ様から、この世界にはない知識を授かり

どんどん豊かに、どんどん強くなりました。

そしてこの世界最古の国、アース国を建国され

レア様とミキ様は、初代国王陛下と初代王妃殿下になられたのです!」


大興奮で拍手喝采を送るたった一人の観客に

マリアはつい、気持ちよくなってしまって

よく回る舌には、いつも以上の熱がこもる。


「レア様とミキ様、

レア様と同じ血脈を持つ民族からなる

最初のアース人は《純アース人》と呼ばれ

《純アース人》同士から生まれる子供もまた

《純アース人》として《黒い瞳》を持っているのです。」


「ボクの瞳はなんで違うの?」


『し、しまったーー!!

ロベルト様うるうるきちゃってるぅーー!!

完全に調子に乗りすぎたーーっ!!』


アース国では、《純アース人》であることが

一種のステータスとなっていた。

王家も《純アース人》であることを前提に

高位貴族令嬢と婚姻を重ねてきたのだが

今より4代前の国王が王太子であった頃

実り豊かな国土を持つアルス国より

王女を迎え入れ、以降の王家子孫は

《純アース人》ではなくなったのだ。


婚姻の理由など、どこにも書き記されていないが

その年代に起こった天候不順による

食糧危機の記録は、歴史書として残っており

食糧援助を得るために結ばれた婚姻だったと

片っ端から本を読み漁るマリアは推測している。


昔の貴族社会で《黒い瞳》を持たない者は

差別的な目を向けられていたが

王家とアルス国で結ばれた婚姻により

《純アース人》主義の考え方は刷新された。

しかし、今だに差別意識を持つ者も少なくない。


「ロベルト殿下!

現在、ミキ様の血脈を受け継いでいるのは

先代国王陛下、国王陛下、そしてロベルト殿下の

御三方のみなのですよ?」


「···おじい様と、おとう様と、ボクだけ?」


「はい!」


先ほどまで泣きだす寸前だったロベルトの様子が

すっかり上機嫌になり、マリアは首の皮が繋がった思いだった。


「アース人は、周辺諸国に比べて

子が生まれる数が非常に少ないのです。

多くても男女1人ずつしか生まれません。」


『その影響で、この国では女性も爵位が継げる。

そして、私のような低位貴族であっても

《黒い瞳》を持っていれば、引く手あまたの状態

高位貴族と縁を結ぶことすら夢じゃない。

まぁ、観劇と読書さえできれば

結婚相手なんて案山子でも構わない私には

何の関係もない話だけどね!』


「そして、王家はもっと特別で

長い歴史の中で、建国から今の今までずっと

王子お一人のみ、お生まれになっています。

ですから、御三方は誰より尊い存在なのです!」


『危ない危ない···

3歳とはいえ、ロベルト様はとても聡い。

特に《迷いの愛し子》には

並々ならぬ思いを持っておられるから

調子に乗らないよう、今後は気をつけなきゃ···』


「おばあ様の血脈を持つボクはとても尊い···」

やっとロベルトside書けましたー!

ロベルトsideをもう1話くらい

明日には書き終えたい感じです!


マリアが洗脳してる風に見えますが

ロベルトは《迷いの愛し子》のガチオタ、

マリアは節操なしの読書オタなので

お互いのジャンルがたまたまかぶった

オタ同士の集いみたいなもんです。

多少はマリアの影響を受けてそうですが···

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