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神官街

夕暮れの慌ただしい神官街を行き過ぎる

小物や服を売る店の人たちが、店じまいをしている

そこから農村部へ帰る人たちもいる

僕は人波に逆らうように進んで、神官さまの居住区へと進んだ

居住区入り口をすぐ右に折れて、行き止まりまで進む

行き止まりのすぐ横が目当ての神殿だった

あのときと違って、赤い目印も赤い紐も下がっていない

奥を覗くと、夕暮れの赤い光がまだ差し込んでいる

それとは別に右奥の小窓からオレンジの光が差していた

僕は失礼だと思ったが、他にどうすることも浮かばずに、ずかずかと神殿の中へとあがりこんだ

そして右奥にある扉をノックする

しばらく待つと小窓から光が消えて、すぐにパッと扉が開いた

黒く長い髪、白い神官服、あの頃と変わらないまま、彼女はそこにいた

僕はほっとして、思わず泣きだしてしまう

彼女は二年経っても変わらない僕の姿に少し驚きながらも、「ごめんね」と言って僕を抱き締めた

その意味は分からなかったけれど、僕は安心してぼろぼろ泣いた


彼女はすぐ僕を中に入れてくれた

ドアの右脇には三段ほどの本棚、部屋の真ん中にはカーペットとテーブル、左端にベッドがあった

彼女は僕をベッド脇に座らせる

僕は安心したせいか、お腹がぐぅぅ…と鳴ってしまった

「ちょっと待ってて」と、彼女は隣の部屋に消えた

僕の左手に開口部があって、そこと炊事場が繋がっているようだった

ベッドにもたれるようにして、向かいの本棚を見る

その上には窓があって、カーテンが閉まっている

僕の左にある開口部横には暖炉、その向こうも開口部になっており、どちらからもキッチンに行けるようだった

暖炉の上には、モノクロの山の絵がかかっている

暖炉もキッチンと繋がっているんだろう、チラチラと彼女の影が写る気がした


「お待たせ」と彼女がすぐに戻ってくる

手にはパンとスープとを持っていた

彼女もちょうどこれから食べようと思っていたのだろう

僕の目の前にそれらを置くと、また同じものを持って出てきた

二人で感謝を捧げてから食べる

僕はもくもくと食べたあと、先ほどあったことを彼女に話した

彼女は、またごめんね、と謝った

「もう少しちゃんと話せば良かったわ…」

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