さよなら
目が覚めると夕暮れだった
あっ、と思って飛び起きるが、まだ少し身体がフラついた
僕はまた少し目を閉じて、そろそろとベッドから降りた
そして大丈夫そうなのを確かめて、部屋のドアを開けた
向こうには母が背を向けて夕飯の支度をしている
テーブルには昼ごはんにと買ってきたのか、パンが置かれていた
スープの良い匂いを嗅ぐと、とたんにお腹が空いてくる
僕はとりあえず座って、パンを口にした
物音に気付いて、母がゆっくりと振り返る
母は何故か泣いていたし、震えていた
僕は思わず、食べるのをやめた
「出てって…」
か細い声で、母はそう言った
それから後ろにある塩の缶に手を伸ばすと、僕に向かって撒いた
僕は何が起こったのかよく分からなかった
母は怖い顔をしていた
テーブルを回ってこちらへ来ると、僕の腕を掴んで、すぐそこの玄関扉から外へと追い出した
玄関ポーチから、容易く下へと突き落とされる
母は僕を化物と罵った
「デイルに成り代わって何がしたかったか知らないけど、もうダメよ」と、泣きながら言うと、また塩を撒いて扉を閉めた
僕はどうしたらいいか分からなかった
どうしてこうなったのか、分かるけど分からなくて困惑していた
それから向かえるところが一つしか思い至らず、のろのろと歩き出した