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ヒーラー
僕は正直何も感じなかったが、母は身体の痛みが全て消えたと驚いていた
久しぶりに見る嬉しそうな母の顔に、僕は彼女が羨ましくなった
僕も神官さまになれたら、ヒーラーになれたら、母は喜んでくれるかなと思った
まだ三つくらいだっただろうか、幼い僕がコップを浮かせて遊んでいると母は凄いと褒めてくれたものだった
僕は嬉しくて、母の気を引きたくてちょくちょくコップを動かしていた
それから…あれは学校に入る少し前だ
母が、僕の大きくなったことを感慨深そうにしていて…
僕は、母に褒めてもらおうと部屋に呼んだ
そして、部屋のもの全てを宙に浮かせてみせた
母は驚いた顔をし、それからとても怯えた顔をした
僕は瞬間、これはダメなんだと悟った
それからすぐに、ものを全て降ろすと疲れきったフリをしてその場に崩れ落ちた
「デイル!」
母が慌てて駆け寄ってくる
僕はちょっと頑張りすぎちゃった、と笑った
「喜んでくれるかなって」
母は、そんなことしなくていいと言い、僕もこれからは母の前で何かを動かさないでおこうと思った