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Distant eyes  作者: 山田サンタ(hideaway)
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5話 Masquerade

 香の身体が小さく震えているのがわかった。

「どうしたの?」見上げると涙を流していた。

「ごめんなさい。ちょっと寂しかっただけ・・・もうすこし

こうしててもいいかな?」そういうと腕の力を更に加えてきた。

思いっきり彼女の胸に顔を食い込ませた状態でじっとしているだけである。

さすがにどう対応すればよいのやら・・・

彼女は別れた妻の娘である。もちろん再婚相手の娘であるから関係ないと

いえばそうなのだが、ここはやはり大人である。軽率な行動は良くない。

しかしこの状況で自制心など長くはもたない。ここはいっそ君の義母の

元旦那だとはっきり言うべきだろう。どうした? 何故言わない?

もう少しこの甘い香で気分が満たされてからでもいいじゃないか。

そんな感情が声を出すのを躊躇させていた。

「ありがとう、神田さんって紳士なんですね。何もしないなんて」

ちょっと困った質問だった。理由を説明したなら何と言うだろう?

まあ何れわかる事だろうし今説明しなくても・・・・

そんな考えがまた頭をもたげてきた。

いや、きっとまずい事になる、言ってしまおう。そう決心し彼女事情を

話す事にした。

「香ちゃんさっきCDの話したでしょ。あのCD実はボクのバンドの

演奏なんだ・・・・そんなに作らなかったから気になって聞いたんだよ。

そしたら君のお母さんのだって。そのお母さんというのは・・・・

別れた妻なんだ。 黙っていてゴメン。だから・・・」

そこまで言うと彼女が唇を合わせてきた、突然の事だった。

「何をするんだ? 今説明したじゃないか? まだ酔ってるの?」

「だって・・神田さんのこと好きになっちゃたんだもん。だめ?」

返事に困った。もちろん彼女の事は嫌いではないし、いい子だと思う。

しかしややこし過ぎる。 大人はこういった罠?には落ちない。

そう、今までの人生経験が選択肢を自動的に安全なほうだけ照らしてくれる。

間違いなくそっちの暗いほうは先が迷路だ。

「だめだよ。君の気持ちはすごく嬉しいけど・・・ゴメン」

暫く香は黙ってこっちを見ていた。そしてやっと諦めたのか少し寂しげに

微笑みながら小さな声で言った。

「わかった。好きになってくれなくてもいいから時々会いたい。それならいい?」

「もちろん。週2回はあの店に居るから・・・会えるじゃない」

少し冷たいようだがこうでも言わないと諦めてくれそうに無い気がした。

「あのCD聴いていい?」突然話題を変えてきた。顔を見ると少し泣いている

ようだ。それを隠そうとするしぐさが愛らしい。かわいそうな事を言ってしまった。

少し後悔しながらミニコンポにCDをセットしている香を見つめていた。



Masquerade

  George Benson←ジョージ・ベンソン演奏

 http://www.youtube.com/watch?v=RpEfAV1T5b0&feature=fvw

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