表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

7 絶望と決意

第1部「マントラ・ウォーズ ~超常のレジスタンス~ 能力覚醒編」

第2部「マントラ・ウォーズ 伝説の剣を手に入れろ編」

も是非お読みください。

 アジットがマーケットで偶然バーニに出会った日から10年の歳月が経とうとしていた。

 この10年の間、アジットとバーニが再び会うことはなかった。

 アジットとアディティはアシュウィンを授かり、そのアシュウィンは9歳になっていた。


 平屋の石作りのアジットの家のキッチンでは、アディティが夕食の用意をしていた。

「アシュウィン、お父さんは仕事から戻った?」

 アディティは、居間のアシュウィンに背を向けたまま、料理を作りながら訊いた。


「ううん、まだ帰ってこない。」


「あら、珍しいわね。指導に熱が入っているのかしら……」

 アディティは小首をかしげた。


 アジットは、当時、人に雇われて、子供たちに剣術を教えていた。


「お父さんが帰ってきたら、教えてね。」


「はーーい。」

 アシュウィンは模造刀を振り回しながら返事をした。


 ◇


 アジットが剣術を教えている剣術道場


「よーし、素振りはそれ位にして、ちょっと休憩しよう。」

 アジットは、模造刀で素振りをしていた20名の子供たちを休憩させると、自分も道場の隅に置いてあったイスに腰掛けた。

 今日は暑いな。

 アジットは首筋の汗をぬぐった。


 夏の暑さと教え子たちの熱気で道場の中は蒸し風呂のようだった。


 アジットが、白湯のようになった水を、喉を鳴らしながら飲んでいると、道場の入り口に少年が現れた。

 その少年は、中に入ることを躊躇しているように、その場にたたずんでいた。


「剣術を習いたいのかい?」

 アジットは入り口にたたずんでいる少年に声をかけた。


「あ、いえ、その、ちょっと、ここにいる人に渡したいものがあって……」

 その少年は、突然声をかけられて、しどろもどろに答えた。


「渡したいもの?」


「はい。」


「誰に?」


「アジットという人、いますか?」


「アジットは私だけど。私に渡したいものって?」


「あ、あなたがアジット……そうですか。

 これ、母から預かっていた手紙です。」


「君のお母さん?」


「……はい。

 僕、ガザンっていいます。」


「えっ?……ガザン?」


「はい。」


「……ガザンって、バーニの……」


「はい、バーニは僕の母です。」


「そうか。君、ガザンか。久しぶりだなぁ。

 君がまだ小さかった頃に、一度会ったことがあるんだ。覚えていないだろうけど。」


「すいません。覚えていません。」

 ガザンは申し訳なさそうに頭を下げた。


「そりゃ、そうだよな。10年も前の話だ。それでも、面影は残っているなぁ。

 お母さんは元気かい?お母さんともあの時以来、会っていなんだ。」


「…………母は、3か月前に亡くなりました。」


「…………えっ?バーニが亡くなった?」

 アジットは頭の中が真っ白になった。


「はい。近衛兵と戦って、それで亡くなったと聞きました。」


「バーニが……

 ガザン、ちょっと奥の部屋に。」

 アジットは、ガザンを道場の奥にある小さな部屋に案内すると、休憩していた教え子たちを解散させた。

「みんな、今日の練習はここまでだ。暑さがすごいから、これ以上練習を続けたら危険だ。

 じゃあ、解散っ!」


「はいっ!ありがとうございましたっ!」

 教え子たちは異口同音に叫ぶようにあいさつすると、蜘蛛の子を散らすように道場から出て行った。


 アジットは、急いでガザンを案内した部屋に戻ると、ガザンをイスに座らせた。

 そして、自分も近くにあったイスを手前に引いて腰掛けると、ガザンと向き合った。

「それで、バーニは、お母さんは、本当に亡くなったのかい?」


「はい。

 母は、自分が亡くなった時には、この手紙を必ず父に渡すようにと私に強く言っていました。」


「父?ガザンのお父さんは、今どこにいるんだい?」


「……私の目の前に。」


「いや、そうじゃなくて、君のお父さんだよ。どこにいるの?」


「ですから、今、私の目の前にいます。」


「…………」


「あなたが私の父です。母からは、そう教えられて育ちました。

 アジットという人が私の父だと。でも、事情があって、母や私があなたに会うことは難しいと。」


 ガザンが俺とバーニの子?

 そんなことってあるのか……

 アジットはバーニとの記憶を思い起こしていた。

 ……無いとは言えないか。

 別れた時には、バーニのお腹の中にはガザンがいたんだ……


「ガザン、言い方は悪いけど、私以外に別のお父さんはいないのかい?」


「?

 ……いません。」


「家族は、お母さんと君の2人?」


「そうです。」


「ずっと?」


「はい、ずっと。」


「そうだったんだ。」


「知らなかったんですか?」


「うん?

 ……お母さんは指導者になっていた?」


「指導者?」


「近衛兵と戦うリーダーだった?」


「はい、多分。」


「そうか……」


 ◇


 3か月前

 レジスタンス組織の本拠施設


 50人程のメンバー全員を前にして、隊長のバーニは、見取り図を広げて、今夜決行する作戦を指示していた。

「多くの犠牲を払って手に入れた、近衛兵団の武器庫の位置情報よ。

 見張りの人数や位置、交代の時間も入手できた。皆の努力のおかげ。

 ここを落として、必要な武器や防具を奪取しましょう。そして、残りの武器や建物自体は火を放って使用不能にする。

 成功すれば、こちらの戦力が上がり、近衛兵団には相当な打撃を与えることが出来る。

 我々の活動にとって、正念場の活動よ。」


「バーニ、大一番だな。」

 バーニの隣にいた、副隊長の大柄の男が、ほんの少し声を上ずらせて言った。


「そうね、バズ。私たちの存在意義が問われる局面。

 プレッシャーを感じる必要はないけれど、緊張感をもって任務に当たりましょう。

 近衛兵に虐げられている人々を解放しなければ……」

 バーニは使命感をもって答えた。


「よーし、心地よく緊張してきた。

 みんな、お互いを信じて、己を信じて、任務を遂行だっ!」

 バズは他のメンバーを鼓舞した。


「よしっ!やろう!」

「ああ、やってやるさっ!」

「絶対成功だっ!」

 隊員たちは口々に叫んだ。


 ◇


 その日の深夜


 バーニたちレジスタンスは、闇夜に乗じて、近衛兵団本部から離れた場所にある武器庫が見える場所まで来ていた。

 時折、雲の隙間から差し込む月明かりを頼りに武器庫を監視した。

 武器庫の施設は、一見すると、何の変哲もない倉庫のような外見だった。


「こんな住宅街に武器庫があるなんてな。」

 メンバーの1人が呟いた。


「結局、貯蔵庫だし、本部施設にあるよりも目立たないということじゃないか?」

 隣のメンバーが応じた。


「メンバーが何人も犠牲になって、ようやくここまでたどり着いたんだ。

 絶対、成功させよう。」


「ああ、当然だ。」


「そろそろ、見張りが交代する時間だと思うわ。

 交代時間が近づくと、見張りの近衛兵は交代場所の正面の詰所に向かうから、その時がチャンス。

 計画通りにそれぞれ2班に分かれて、武器庫の近くまでに移動しましょう。」

 バーニはメンバーに小声で指示した。


 メンバーは、力強くうなずくと、それぞれの小隊に戻って行った。


「ふぅーーっ……」

 バーニは緊張をほぐすように息を吐いた。


「大丈夫か?」

 バズはバーニを気遣った。

 小さな身体に大きな責任を背負わされて……バーニ、押しつぶされるなよ……


「……大丈夫。必ず成功するわ。亡くなったみんなに報いる。ただ、それだけ。」

 バーニは天を仰いだ。

 お母さん、天国から私たちに力を貸してね……

「さっ、移動よ。」


「よし。じゃあ、俺の小隊は計画通りに正面から突破する。」

 バズは、ポキポキと両手の指を鳴らすと、バーニの肩に手を置いた。


「気を付けてね。大変な役割だけど、バズたちの陽動作戦に成否が掛かっている。」


「任せろ。気は荒いが、腕っぷしに自信のあるヤツばかりだ。」


「うん、頼んだわ。」


「隊長、みんなで笑って帰ろうぜっ!」


「そうね。そうしましょう。」


「さあ、やるかっ!」


 バーニの小隊とバズの小隊は武器庫に向けて移動した。


 バーニの小隊10名は、武器庫の正面を大きく迂回して裏側に回ると、裏口を確認できる物陰に隠れて、突入する機会をうかがった。


「ここでバズの小隊が動くのを待つわよ。」

 バーニは隊員に指示した。


 隊員は一様に緊張した面持ちでうなずいた。


「みんな、平常心よ。落ち着いて。冷静に任務を遂行。

 今まで十分に準備してきたんだから、きっと上手くいく。」


 隊員は、今度は力強くうなずいた。


 一方のバズの小隊。

 死をも恐れない血気盛んな隊員40名は、今にも正面入り口に突入しそうな勢いだった。


「お前ら、勝手ことをするなよ。俺たちだけじゃないんだ。バーニの小隊と連携して行動することが第一だ。」


「分かってますよ。分かってますけど、早く作戦開始といきましょう。

 俺たちが先陣を切るんですよね?」


「そうだ。近衛兵を俺たちの方に一気に引き付ける。」


「じゃあ、合図してください。」


「だから、待てって言ってんだろっ!

 バーニの小隊の準備が出来ていないかも知れん。」


「……そうですか。久しぶりに腕が鳴るなぁ。

 近衛兵、待っていろよ。」


 バズは夜空を見上げた。

 夜風が強くなったせいで、雲が流れるように形を変えていた。

 そろそろか……

 バーニ、始めるぞ。

「よぉし、みんなっ!派手にやるぞっ!」


 バズ小隊は、近衛兵に見つからないギリギリの所まで武器庫に近づくと、呼吸を合わせて路上に躍り出た。

 そして、一斉に雄叫びを上げながら、武器庫の正面に向かって突撃した。

「うおーーっ!」

「うおーーーっ!

「うおーーーーっ!」


 屋外の異変に気付いて、正面の入り口から慌てて出てきた2人の近衛兵は、何の前触れも無く突然現れ、剣を振り上げて向かって来る集団に恐怖を感じながらも、剣を抜いて構えた。

「な、何者だっ!貴様らっ!」


「我々は近衛兵団の脅威だっ!」

 先頭にいたバズは剣を構えている近衛兵に襲いかかった。

 大柄のバズが握っている剣は、建物の2階の高さから振り下ろされたのかと錯覚するほどの高さから、近衛兵に襲いかかった。


「ぐはっ!」

 バズに斬り付けられた兵士は、その勢いで後方に飛ばされた。


「こ、こいつっ!」

 飛ばされた兵士を横目で見ていたもう1人の兵士は、剣を構えたまま、じりじりと後退りした。

 そして、正面の扉の前に立つと、中にいる兵士に向かって叫んだ。

「おいっ!敵だっ!外に敵がいるっ!早く援護してくれっ!」


 その声に触発されるように、正面の扉が勢いよく開くと、中から近衛兵が次々と飛び出してきた。

「敵かっ?レジスタンスかっ?」

「何人いる?」


 すかさず、バズ小隊の隊員が間髪入れずに近衛兵たちに襲いかかった。

「はいよっ!」

「オラオラオラァッ!」


 先陣を切って武器庫から現れた近衛兵は、外の状況を把握し切れていないためにバズ小隊の格好の餌食になって、バタバタと倒れた。

「ぐっ!」

「ウゴッ!」

「だはっ!」


 近衛兵が武器庫から出て来ては、待ち構えていたバズ小隊の隊員が襲いかかる。

 そんな構図になっていた。


 先陣を切って飛び出した仲間が次々に斬られる光景を目の当たりにして、第2陣の兵士は武器庫から外へ出る前に一呼吸おいて状況を把握した。

「迂闊に飛び出すなっ!レジスタンスが待ち伏せているっ!」

 第2陣の兵士たちはバズ小隊の隊員の立ち位置を確認してから外に出てきた。


「なに慎重になってんだよっ?」

「ほらほら、どんどん出て来いよっ!物足りねえぞっ!」

「近衛兵って、そんなもんかっ!」

「肝っ玉が小さいぞっ!」

 バズ小隊の隊員は近衛兵を挑発した。


 しかし、冷静になりつつある近衛兵の兵士は、挑発に乗らずに、陣形を整えながら出て来て応戦した。


 小隊長のバズは握っている剣をその剛腕に任せて振り回した。

「小賢しいっ!失せろっ!」


 バズの剣を受けた兵士は、その威力に軽々と斬り飛ばされた。

「うわっ!」

「ぐはっ!」


 バズ小隊の他の隊員も個人戦では近衛兵を圧倒していたが、陣形を整えて組織的に戦う近衛兵は徐々に押し返していた。


 そのうち、外に出てきた近衛兵の人数も増えて来て、武器庫の正面は、敵味方入り乱れての戦闘状態となった。


「結構、近衛兵をおびき出せたんじゃないか?」

 バズは傍らにいた隊員に叫んだ。


「はいっ!正確な人数は分かりませんが、大多数の近衛兵が武器庫から出てきたと思います。」

 傍らにいた隊員は、剣を構えて近衛兵に対峙したまま答えた。


「だよなっ!」

 バズは口元がほころんだ。


 その時、槍を構えた近衛兵がバズの背後にスルスルと近づいてきた。


「……痛っ!」

 バズは背中に痛みを感じて振り向いた。


 そこには、槍を構えた近衛兵が血走った眼でバズを睨みつけていた。

「い、いい気になんなよっ!反逆者野郎っ!」


 バズは、その大きなガタイに似合わず機敏な動作で槍を持った近衛兵の間合いに入ると、肩から胸にかけて斬り抜いた。


 その近衛兵は断末魔の叫び声を上げて地面に崩れ落ちた。


「俺としたことが、ちと油断した……」

 バズは、背中に受けた傷から流れ落ちる血の量を確認しながら、つぶやいた。


 ◇


 武器庫正面で始まった戦闘の怒号や叫び声、そして剣と剣がぶつかり合う金属音が裏口にいるバーニの耳にも届いてきた。


「そろそろ、いいわね。近衛兵の注意は正面に向けられている。

 行くわよっ!」

 バーニは、隊員に指示すると、目立たないように屈みながら素早く移動して、武器庫の裏口に近づいた。

 近衛兵に出くわすこともなく、気が抜ける程あっさりと裏口にたどり着くことが出来た。


「ふうっ……」

 バーニは少し安心して息を吐いた。そして、ゆっくりと扉を開くと、扉は何の抵抗もなく開いた。

 バーニは、慎重に聞き耳を立てて中の様子をうかがったが、人の気配は感じられなかった。

「大丈夫そうね。」

 バーニは、振り向いて隊員にそう伝えると、音を立てないように細心の注意を払って武器庫の中に入った。

 極度の緊張のために血圧が上がっている隊員たちも無言のままバーニに続いた。


 広大な武器庫の中は予想していた以上に暗かった。

 バーニたちが、室内の暗さに目が慣れるまでじっとしていると、徐々に中の様子が見えてきた。

 天井の高い武器庫の中には、剣、槍、弓矢そして盾などの様々の武器や防具が、天井まで届くほどの高い木製の棚に整然と並んでいた。


 その光景にバーニたちは圧倒されて息をのんだ。

 戦力の違いをまざまざと見せつけられた。


「隊長。指示してください。必要な物を貰っちゃっていいですか?」

 バーニのすぐ後ろにいた隊員が小声で訊いた。


 バーニはその声で我に返った。

「えっ?ええ、そうね。予定通りに必要な物を手に入れて。

 物音を立てないようにね。」

 バーニは隊員に指示すると辺りを警戒した。

 近衛兵の気配はまったく無かった。


 こんなに計画通りに事が進むと、何か気持ちが悪いわ。

 バーニは、鋭く武器庫内を見回して、近衛兵の姿を探した


 一方の隊員たちは目の前の武器や防具に目を奪われた。

「こんだけ武器や防具があれば、近衛兵と互角に戦うことが出来るぞっ!」


「ああ、近衛兵から頂戴するんだ。良心は痛まん……」


「罰だって当たらん……」


「よし。最低限の必要な物だけを選ぼう。」


 バーニは、神経を研ぎ澄ませて、警戒を怠らずに隊員を見守っていた。


 ……それにもかかわらず、バーニは背後から迫り来る人の気配に全く気付かなかった。


「何してる?お前ら。」

 突然、地を震わすような低いしわ枯れ声がバーニの背中越しに響いた。


「???」

 バーニは反射的に振り向いた。


 すると、バーニから数メートルしか離れていない所に見知らぬ大男が立っていた。

 その男は、岩のようにがっしりとした体躯に、えらの張った四角い顔をしていた。伸ばした長髪は後ろで束ねていた。

 副隊長のバズと比べると、バズが子供に見える程だった。


 い、いつの間に……そこに……全然気づかなかった。

 バーニは、怪物にでも遭遇したように、目を見開いて見上げた。


「おねぇちゃん。お前らコソ泥か?

 それとも、ここにも外にも仲間がいるようだから、集団強盗か?」

 その大男は、バーニが答えるのを待たずに、バーニの首を右手でむんずと握ると軽々と持ち上げた。


「ぐっ!」

 バーニは気道を塞がれて呼吸することが出来なくなった。

 懸命に四肢をバタつかせながら、手にしていた剣で大男の丸太のような腕を何度も切りつけた。


「そんなに暴れるなよ。」

 大男は右手に更に力を込めた。


 うっ!

 喉を握り潰されそうになっているバーニは、声が声にならなかった。

 気絶しそうになりながら、渾身の力を込めて、大男の股間を目一杯に蹴り上げた。


「痛っ!」

 大男は、酒臭い息を吐きながら、バーニの首から手を離した。

「随分と元気じゃないか。まだまだ、楽しめそうだな。」


 床の上に叩き落とされたバーニは、のた打ち回りながら、口を大きく開いて酸素を肺に取り入れた。

「ゔっ……はぁ、はぁ、はぁ……」

 ……急所を思い切り蹴り上げたのに、その程度?

 痛さを感じないの?

 バーニは、喉の痛みに咳込みながら、よろよろと立ち上がった。


「どうした?生気のない眼をしてんなぁ。」

 大男はバーニの顔めがけて右手の手のひらを伸ばしてきた。


「くっ!」

 バーニは、上体を反らして、岩のような手をかわした。


「おっ?間合いを見切ったのか?それとも、まぐれか?」

 大男はニタッと笑った。


 バーニは、その表情に嫌悪して背筋に悪寒が走ったが、どうにか平静さを取り戻すと、剣を握り直した。

 私に倒せる?

 こんな怪物、見たことない……

 狙うなら、足元……

 バーニは、大男の足元を一瞥すると、その顔を見上げた。

 ……よしっ!行くしかないっ!

 バーニは、覚悟を決めると、自分のウエスト位ありそうな大男の足首めがけで、剣を斬り込んだ。

 ガコッ!

 剣から伝わってくる切り込んだ感触は、人の肉体のそれとは違って、何か金属材でも打ったような感触だった。

 バーニの剣は、剣を切り込んだ時と同等の力で弾かれた。

 何?

 バーニが剣の刃を確認すると、ところどころ刃こぼれしていた。

 嘘でしょ?

 バーニは恐怖で全身が震え出した。


「ん?そんな、なまくらの剣で俺を倒そうとしているのか?」

 大男は、そう言った瞬間、右手を握りしめるとその拳でバーニの顔面を殴りつけてきた。


 くっ!

 バーニは、首を倒して大男の拳をギリギリのところでかわしたが、僅かに左頬をかすめた。

 大男の拳がかすめたバーニの左頬は横一文字に切れて、血が一筋流れてきた。

 ちょっとかすっただけなのに……

 バーニは、隊員たちから大男を遠ざけようとして、隊員たちがいる方向と逆方向に駆け出した。


「女ネズミがっ!どこに逃げようっていうんだ?」

 大男は慌てることなくゆっくりとバーニを追いかけた。

 必死に逃げ回るネズミをもてあそぶネコのようだった。


 頬から流れ落ちる血を手の甲で拭いながら、薄暗がりの慣れない武器庫内を逃げていたバーニは、行き止まりの袋小路に入り込んでしまった。

 行き止まり?しまった……

 振り返ると、大男の陰が徐々に迫っていた。

 バーニは、近くの棚に立て掛けてあった槍を手にすると、大男に向かって投げた。


 槍は武器庫内を大男に向かって一直線に飛んで行くと、大男の胸に突き刺さった。

 ただ、突き刺さったと言っても、切っ先が僅かに刺さっただけだった。


「ん?」

 大男は、痛がりもせずに何事も無かったように槍を引き抜くと、バーニに投げ返した。


 その槍はバーニが投げた時よりも数倍の速度でバーニめがけて返ってきた。


「うぐっ……」

 バーニは袋小路の狭い空間で飛んできた槍をかわすことが出来なかった。

 槍はバーニの右肩を貫いていた。


「大当たり。ねぇちゃん、なかなか粘っていたな。マントラは使えんようだが。」

 大男は、右肩から大量に出血しているバーニの方に、ゆっくりと近づいて来た。


 右肩の激痛に耐えているバーニは、大男の足元を見つめながら本能的に悟った。

 こんな怪物、私たちじゃ倒せない……勝てない……

 武器庫の中にこんな怪物がいたなんて……


 その時、バーニの姿が見えなくなったために部下たちが探しに来た。

「隊長っ!どこですか?」


 その声に大男が振り向いた。

「まずはあいつらを片付けるか……

 お楽しみはその後だ。」


 隊員たちには視線の先の方にいる山のような人影が何者か判らなかった。


 まずいっ!早くみんなを退避させないと……

「みんなっっ!ここから逃げてーーーっっっ!」

 バーニは、首を絞められたせいで上手く声を発することが出来なかったが、喉から血が出るくらいの大声を張り上げた。


 ◇


 バーニの魂の叫び声は、武器庫の正面で戦っているバズの耳にも届いた。

「んっ?聞こえたか?」

 バズは近くにいた隊員に訊いた。


「何がですか?」

 隊員は、剣を構えたまま、バズに訊き返した。


「今、隊長の声が聞こえなかったか?」


「隊長の声ですか?武器庫の中からですか?

 いいえ、聞いていません。」


「……空耳かな。」


「こ、こいつっ!」

 震える両手で槍を持った近衛兵が手当たり次第にバズを突いてきた。


 バズは、自分に向かってきた近衛兵を上段から袈裟切りにしながら、つぶやいた。

「確かにバーニの声が聞こえたんだがな……」


「うぎゃあぁぁ、痛いっ!」

 バズに斬られた近衛兵は地面で転がり回った。


「それでも兵士か?ジタバタするなっ!」

 バズは吐き捨てるように言った。

 そして、攻撃の手を止めると武器庫の入口から中の様子をうかがおうとした。

 何か嫌な胸騒ぎがする……

 バーニ、大丈夫だよな?

 お互い、笑顔で帰ろうぜ。


 ◇


 武器庫にいるバーニ小隊の隊員たちは、バーニの叫び声とそこにいる大男に驚いた。

「隊長っ!!そこにいるんですか?」

 隊員たちからは、バーニの姿が大男の陰に隠れて見えなかった。

「そ、そこにいるでかい男は近衛兵ですか?」


「そうっ!だから、早くここから離れてっ!逃げるのよっ!」

 バーニは必死に隊員を大男から引き離そうとした。


「ねぇちゃん、余計なことを言うなよ。」

 大男は一度バーニの方に戻ってきた。

「ふんっ!」

 大男は左腕をバーニに向けて振り込むと、左手の裏拳でバーニの顔面を殴り付けた。


「ゴッ!」

 バーニは、その衝撃で、弓が立て掛けてあった棚まで数メートルも軽々と飛ばされた。

 バーニは棚に全身を強打して、棚に立て掛けてあった弓がバキバキと折れた。

 そして、棚が上の方から崩れ落ちてきて、室内に埃が舞い上がった。


「隊長っ!!!」

 隊員たちはバーニに駆け寄ろうとした。


 バーニは、手振りで隊員が駆け寄ってくるのを必死に制止すると、喉の奥から声を絞り出した。

「に、逃げなさい……

 バ、バズにも、伝えて……」

 鼻骨が砕けたバーニは、鼻と口から大量に出血していて、上手く息が出来なかった。


「は、はい……」

 隊員たちは、バーニの鬼気迫る表情に気おされ、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れようとして、踵を返した。


 焦点が合わないような眼つきでその様子を見ていた大男は、酔いで足元をふらつかせながら、両手の人差し指と中指を立てて、左右それぞれ2本の指を交差させると、逃げようとする隊員たちに向けた。

 そして、おもむろに叫んだ。

「オンアコラサンドガン……」


 瞬間、矢のような赤く眩い光線が指先からほとばしると、3人の隊員の背中を同時に串刺しにした。


「ウゴッ!」

 光の矢に背中を貫かれた3人は、次々とその場に膝から崩れ落ちた。

 背中からは白煙が立ち上っていた。


 他の隊員たちは、その光景に我が目を疑った。そして、蛇に睨まれた蛙のようにその場から動くことが出来なかった。


 何てことを……

 赤い光の矢のマントラ???

 ま、まさか、この男……セス……なの?

 バーニは、激痛に顔を歪めながら、遠のきそうになる意識の中で理解した。

 自分が今対峙している大男が、噂には聞いていた、最狂のマントラ使いのセスなんだと。


 セスは、道端に生えている雑草でも見るように、倒した3人を無感情、無表情のままで見下ろしていた。

「ちっ、まとめて3人しか殺れんかったか……

 動いたせいで酔いが回っちまって、いまいち手元が狂ったな。

 次は、まとめて一網打尽よ……」

 セスは再び印を結んだ。


 生き残っている隊員たちの顔は、恐怖で引きつり、蒼白になっていた。


 これ以上、仲間を殺らせはしない……

 バーニは、必死に立ち上がって、朦朧としながらよろよろと歩き出すと、傷ついた小柄な身体でセスの前に立ちはだかった。


「ねぇちゃん、邪魔だよ。いい子だから、どきな。

 後でたっぷり相手してやっから……」


「な、仲間を倒したいのなら、私を倒してからにしなさい。

 私が隊長のバーニよ。」


「うん?

 そんなに傷だらけなのに、随分威勢がいいな。

 気に入ったぜ。

 死ぬ覚悟は出来ているんだろうな?

 ねぇちゃんだから特別だ。痛くないように一思いに殺ってやるよ。

 有り難く思いなっ!」

 セスは印を組み直した。


「……みんな、早く行きなさい。必ず生きて戻って……」

 セスと対峙しているバーニは、隊員たちに背を向けたまま懸命に叫んだ。


 セスは表情一つ変えずにマントラを唱えた。

「じゃあな、隊長さん。

 オンアコラサンドガン……」


 バーニは、セスの太い指先が赤く光った瞬間、ガザンの笑顔が脳裏に浮かんだ。


 ◇


 その頃、武器庫の正面で戦っていたバズ小隊の隊員の1人が、正面の扉が開いたことに気付いた。

 近衛兵のやつ、また出て来るな……

 その隊員は、急いで扉の横に立つと、剣を上段に振りかぶって、近衛兵が飛び出してくるのを待ち構えた。


 案の定、武器庫の中から人影が飛び出してきた。


「この野郎っ!」

 待ち構えていた隊員は、その人影めがけて思いっきり剣を振り下ろした。


「うわっ!」

 その人影は、横に飛びのいて、その剣の一撃を紙一重のところで何とかかわした。

「や、止めろっ!味方だっ!」


 興奮してアドレナリンが出まくっている隊員は、その言葉に冷静さを取り戻した。

「お、お前はバーニ小隊の……」


「そ、そうだっ!よく見ろっ!」


「す、すまん。武器庫から出てくるから、つい近衛兵かと思って……」


「まあ、いい。急ぎの指令だ。副隊長はどこだ?」

 バーニ小隊の隊員は、血走った眼付きで肩で息をしながら叫んだ。


「副隊長はあそこだ。」

 バズ小隊の隊員が教えるや否や、バーニ小隊の隊員はバズの方に走り出した。


「急報っ!急報っ!バズ副隊長っ!隊長からの伝令ですっ!」

 バーニ小隊の隊員は、なりふり構わず、走りながらバズに叫んだ。


「どうしたんだ?血相変えて……

 バーニに何かあったのか?」


 ◇


 3か月後

 剣術道場の奥の小部屋にいるアジットとガザンの2人


 アジットはガザンから封筒に入っているバーニの手紙を受け取った。

 封筒の宛名には、『アジットへ』と、控え目に書かれていた。

 懐かしいバーニの筆跡だった。

 アジットは、封筒を見つめたまま、封を開けることをためらっていた。

 どんなことが書かれているのか、皆目見当が付かなかったが、この手紙を読むと、自分の今後の人生が大きく変わってしまいそうな、妙な確信があった。


「お母さん、責任を全うしたんだな。」


「全う?よく分かりません。でも、僕は母の仇を討ちます。このままじゃ、母がかわいそうです。」


「ガザン……」

 アジットはバーニの手紙の封を切った。

 そして、封筒の中から手紙を取り出すと、その文面に目を落とした。


『親愛なるアジット

 この手紙を読んでくれているということは、ガザンはあなたに会うことができたのね。

 ガザン、大きくなったでしょう?

 ガザンが小さかった頃にマーケットで出会ったこと、覚えている?

 私がガザンを連れてマーケットに行くと、前の方をあなたが歩いていた。

 まさか、あなたがマーケットに来るなんて……と思ったけど、その後ろ姿を見かけた時、すぐにあなただと分かった。

 あなたの後ろ姿、何年経っても変わっていなかったわ。

 振り向いたその顔も変わっていなかった。

 付き合っていたあの頃に時間が戻ったような感じだった。

 私はどうだったかな?

 母親になっていたから、付き合っていたあの頃よりも、たくましくなっていたと思うけど。

 そんなにおしゃべり出来なかったけど、私、マーケットであなたに出会った時のことは、つい昨日のことのように、はっきりと覚えているの。

 振り返ると、私たちが会ったのは、あの時が最後になっちゃったね。

 もう一度、あなたに会いたかった。

 でも、あの時、あなたは結婚していて、お子さんが生まれるって言っていたものね。

 とても幸せそうだった。

 あの後、風の噂で、あなたも素敵なお子さんを授かったと聞いたわ。

 本当におめでとう。

 お子さんがいるなら、ガザンと兄弟になるのね。

 ガザンから聞いた?

 あなたとガザンが血の繋がった親子だということ。

 驚いたでしょ?

 本当はこんな形で伝えたくは無かったんだけど。

 私が直接あなたに伝えたかったんだけど。

 ゴメンね。

 それとも、伝えない方がよかったのかしら。

 実は、ガザンを身ごもったことが分かったのは、あなたと別れた後なの。

 私、一人でガザンを育てていこうと決めていたから、ガザンのことをあなたに伝えるべきかどうか、最後まで決めかねていた。

 マーケットで偶然出会ったあの時も、ガザンのお父さんはあなたなのよって、喉まで出かかったんだけど、私の気持ちの整理も付いていなくて、結局、言うタイミングを逃した。

 ただ、私に何かあった時には、伝えるべきだと思って。

 でも、ガザン本人に伝えてもらうことになってしまって、母親として失格ね。

 それに、こんな状況で聞かされるなんて、あなたにとっては迷惑なのかも知れないけれど。

 私のわがままだって言われるかもしれないけど、他にどうしようもなかった。

 私がいなければ、ガザンが天涯孤独になってしまう。

 そんなことになったら、私は死んでも死にきれない。

 あなたなら、ガザンのことを受け入れてくれると信じている。

 奥さんに伝えるかどうかは、あなたに任せるわ。

 あなたにもう1人子供がいたなんて、衝撃的過ぎるものね。

 兄弟に会わせるかどうかも、あなたが判断してほしい。

 私は天国からあなたとガザンを見守っているわ。

 ガザンにはあなたがいるから、何も心配していない。

 私が心配なのは、組織の今後のこと。

 志半ばで私がこうなってしまったので、隊員たちのことが心配。

 でも、こればかりは、あなたには無関係。

 組織をまとめる立場になって、私もあなたみたいにマントラを使えたらと、いつも思っていたわ。

 あなたの能力、羨ましかった。

 もし、私がマントラを使うことが出来たら、この手紙をあなたに渡すことは無かったのかも知れない。

 やっぱり、あなたは今でも私の活動には興味がないのかしら?

 大それたことは、今でもあなたの性に合わないのかしら?

「分かっているなら、手紙に書くなよ。」って、あなたの声が聞こえてきそう。

 もし、ガザンが将来について迷っていたら、手を差し伸べてほしいの。

 ガザンは私を見て育ったから、私を追ってレジスタンス活動をしたいって言いだすかもしれない。

 私にとっては、それは嬉しい反面、とても心配。複雑な心境。

 だから、父親のあなたにガザンの相談相手になって欲しいの。

 それと、忘れずに伝えておかなければならないことがある。

 ガザン、マントラを使えるみたいなの。やっぱり、あなたの子供ね。

 あなたの血を受け継いでいるらしいわ。

 私には立ち入ることが出来ない世界だから、その力をどう使うのかは、あなたが導いてちょうだい。

 私は自分にマントラの能力があればと思っていたけど、ガザンがどうするのかは別の話だから。

 ガザン自身は、マントラの能力があることを何となく理解しているみたい。

 あなたとガザンが決めたことだったら、どんな道に進もうと私は安心。

 ガザンのこと、よろしくお願いします。

 自分勝手だということは重々承知しているけど、私が頼れるのはあなたしかいない。

 どうか、分かって下さい。

 アジット、あなたにもう一度だけ会いたかった。

 それが心残り。

 あなたとガザンが一緒にいるところをこの目で見たかった。

 3人で他愛のないことをおしゃべりしたかった。

 なんか、私の言いたいことを一方的に書いてしまって、ごめんなさい。

 アジット、私の分まで長生きしてね。

 私のいるところには、まだまだ来なくていいわ。

 奥さんとお子さんを大切にしてね。

 あなたには幸せになって欲しい。心からそう願っているわ。

 アジット、さようなら。

 あなたの友人のバーニより』


 バーニの手紙を持っているアジットの両手は小刻みに震えていた。

 そして、涙の雫が手紙の上に一粒、二粒と落ちてきて、手紙の文字が滲んだ。

「バーニ……」

 アジットは、そう呟くと、ガザンがいることも気にせずに涙を流しながら嗚咽していた。


「アジットさん……」

 ガザンはどうすることも出来ずに、たたずんでアジットの様子をうかがっていた。


「ああ、すまん。」

 アジットは手の甲で頬を伝う涙をぬぐった。

「ガザン、今はどうしているんだ?一人で暮らしているのか?」


「いえ、バズという母の部下だった人にお世話になっています。」


「そうか……俺は何にも知らなかった。

 今まで何もしてやれなくて、ゴメンな。

 本当にすまん……」


「何も知らなかったんだから、しようがないですよ。

 気にしないでください。

 私と母は、それなりに楽しく暮らしていました。」


「本当か?」


「……母のやっていることが特別なことなので、普通の親子とは違っていたと思います。

 それに、父親は生きているけど、私という子供がいるとは父親は知らないし、複雑な事情があるから会えないと教えられていました。

 それでも、楽しかったですよ。」


「大変だったな。」


「その手紙を母から託された時に、父の名前と居場所を教えてもらいました。」


「そうか……俺の居場所も分かっていたのか。」


「はい、そうみたいです。」


「調べたのかな……」


「分かりません。

 ただ、今にして思うと、母には自分の死期が分かっていたような気がします。」


「死期を分かっていた?」


「はい。

 私がその手紙を母から託されて、1年も経たないうちに亡くなりましたから。

 なんか、そんな気がします。」


「そうか。そうかも知れないな……

 ……ガザン。1日だけ、俺に時間をくれ。」


「えっ?」


「今後の俺の身の振り方を決める時間が欲しい。

 1日だけ、時間をくれ。」


「私はどうこう言える立場じゃないので、お任せします。」


「ありがとう、ガザン。

 じゃあ、明後日には連絡する。」


「分かりました。」


励みになりますので、応援コメントなどをお待ちしています。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ