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隠された翼  作者: 月岡ユウキ
第一章 幼年期編
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ロムスの土産

 レオンと二人でせっせと運んだ木箱の中身は、殆どが食料品や調味料だった。私も見たことのない食材が色々入っている。あとでマリンに色々教えてもらおうと思った。


「婆さん、相変わらず人使いが荒いぜ。昨日の今日で持って来いって注文が多すぎる。今回は特にひどかった……」


 そうぼやくロムスが持ってきた荷物の中には、組み立て式のベッドがあった。これはサンディとレオンの為に、グレンダが急遽(きゅうきょ)注文したそうだ。


 物置だった部屋を、マリンが二つほど手早く片付けた。重くしっかりとしたベッドのパーツをひょいと担ぎ、手際よく組み立てる。羊毛の分厚いマットを軽々と持ち上げて乗せ、そこに真新しい枕を置いて布団を掛けるとあっという間にとても快適な寝床が完成した。

 引き続き隣の部屋でもう一つ組み立てると、それぞれ私とレオンの部屋として充てがわれた。


「他の家具は物置に使っていない物があるから、マリンに見せてもらうといい。欲しいものがあれば運んでいいからね」

「「ありがとうございます」」


 様子を見にきたグレンダは、マリンの手際の良さに満足げだ。



 マリンに連れて行ってもらった『物置』は、それと呼ぶにはあまりに大きな離れの一部屋だった。何ならここだけで家具屋が開けそうな程、色々な品物で溢れている。


「先代様や、そのまた先代様の頃は、この屋敷にも多くの人がいたそうです~。その頃の物なので、ちょっと古いデザインが多いんですよ~」


 マリンはそう言うけれど、どれも元々質の良い物らしい。きちんと手入れもされており、ガタや破損がある物は一切見当たらない。それにアンティークっぽいデザインも素敵だと思う。一通り見て周り、机と椅子、チェストやハンガーラックなどを選ぶと、レオンも同じような選択だった。


「追々本も増えると思うので、これもあるといいですよ~」


 マリンにしっかりとした作りの本棚も勧められて、三人で協力してそれぞれの自室まで運ぶ。


 グレンダの作る薬品類──ポーションや毒消し、麻痺消しなどは、街で引っ張りだこだそうだ。神殿での治療による消費だけでなく、冒険者達もこぞって買い求めるという。

 特にグレンダの調合したものは『北の森の魔女製』というブランド物で、王族への献上品にも使われる事があるのだとか。


 街で回収された空き瓶の他、破損したり不足している分は新しい瓶を購入して補充する。それをロムスが屋敷まで運び、グレンダが新しく調合しておいた分を馬車に積みこむ。そしてまた、ロムスが街で必要とされる場所に販売して回るのだという。



 全ての荷降ろしと荷積みをを終えるころには、既に日が傾いていた。

 この時間、普段であればダイニングは夕食の準備をするマリンだけだ。でも今日は『皆に話を聞かせたい』というグレンダの要望があって、リビングではなくダイニングに全員が集まっていた。


 まずロムスから、レオンに弓とナイフが渡された。


「これも婆さんからの『特別発注』だ。その弓は小さめだが、立派に大人用なんだぜ」


 ロムス曰く、これは騎馬隊が使う『短弓』だという。

 全長は比較的短いけど、美しくカーブしたリム部分はまるで板バネのようによくしなる。それでいて戻りが強く、安定して矢を放つにはそれなりの力が必要そうだ。


「森の中なら、短いほうが取り回しがいいだろう。ただし力はそれなりに必要だから、自分を鍛えて使いこなせよ。あと、矢はあえて少々重いものを選んでみた。これなら大物も狙える。小物を獲りたい時は、自分で木でも削って別に矢を作ればいい。この弓ならそれでも十分な貫通力が得られるはずだ」


 ロムスは自分でも弓矢を使うそうだ。他にも武器には精通しているらしい。「一人で商売なんてしてると、物騒なことも多いからな」なんて、ちょっと怖いことも言っていた。


 そしてナイフは小ぶりだがしっかりとしており、取り回しが良さそうだ。握った感じもしっくりくる。ブレードは美しく銀色に光っている。父から貰ったお下がりのナイフとは、素材から違ってそうだとレオンは思った。


「そいつなら、獣でも鳥でも魚でもその場で締められるぜ。短めだから武器としては心もとないが、狩猟の道具として割り切って使うといい」

「とても良いものを選んでくれて、本当にありがとう。でもこれ、結構高いんじゃ……」


 レオンはチラとグレンダの方を見た。


「ふっふ。子供が金のことなんか気にするんじゃないよ。あとそれは、私の食事を豪華にするための先行投資さ。そう考えれば安いもんさ」

「本当に色々とありがとう、グレンダ。僕、早くこれを使いこなせるように頑張るよ!」


 レオンが弓矢とナイフを抱きしめ、心底嬉しそうに笑うとグレンダも微笑んだ。

「ああ、期待してるよ」

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