紅茶と親友とかわいいカレシ
「あんたのカレシって格好いいわよね」
「は?」
勝手に人の携帯を奪って写真を見ていた親友のその言葉に、私は思わず首をかしげてしまった。
あいつが格好いい?
「どこが?」
「その返しは、予想してなかったわね……。いや、見た目も性格もありとあらゆるところが」
「なるほど……?」
言われてみれば確かに、あいつは容姿が整っている。だてに、ミスターコンテスト(非公式、本人はしらない)を連覇しているわけではない。
けれど、それが格好いいという言葉に結び付かない。
「全然納得してないわね」
「ああ。日頃のあいつをしっていると、格好いいなんて言葉でないと思うぞ?」
「へー、そうなんだ。案外ぬけてるとか?」
「そんなこともないが……」
少しのどが乾いたので、紅茶で喉を湿らした。
しばらく考えて、ピッタリくる言葉が見つかった。
「あいつは、かわいいと言うのが正確だと思う、ぞ?」
そうだ。我ながらしっくりくる。あいつは、かわいいのだ。
しかし、満足している私とは反対に、友人は顔をしかめている。
「ど、どうした?胸焼けか?」
「まあ、ある意味でそうね……」
友人は、手元にあるカフェオレではなく、なぜか私の紅茶を一気に飲み干した。
「それ、私の紅茶だぞ」
「うっさいわね!大量の砂糖をいきなりばらまいたあんたが悪い!」
「何を言ってるんだ?」
突然キレた友人には、むしろ糖分が足りていないと思ったので、追加のケーキを注文してやった。太る!とか言って、またもやぶちギレながらケーキを完食した友人は、素直じゃないと思う。
◇
そんな数日前の親友との会話を思い出して、私の部屋でクッションに座りながらゲームをしている彼の横顔を思わず見つめてしまう。横から見ても顔が整っているのが分かるのに、寝癖なのか髪の毛はピョコンと跳ねている。うん、やっぱりかわいい。
「俺の顔に何かついてる?」
彼はゲームをする手を止めて私にそう問いかけた。
「ご、ごめん。邪魔するつもりはなかったんだが……」
「いや、丁度キリが良いところだったから、大丈夫だよ」
そう言いながら、ゲーム機を横に置いてから、彼はポンポンと膝を叩く。私は素直に膝の上に招かれることにした。
背中から彼の腕が私のお腹にまわされて、彼との密着が高まる。私も、頭を彼の胸に預けた。
「それで、どうしたの?」
「ああ、いや、大したことじゃないんだが……」
私は友人との会話を再現して、彼に伝えた。すると、くしゃりと髪の毛が撫でられる。
「きゅ、急になんだ?」
「うーん?結構複雑なことを言われたから、その仕返し?」
「何で疑問符がついているんだ……」
「そもそも、君の方がかわいいし」
少し拗ねたような口調で、そんなことを言う彼は間違いなくかわいいと思う。
結局それからしばらく私のかわいいカレに、髪の毛をくしゃくしゃされた。