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37話 到着! 鉱山の国

 夕方近くになり、(まじな)いの馬はようやく止まる。

 国を外から隠すように建つ外壁の前で、私は馬から降りた。


「はぁ······はぁっ······ゔ、ぇっ!」


 危うく吐きそうになりながらも、根性で堪える。足が震えてまともに立てないし、壁についた手も、あまり力が入らない。

 絶対にいつかナディアキスタを殺そうと誓いながら、私は彼が馬をガラスに戻してポケットに仕舞うまでを睨み続けた。


「ケイト、大丈夫か?」

「大丈夫に見えるなら、その目玉くり抜いて食わすぞ」

「大丈夫そうだな。無駄に頑丈なだけある」

「『無駄に』ってなんだ。ああクソ······まだ足が震える」


 武者震いなら経験があるが、ここまで足が震えて歩けないのは初めてだ。新兵が初陣で「歩けない」と泣き言を言う理由が少し分かった。これは歩けない。


「領地の件にプラスで慰謝料取りたい······」

「水路と水田の件ならとっくに終わっている。帰ったらモーリスに聞け。水は飲めるか?」

「くっそ。人が戦場を駆け回ってる時に······! やったなら、それこそ早く言えよ。······水は貰う」


 ナディアキスタは私の背中をさすり、「早く国へ」と労りつつも急かす。ブレないナディアキスタの強引さに、私は「うるさい」と言いながらついて行った。


 ***


 鉱山の国──アルフェンニア


 七つの鉱山に囲まれた辺境の国だが、数多取れる宝石のおかげで、その知名度と財政は下がることを知らない。

 騎士の国では見ないような色とりどりの鳥が飛び回り、一部の国でしか見られない『青い鳥』もいるとか。

 この国の伝説のひとつに、『りんごを食べた少女が幸せを手に入れた』という話があり、国の至るところにはりんごの木が植えられている。




 明るいレンガの道に、スモーキーピンクのオシャレな街灯。

 赤や青の原色系の家や店が並び、装飾品には当たり前のように宝石が使われていた。

 ナディアキスタも私も、カラフルな国の中ではびっくりするくらい浮く。ナディアキスタはモノトーンの服装だし、私は狩人のような格好だ。

 この国の住民は、平民でもドレスのように華やかで、国のトレンドの花柄をあしらった派手な服ばかりなのだ。宝石で栄える国が、豊かではないはずもない。

 この二人だけ取り残されたような浮きように、街の人達はコソコソと笑っていた。ナディアキスタはそれが面白くない。


「あいつら、この俺様を笑いやがった」

「落ち着け、私らがおかしいんじゃない。国がカラフル過ぎるんだ」


 私は落ち着いて国の様子を観察する。

 黒髪のボブが今の人気らしい。若い娘は皆そういう髪型にしている。別名が『薬の国』なだけあって、薬草の店が多い。

『イケメンが多い国ナンバーワン』の称号も納得のイケメンの多さ。だが男女共に、騎士の国の人間より少し身長が低い。


「平均167センチ······か」

「おい狩猟令嬢。測るな」


 私がじっと国を観察していると、ナディアキスタは私を引き気味に止める。私がようやく前を向いた時、誰かにぶつかった。

 鼻を痛めながら「すみません」と謝ると、相手は胸に手を当てて「こちらこそすみません」と深く謝罪する。


「女性にぶつかってしまうばかりか、お体を痛めてしまうとは、紳士の恥です。私の不注意でした」

「いいえ、お顔を上げてくださいませ。私が前を向かなかったことがいけないのです。貴方が謝ることはひとつもありませんわ」

「いいえ、故意でないとはいえ、女性にぶつかるなど······あれ?」


 男が顔を上げると、私を見て驚いた声を出す。

 私も相手の顔を見て、心臓が飛び跳ねそうなくらい驚いた。



「ケイティ!?」

「うぇぇっ! え、エル!?」



 昨日私に休暇を命令した騎士団長エリオットが、鉱山の国にいた。

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