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141話 どうしたらいい?

 魔女の森──ナディアキスタの小屋。


「で、どうするんだ?」


 オルテッドは自分で淹れたコーヒーを片手に頬杖をついていた。湯気が上るそれを見つめながら、小屋の中をうろうろと忙しなく動くナディアキスタにそう問いかける。

 ナディアキスタはオルテッドの言葉なんて聞こえていないのか、ブツブツと呟きながら、何かを閃いては唸り、何かを消す素振りをしてまたうろうろと歩き出す。

 見かねたオルテッドはナディアキスタを抱え、椅子に座らせてコーヒーを持たせる。


「歩いて答えが見つかるならいいが、疲れるだけだろ。兄さん、少し落ち着いて考えたらどうだい」

「落ち着いて考えたところでどうしようもない」


 ナディアキスタはまだ考え事から抜け出せないのか、頭をガシガシと掻いて唸り出す。へしゃげた牛のような唸りに、オルテッドはため息をついた。



「真っ直ぐ伝えたらどうだ? 『魔女の魔法道具が、騎士の国にはないかもしれない』と」



 オルテッドはナディアキスタの悩みの種を口にする。ナディアキスタは肩を揺らした。


 ナディアキスタはここ四百年ほど、この森を拠点としてあちこちの村や街、国を訪れては自分の星を変える方法を探していた。

 一昨年、魔女の魔法道具の組み合わせを閃き、六つ集めたはいいが、騎士の国だけは魔法道具の所在どころか存在すら分からない。

 ナディアキスタは何度も国を訪れているが、魔法道具らしきものの噂を聞いたこともない。


 先日リリスティアに、その魔法道具の件で魔報(まほう)を送ったが、リリスティアも曖昧(あいまい)らしく、「剣のような形らしい」との答えしか来なかった。


 だが、騎士の国に剣なんて()びるほどある。

 無数の剣一本一本確かめている暇もない。

 かといって、ケイトに尋ねようにも、ケイトがそれを知っているかどうかも怪しい。





「一回聞いてみろって。ケイトなら、協力してくれると思うぞ?」

「いや、うぅん······。これでもし無かったら、ケイトは俺様を哀れむぞ。同情が欲しいわけじゃない。それに、もしあったとしたら、騎士の国の人間性からすれば、国の宝物庫か博物館だろう。いや、牢獄の底かもしれん」

「だから、聞いてみろってば。ケイトは副団長だ。かなりの権限もある。牢獄でも宝物庫でも、ケイトなら入れるし、見たことがあるかもしれないだろう?」



「そこなんだ。あいつに泥棒みたいな真似はさせられん」



 ただでさえ、国での信用は薄い。

 上から十分に目をつけられて、短い期間であちこちの国を巡っている。逃げ場所を探していると思われていても不思議ではない。

 そろそろケイトには、国内の信頼回復の期間を(もう)けさせるべきだ。三年か、五年か。それより長いか。


「──お前が寿命を使い切ってくれるかが気がかりだな」

「ははは。一秒たりとも渡さないから安心しろ」

「はっ、随分と恨まれてるなぁ」


 ナディアキスタはリリスティアの手紙を読み返す。


『騎士の国に伝わる魔法道具は、剣のような形としか分からぬ。それが何を宿し、どういう作用をもたらすかも、何一つ知らん。魔女たちの話を聞いてもも、魔女の図書館で調べても、騎士の国だけが記録にない──······』


 続きを読まずに手紙を畳む。

 手がかりがないとすれば、大昔に処分してしまった可能性もある。

 それこそ溶かして、何も残らないようにしたかも。


「······ケイトにわかると思うか?」


 ナディアキスタの呟きに、オルテッドは「やってみないと」と返す。

 ナディアキスタは残りのコーヒーを飲み干すと、ローブを羽織って小屋を出た。オルテッドは何も言わずにその背中を送り出す。


「······剣のような形、か。そういえば」


 オルテッドはぼやく。そして、ケイトの笑顔と、ナディアキスタが以前言っていた事を思い出す。




「ケイトの星は──【自死の剣】だったな」




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