アポトーシス
元カレに彼女ができた。
別れても忘れられなくてずっと追いかけてた人だった
僕は辛くて、毎日死にたいと思うようになった。
ふと窓を見て手を当てた時
「ここから飛び降りたら全て忘れられるのに」
と言葉が溢れてしまった
僕には死ぬ勇気なんてないのに。
振られて引きずってるカッコ悪い自分が嫌いだった
だから人の前では強がって傷ついてないふりするのが辛い
どこに行っても君との思い出が溢れて涙が出る。
ケータイを開けば君の情報が嫌でも入って僕を苦しめた。
彼女と上手くやってるんだね。
SNSに投稿されていた君と彼女の写真は幸せに溢れていて僕が君と描いていた未来だった。
涙がぽろりと落ちる
「あぁ、死にたい」
僕は布団に入り目を瞑ったけど、何も忘れることなんて出来なくて。暗くて独りで縮こまって泣いていた。
「ぐさ」
鈍い音がして、背中を見ると僕は、僕に刺されていた。
もう一人の僕は切なそうに僕を見つめている
遠のく意識の中、僕はやっと解放されるんだともう一人の僕に未来を託したんだ。
二人目の僕は、明るい性格だ
思い出にも執着しないし、サバサバしていた。
そのおかげで、元カレのことは忘れることができたし、友達も多かった。
僕は毎日が楽しくて、幸せだった。
僕はまた好きな人ができた。
優しくて、かっこいい気さくな人だ。
きっかけは友達の知人で、彼から遊びに行こうと誘われたことから関係が始まった。
私は彼と、何度かデートをした。
沢山色々なところに連れてってもらって楽しかった。
僕は次のデートで告白しようと思った。
「次のデートいつにする?」
私は彼にそう聞いたら。
「ごめん、君とはもうデートできない」
そう言い捨てて去ってしまった。
なぜだか僕には分からなかった。
その後すぐ彼に彼女ができたことを知った。
とても可愛くおしとやかな女の子らしい子
彼はこういう子が好きだったんだ。
私は女の子っぽくないから好きな人に捨てられた。
そう思うと自己嫌悪が止まらなくて、こんな自分は死んじゃえばいいのにって思った。
「ぐさ」
後ろを振り返ると、僕が立っていた。
「もう大丈夫だから」
そう言われて、やっと嫌いな自分が変われると思った。
3人目の僕は何事にも無関心な人だった。
何にも興味が湧かずに日々を淡々と生きてた。
友達も恋人もいなかったけどそれでいいと思ってた。
だけど、毎日がつまらなくて、だけどやりたい事もない、何で生きているのかも分からなかった。
日々が同じ繰り返しに感じた。
何で自分はこんなに楽しめないのだろう、他の人は皆んな楽しそうで羨ましかった。
何もない自分が嫌になって、死になくなった。
「ぐさ」
僕は死ぬ時まで何も思わなかったがこれで無意味な事を繰り返さなくていいと思うと少し気が楽だった。
4人目の僕は何にでもチャレンジする人だった。
スポーツも勉強も沢山して、友達とも遊び
好きな人に積極的にアタックして付き合った。
毎日が刺激的で楽しかった。
そう思っていた。
彼氏の浮気がわかるまでは。
僕は彼氏と別れた。私の友達と浮気していた。
とことん男運が無いと思った。
でも僕にはまだ他のものが残っている、友達だって他にもいる。
だけどもう疲れてしまった。友達だって本当は自分の事わかってくれる人何人かいれば十分だったんだ。
裏切られるくらいなら沢山なんていらないと思った。
なのに人の前に立つと自分を偽って、誰にでも合わせてしまう自分が嫌になっていった。
死にたいな…。
「ぐさ」
僕はまた僕を殺した。
どんな自分も上手くいかなくて僕は自分を殺し続けた。
気づいたらあたり一面に僕の死体が転がっていた。
今の僕は何人目の僕なんだろうか。
だけど僕は幸せだった。
才能が開花し歌手になり、家族や友達にも恵まれ、恋人はいなかったけど、僕を慕ってくれる人が沢山いたから寂しくい、お金だって沢山あった。
全てに満たされていた。
だけどふと今の僕は本当に僕なのかと考えてしまう。
周りに転がった死体に目をやる
最初の僕はどれだ?それすらも分からない。
幸せだけど複雑で、やっぱり本当の自分じゃなきゃ意味ないのだと気づいた。
今の自分は好きだけど
最初の僕が人生をやり直して辛いこと沢山乗り越えて、その先にある幸せを掴んで欲しかったと本気で願った。
「ぐさ」
僕の背中には冷たいナイフと赤い血、後ろには傷だらけで死んだはずの僕がいた。
戻ってきてくれたんだね。この繰り返しをやっと終わらすことができるよ。
「もう殺しちゃダメだよ?」
僕は最後の力を振り絞り僕に言った。
僕は
「うん」
とだけ頷いた。
また昔と同じ日常に戻った。
彼氏のことを思い出して辛くなったけど。一年もすれば忘れることができた。
友達も多くはないけど、自分を理解してくれる友達を大切にした。
音楽も才能がなくなってしまったけど、自分が本当にやりたかった小説家になれるように沢山物語を書いた。
元の生活に戻った。
でも少し違う日常だった。
きっと僕は僕じゃなきゃダメなんだ。
「明日も死ぬ気で生きてやる」
僕はふと転がっている僕の死体をみて微笑んだ。