1.もうこれしか思いつかない
“こうなったら、誰かしらに恩を売るしかないでしょうね。”
恩を売る?
“ええ、困っている人を助けることで、信用を得るのです。”
なるほどなぁ。でも、そう都合良く困っている人なんて見つかるもんかな?
“まぁ、この世界には魔物がいますから。魔物に襲われている人を探して助けるのが1番手っ取り早いかと。”
いや!素手で魔物と闘えと!?無理でしょ!そんなの!
“それはステータス次第じゃないでしょうか。”
え?転生前の俺は男だけど、今の俺、一応女だよ?そんな腕力あったら、それこそ本当にバケモンじゃない?
“素早ければ、ヒットアンドアウェイみたいなこと出来るんじゃないですか?”
それ素手でやったら死ぬほど時間かかるよ?そこんとこわかってる?
ダメだ。この神様、天然というか、なんというか、時々、常識が通用しないぞ。素手で魔物と闘う=死刑ってなんで分からないんだろう。今どき、スライムだって素手じゃ倒せないだろ。それともあれか?俺が素手で闘うとか言い出したから、ジョークでも言ってるのか?だとしたらすごいな。あんな真剣に喋ってるトーンでジョークを言うとか、演者の才能に溢れすぎだろ。
“いやー、それほどでもー(棒)”
うっわー、思考読みおったしー。しかも本当にジョークだったしー。もうこの神様の事何も信用できなーい。
“ステータス次第までは本当のことですよ?そこから魔法の説明をしようとしたのに、あなたが勝手に素手で闘うとかばっかり言うから、冗談の1つくらい言いたくなるじゃないですか。”
はいはい。私が悪うございました。で?魔法ってどうやって使うの?
“簡単です。自分が出す魔法をイメージすればいいんですよ。”
あれ?嫌な予感がする。これ、転生ものにありがちなやつじゃないか?
もしかしてだけど、その魔法を明確にイメージできたり、その事象が起きる過程とかをイメージしたら、同じ魔法でも強くなったりしない?
“すごいですね。なんでわかったんですか?”
うっわー、ホントだったー。これだめだ。俺の魔法の強さがインフレして、強い敵と闘わないとあかんやつやん。
“まぁ、何でもかんでも最強魔法使い放題っていう訳ではないですよ。”
あ、そうなの?
“はい。魔力に準ずる強さの魔法しか使えません。”
なるほど。俺の魔力次第なのね。
“まぁ魔法のイメージが明確な方が、同じ魔力消費量でも強い魔法が使えることは確かですが、それでもまるで威力が違うという程にはなりませんね。”
自分の魔力を超える魔法を使えたりとかは?
“いわゆる、神の加護を受けるとか、悪魔に魂を売る的なものがない限りは使えませんね。自分の持つ魔力が無くなると、この世界の生命は命を失いますから。”
命を賭して的なのは?
“前例がないのでわかりませんが、想いの強さによってはできるかもしれませんね。”
なるほどね。うっかり気合い入れ過ぎない限り、魔力が無くなるってことはないのな。結構この世界、魔法を使うの楽だな。
「きゃあぁぁぁぁぁー!!!」
西の方で叫び声が聞こえた。
“叫び声の方に行きましょう!恩を売るチャンスですよ!”
言い方がいやらしいな。まぁ確かにその通りだけど。
この時、俺は完全にさっきまで話していたことを失念していた。そう。恐れていたあれをやっちまったのだ。
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バトルものです。