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獣人の兄弟


アシード、クレイスト、アンヴェル、ローグリオ、セルツの5人の紹介が終わり、残りは2人。


(すごく睨まれてる。)


残った2人の内、1人からは明らかに敵意を向けられていた。

睨んでいるのは短い紫の髪と緑の瞳を持つみはると同じ年齢くらいの少年。

ローグリオと違い、みはるにわかりやすい程の敵意を持っているようで。

目が合った瞬間、視線で人を殺せるんじゃないかと思う程、怖い目をした。

さっきまではこんな目をしていなかったが。

みはるは何をやってしまったんだろう、と不安になった。


(…この人、狼みたい。)


ベリルは見た目も狼を彷彿とさせる野生的な容姿だが、大変不機嫌そうである。

ただ、かっこいい人はどんなに不機嫌な顔をしていても様になるんだな、とは思った。


(………何を呑気に考えてるんだろう、私。)


みはるはいまいち、どんなにかっこいい、素敵な人だと考えていても、恋愛感情に結びつけない。

何というか。

綺麗な物は綺麗。

かっこいい物にはかっこいいと、ただ思うだけだ。


(…失礼極まりないわね、私。)


相手の事をまるで人間と思っていないような考え方に、みはるは自分の事なのに辟易とした。


「ベリル・ライ・ヘリオトロープ。

獣人、16歳だ。」

「よろしくお願いします。」


ジュウジン、という聞き慣れない言葉に内心首を傾げたみはるが挨拶すると、ベリルは何も言わず席を立った。


「ベリル。」

「るせーな、挨拶は済ませたんだ。

後は勝手にしても構わねぇだろ。」


アシードが咎めるも、乱暴な言葉遣いを返して振り向くことなく食堂を出ていった。

途中、周りの使用人達が止めようとしたが、ベリルが唸ると下がった。


「…ベリルがあそこまで不機嫌になるのは珍しいな。」

「あれでも我慢してる方なんだよ。」


クレイストが呟くと、ベリルと同じ紫の髪と緑の瞳を持つ男が答えた。


「ルゼオ・ジア・ヘリオトロープ、ベリルの兄だよ。

年齢は23歳の獣人。

よろしくね。」

「よろしくお願いします。」


ベリルと違い、理知的な容姿の美形で、眼鏡をかけたらさぞ似合いそうなお兄さんだった。

目元も涼やかで、口元にも笑みがあった。

但し、その目はみはるにとって、怖いものだった。


(……このお兄さんの瞳、さっきのベリル様と別の意味で怖い…。)


ベリルは気に入らない相手への敵意からの怖い目。

ルゼオは利用価値があるかどうか、それを見極めようとする目。

みはるがどんな人間なのか、ということよりも利用出来るか否か。

ルゼオはきっと、それ以外に興味ないのだろう。


みはるは怖いな、と一瞬思ったが。


(怖がって何が変わるわけでもないのなら、怖がる必要ないよね。

怖がって、びくびくしてたら何も出来ない。)


みはるは、自分が将来産む子供達が幸せであること、それが一番大切なのだ。

でもって、その子供達に会う為にはルゼオを含む彼らの事を知り、仲良くなって、色々頑張ってみはるが子供を産む必要がある。

つまり、ルゼオを怖がっていたら、仲良くなることは出来ない、と結論づけたみはるは怖がる事をやめた。


「あの、ところでジュウジンってなんですか?」


落ち着いたみはるが先程からの疑問を聞くと、ルゼオはその問いを待っていたようで滑らかに答えた。


「ジュウジンとは、獣の特性を持って産まれた人間の事を言うんだ。」

「獣の特性、ですか。」

「そう、身体能力の高さは勿論、五感が人間よりも優れている。

また……、」


ルゼオが目を閉じると、その頭にひょこんと紫色の三角形の耳が生えた。

三角形だが、耳の先が緩く丸みを帯びている。


(猫の耳に似てる?)


何の動物とかは今のところ関係ないので、ルゼオの話を聞く。


「こんな感じで、体の一部に獣としての部位を出し入れ自由な者や、獣の部位がずっと現れている者が獣人と呼ばれているんだ。」


耳や尻尾を出し入れ可能な者と、体の一部がずっと獣になっている者の差は、人間の血と獣の血を分ける事が出来るのか、出来ないのか、という差らしい。


「血を分けるって、どうやって?」


思わず口に出したみはるは、一瞬失礼な事を聞いたかな、と口を手で塞いだ。


「気にしなくていいよ。

はじめて聞いたら、誰だって気になることなんだから。」


ルゼオは一拍置くと、ゆっくりとみはるにわかりやすいように話してくれた。


「僕も感覚的なものとして捉えているけど。

僕の場合、自分の中に獣と人が共同生活をしていて、いつもは別々の部屋で住んでいるけど、時々同じ部屋で過ごすことがある、という感じかな。

……住み分ける、とでも言えば良いのか。

恐らく、それを意識的に出来るか出来ないかの差で、ずっと獣の耳や尻尾が生えているのか、出し入れが出来るのかに関係してくるんだろうね。」


ルゼオは、感覚的な事を説明しているので実際とは多少違う、と締め括った。


ふと、説明を聞きながらみはるは脳裏に絵の具のパレットを思い浮かべる。

2色の絵の具をパレットで混ぜて1色にして使うのか、1色ずつパレットに出して使うのか、その違いみたいなものかな、と失礼な例えをした。


(……失礼で、ごめんなさい。)


みはるは心の中で反省した。

とにかく反省した。


「そう言えば、僕とベリルの身分を話してなかったね。

僕は獣人の国、ヘリオトロープの第一王子で、ベリルは第二王子だよ。

まぁ、ベリルは主に国外で冒険者の活動をしてるけどね。」

「何故ですか?」

「弟は元々国外に興味をもっていたんだよ。

国内にいるより、外に行きたいって、ずっと言ってた。」


ベリルの小さい頃を思い出しているのか、小さく笑ったルゼオ。


「ずっとそうだったから、無理に国内に留めておくよりも、国外に出して、見聞を広めてきた方が自国の為になると、父上はそう判断した。

最初は留学って方法もあったけど、本人が窮屈だって、嫌がってね。

前々からなりたがっていた冒険者なら色々な国に行けるって主張して、ベリルは冒険者になったんだ。」


黙って話に耳を傾けていたみはるは胸中で呟く。


(ルゼオ様はこんなに簡単に言うけど、主張したからって、それがあっさり通るものじゃないわよね。

ベリル様は無茶な主張が通るまで沢山頑張ったんだろうな。)


なりたいものがあって、それが困難であればあるほど、当然だが努力が要る。

ベリルはその努力を怠らなかったから、冒険者になることを認めてもらえた。

…まぁ、みはるはそんなベリルに嫌われているようだが。


(私、何をしたんだろう?)


みはるには敵意を向けていたが、ベリルは食事中、隣の兄と話している時は無邪気に笑っていた。

それに、セルツが失言した時は怒気を滲ませて名前を呼んでいた。


「ベリルが君を睨んでいたのは、気に食わないってだけだよ。」

「ルゼオ、失礼ですよ。」


アシードがきつい口調で告げるが、ルゼオは肩を竦めるだけだ。


(次に会った時、本人に聞いてみよう。)


答えてくれる保証はないが、聞くくらいなら構わない、はずだ。

多分。


(いきなり殴られたりはしないよね。)


極端に考え過ぎかと思うが。


(それにしても。)


ルゼオはベリルが王子であり冒険者と言った。

また、冒険者になる為の努力もしたと然り気無く匂わせた。

話の流れとして教えてくれただけ、ともとれるが。


(第一印象が悪いベリル様のフォローをしたのかな。)


その甲斐あってか、みはるの中のベリルへの感情は悪くはない。

意味もなく人を嫌う様な性格ではない事はわかったからだ。

また、ルゼオに対しても、弟のフォローが出来る良いお兄さんという印象を持った。


(その印象を持たせた、って事はある?)


言葉一つで相手への印象は変わるという良い例だが、それをやってのけるルゼオは凄いのかもしれない。


「ミハル、そろそろ貴女の部屋を案内しましょうか?」

「はい。」


トラブルもあったが、食事会も終わりアシードと一緒に食堂を出た。












「……ここ、ですか?」

「えぇ、ミハルの部屋です。

奥の扉は寝室に繋がっていますので、この部屋で普段過ごしてもらうことになりますね。」


広い上に華美ではないのに、明らかに豪華な、落ち着いた内装。

木目が綺麗な机と椅子。

ふかふかのソファー。


(ヨーロッパのお屋敷にある部屋…?)


みはるの乏しい語彙力では上手く表現出来ないが、派手で可愛さが前面に出た、目に痛い色の内装ではなかったので、大変良かった。


「豪華なお部屋ですね。」

「お気に召しませんか?」

「いえ、そんな事ないです。

私が住んでた部屋と比べて高級な家具と広い部屋に気後れしてるだけです。

その内、慣れますから。」

「そう、ですか。

もし、足りないものがあれば言って下さいね。

それと、ミハルの荷物はもう少しこちらでお預かりしたいのですが…。」

「はい、大丈夫です。

私に気を使わず、沢山調べて下さい。」


アシードは苦笑すると、みはるを見つめた。


「それでは私はこれで。

今夜はゆっくり休んで下さい。

浴室に続く扉もありますから、侍女に言って入浴して下さい。」

「はい。」


一礼して部屋を出ていくアシードの背中に、みはるは言い忘れた言葉があった。


「アシード様。」

「はい。」


振り向いたアシードの紺碧の瞳を真っ直ぐ見つめてみはるは伝える。


「お休みなさい。」


虚を突かれたアシードだが、直ぐに笑顔になって、


「お休みなさい。」


と言って、部屋を出た。









寝室の感想。


「天蓋付きのクイーンサイズのベッド…、大きい!」


そして、ふかふかでした。


入浴は侍女が手伝おうとしてくれたのだが、一人で入りたいと断固拒否したみはるがあまりにも広すぎる浴室で落ち着いて済ませる事が出来た。


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