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企み?

更新、ちょっと間あきました。GWで時間あるはずですが、かえって疲れてしまって筆が止まってしまってました。来週からはペースを取り戻したいですが……


ともかく、——ショッピングセンター編まだちょっと続きますが、そのあとはクライマックスの大音楽バトル来ますので、そちらがお好きな方もしばしお待ちを。

 ミクスさんの食べかけのクレープをあーんされていると言う、なんだか絶妙のタイミングで現れた舞だったが、僕らが恥ずかしさに顔を赤ながら下を向いて、「それ」が未遂に終わると、


「あ、友達待たせてるので。私消えるね」


 不自然なくらいに、あっさりと、いなくなる。


 いや、なんとなく、


(ふふ、この女狐め。気がないふりしても油断ならなぬ女子(おなご)じゃて。また狼藉を働こうとするならば、妾はすぐに兄者のもとに馳せ参じようぞ)

 

 また、妹がやたらと古風な口調で喋る幻聴が聞こえたような気がしたが、


「気のせいだよな……」


(き、気のせいじゃ! ああ、妹はさっさと消えるのじゃ! 兄様が友と語らうのを邪魔しない、気の効くできる妹なるのじゃ。兄様が何をしているのか、使い魔に輪番体制で二十四時間三百六十五日の監視させているきもい妹なんてどこにもおらないのじゃ!)


「きもい妹……?」


(……考えないのじゃ! なにも考えないのじゃ……2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31……)


 なんだかまた素数が聞こえてくる?


 幻聴?


 僕は自分の精神状態がちょっと心配になるが、


「どうしたの兄さん?」


 妹に、動揺を勘付かれて、逆に心配さても困るので、


「いや、——なんでもない」


 言葉を濁して、


「それじゃ……」


 駆けだすようにフードコートから消える妹の後ろ姿を、ただ、眺めるのだった。


 うん、どちらにしても……


 舞が来たのが良いきっかけになった。


 良い区切りがついたので、ミクスさんともここで別れてショッピングセンターをちょっとぶらぶらするかなって僕は思った。


 そして、舞が用事終わるの待って一緒に帰っても良いけれど、友達と一緒——あの親衛隊の三人の顔が脳裏に浮かび——相手するのがめんどくさい即座に思ってしまう。


 なら、店を何軒か適当に見たらそのまま帰ってしまうか……とか思っていたのだが、ミクスさんはさっきまでの恥ずかしそうな顔はどこに行ったのやら、ちょっと黒い笑みを浮かべながら言う。


「では、私たちも出発しましょうか」


 私たち「も」?


「ふふ、まだ終わってないでしょ」


 終わってない?


「もちろん……」


 それは……


「デートですよ」


   *


 まだ続いてたんだ。その設定。舞が現れて、二人とも一旦素にかえって、もう「ごっこ」はやめたのかなって思ってたんだけど、ミクスさんはまだ続ける気のようだ。

 

 その理由(わけ)は、


「じゃあ、申し訳ないんですけど、カケルさんちょっと店を見るの付き合ってもらってもいいですか。一人で歩くよりも……」


 ん?


 僕はミクスさんが、なんだか困ったような感じで周りをチラチラとする、その視線の方向を見る。


「ああ……」


 なんだか、ロクでもなさそうな男たちがギラギラした目で彼女を見つめていて、


「カケルさんを利用して悪いと思いますが……」


 僕は自分の頼まれた役割を知る。


 ——男()け。


 この公衆の面前で、さすがにめったのことはないだろうが、確かにあの男たちが強引にミクスさんに迫って来たら、断るだけでも相当のストレスだよなって、僕は思った。


 だから、


「いや、構わないよ。僕なんかでよければ、いくらでもミクスさんの弾除けに使ってもらって。——ミクスさんには釣り合わないかもしれないけど」


 もちろん、友達のためにそのくらいはして当然。別に本当に彼女彼氏になったわけじゃないんだから、たまたま居合わせた友達が一緒に歩いていただけ。ミクスさんと一緒に歩くのが嫌なわけはないし、どうせ店をぶらぶらと見ようと思っていたんだし、——僕で構わなければいくらでも使ってもらって構わない。ただ見た目が全然釣り合ってないけどね、——と僕は思うのだった。


 しかし、


「そんな、『釣り合わない』なんて逆ですよ」


「逆? そんなわけないよね。葉羽校男子のアイドルのミクスさんと、僕では」


「あれ? 意外に気づいてないんですね」


「気づいてない? 何が?」


「カケルさんの女子人気もいま相当なもんなんですよ」


「女子人気? なんで」


 容姿は、中の上とは本人としては思いたいが、少なくともミクスさんと釣りあようなハッとするようなものじゃなく、何かスポーツで活躍するわけでもない帰宅部で、勉強はいつも進級すれすれの低空飛行。人気の出る要素なんて思い浮かばないが。あ、一時リッチーが転校して来た時に腐女子人気が出たことはあるが。


「だって、二度までも学校の危機を救ったカケルさんですよ。それもウェブレイドとかDFCとかの大手のサウンドプロダクションが獲得に走っている超高校生級DJ——これでモテないわけないじゃないですか」


「え、そうなの?」


 そりゃ、今の自分の全てをかけて二回の業羅騒ぎを解決したことが同じ学校の人たちに評価される、感謝されているのならばそんな嬉しいことは他にないが——あんな無様なDJでやっと切り抜けた危機——それでモテると言うのはちょっと違うのではないか? と僕は思うのだった。

 

 と言うか、学校では、モテている? そんな気配は微塵もかんじないのだけど。


「まあ。コン子ちゃんが常に目を光らせているから、まだカケルさんに直接声をかける子はいないかもしれないですけど——女子だけになった時あっちこっちでカケルさんの噂ききますよ。あの様子じゃ、いくらコン子ちゃんが怖くても、いつか堰を切ったように女の子たちがカケルさんに押し寄せて来ますよ——それって結構辛いことかもしれないですよ」


 辛い?


「カケルさんが、人の好意を断る時、心痛まない人なら良いですけど——違いますよね」


「それは……」


「相手が嘘や偽りなく、全身全霊で好いてくれていても——それに応えることができない。その時の相手の落胆は、自分も同じように落ち込ませて——やるせないです」


 ああ、これは——僕が本当にモテているかは置いといて——ミクスさん自身のこともあわせて言っているのだなって僕は気付いた。


 全校男子の三分の一に告白されているミクスさん(一人二回以上告白してくる奴もいるので延べ回数ならもう全校生徒の数を超えているとのこと)。そんな数の相手の好意をずっと拒絶しないといけなかった彼女が、もし相手と同じように心を落ち込ませていたならば……


「ふふ、なんだかカケルさん随分と心配してくれてる顔してますね」


「そりゃ……」


「なら、今日の買い物には付き合ってもらっていいですよね」

 

 首肯する僕。


「うん。よかった。これで安心。でも、さらに、欲を出して……」


「……?」


「ついでにこのまま、付き合っちゃいましょうか? 私たち?」


「えっ……」


 僕は、ミクスさんの予想外の言葉に、びっくりして思わず固まる。


「おっと、素で引かれるとちょっとショックですが」


「いや、そういう意味では……」


「いえいえ、良いですよ。私もコン子ちゃんからカケルくんを取ってしまおうなんてこと考えているわけじゃなくて……むしろ逆のことを考えているのですが……」


「……逆?」


「これって、私たち双方にメリットのあることだと思うんです。なぜなら……」


 そうやって、語り始めたミクスさんの考えていたある企み(スキーム)のミクスさんのメリット。それは僕と付き合っていると言うことになれば、もう告白にやってくる男もあまりいなくなるだろう。毎日のように、好意を拒絶して彼女は心を痛めなくても済む、と言うことだった。


 じゃあ、僕のメリットは……


「……少し考えてみるよ」


 僕は、一通りショッピンクゼンターを巡回した後に、駐車場横のバスターミナルから帰りのバスに乗り込むミクスさんに向かって言う。


 すると、僕に向かって、微笑みながら、無言で首肯するミクスさん。


 そして扉がしまり、僕は、


「コン子……」


 その今目の前からさった人と別の名前を無意識に呟いてしまっていたのだった。 





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