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ある日、地獄に招かれた  作者: 梶 央実
7/20

地獄ー亡者の襲撃ー

「これでひと段落だな、僕は一休みするよ。」

「ショウ・・・」

「何だい、やることはやったよ。」

「そうね、ありがとうショウ。・・・きっと報われる時が来るわ。だから・・・」

「はは、報われる、僕が?報われるのは、白、黒、君たちだろ、素直で従順で罪のない・・・」皮肉に歪むショウの顔を生臭い風がなぶる。

「わ、私たちにも業はあるのよ、だからこうして、ここにいるし貴方の助けが必要なのよ。」必死にしゃべる白の声も風に霞む。

「業か、あるんだろうさ、地獄があるんだからな。でも生まれてもいない君たちの業なんて、僕には想像しようもないし理解できない。手伝ってはやるよ。他にやることもないし、でも期待はしないでくれ。」

何を言っているのか理解できない、生まれていない?

「し、白、風が強くなってきた、怖いよ。」黒が声を上げる。風だけではない、荘厳な雰囲気が一気に変わりつつある。

「もうやめよう、行くよ。」

「・・・」白はなおも何かを言いたげに口を開きかけた。

その時、

突然、ものすごい突風が吹き荒れ、足元が激しく揺れた。

そして

悲鳴が響いたー

振り向くと、白と黒が《蛆虫》から必死に逃れようともがいていた。

「やだ。やだよ。やめろよぉ」

「い、痛い。やめてぇ」

二人がそう言っている間にも、動く度にギシギシと音を立てる《蛆虫の様なもの》が

二人を取り囲み、追いつめつつあった。

 「どうして、こんな、どうして。」

 「やめろ!亡者ども!」

ショウは叫ぶと同時に力強く亡者を二人から引き剥がしにかかった。

 「い、痛い!」

 「いやあ、着物は破かないでぇ。」

 「みぃ、何している、手伝え。」

 「は、はい。」

声が震えた、地獄であることは分かっていたのに、分かっていたのに忘れていた。

 美しい情景こそが異常だったのに!

 地形が大きく変わっている。さっきまで地面は血の海の上に、キノコのように伸びあがる感じで存在していた。

《キノコ》は幾つもあって、最大のものはこの場所で、神木を抱いて頭一つ抜き出ていたのに!

 だが、今は。

どこまでもなだらかな海岸線が続いている。

血の海に至る海岸線だ

神木の周りはさすがに高台といえるが、先程と違って丘があるという程度である。

そして、そのなだらかな海岸線から亡者たちが続々と上陸していた。

そのほとんどが、なぜか白と黒に向かっていく。

「くっ」

 ショウとともに必死に、震えながらも必死に、白と黒に群がる亡者たちを引き剥がしているが、物凄い人数に私たち自身も埋もれていく状態だ。

「いやいや、どうしてこんな!」

「考えるな!集中するんだ!」

ショウの鋭い声が、なすべきことを思い出させてくれる。小さなかわいい日本人形のような子供たち。その小さな子を見捨てるなんてできない。大人の私が震えてなんていられない、白と黒から引き剥がさなければ!

でも焼け石に水だ。そもそも、本人たちは全く反撃していない。これでは無理だ。歯噛みしながら「ちょっとは抵抗して」と叫ぶと、必死の形相のショウが叫ぶ。

 「余計なこと考えるな。とにかく、白と黒を連れ出し木に走るんだ」

「わ、わかったわ」

なにか、反論を許さない、切羽詰まった言い方である。こんな状態なら誰でも追いつめられるだろう。だが、誰でもが陥る状態ではなく感じた。何か、もっと危険である。

しかし、考えている暇はない。集中して、必死になっても思ったようにいかない。焦りばかり募る。

白と黒は蹲り頭を抱えて丸くなって身を守っているが、亡者達は容赦ない。

 何故か実際に亡者たちの行動を妨げている、私たちには興味を示さず攻撃せず、ひたすら白と黒だけに危害を加えようとする。

「なんで、どうしてよ。白と黒はあなたたちを助けようとしていたのに。どうしてよ!」

そうだ、なぜ、どうして、攻撃される、助けてもらえない。

先ほどの獄卒たちが助けられた光景が目に浮かぶ。空から糸が降ってきて、獄卒に群がっていた亡者を巻き上げて、海に投げ返していた。どうして白と黒には助けがないと思って目を上げ、愕然とした。


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