決着
―大丈夫だ―
「誰?」また、ラード―ン?でも声が違う?
―あなたの言う、善の象徴はあなたの体の中にある―
「え?」深みのある声だ。
―体が軽いだろう、いつもより速く走れるはずだ―
確かに軽い。50メートル走るのに10秒かかる私が、ショウから一歩遅れているだけで、追いすがっている。
―大丈夫だ、全てのことから善の象徴はあなたを守る―
ぶつっという感じで声は切れた。
なのに、気分が楽になっていることがわかる。
良いアイデアが浮かんだわけでもないのに、楽観的になっている。
自然と顔が微笑んだ。
そうだ、義務感などいらない、
悲壮な決意もいらない。
そんなものなくても、私はショウを止めえられる。
そうだ、私は出来る、出来るからここにいる。
この時、私は本当に楽観していた。格好良く、ショウから剣を取り上げられると思っていた。片方の剣は、回し蹴りで弾き飛ばし、もう片方は手刀で叩き落す姿を描いていた。カッコイイ女性ソルジャーだ。上手くいかなくても、真剣白羽どりで剣を受けている姿を想像していた。
コミカルなほど、楽観していた。
自己犠牲の気持ちなどなか毛ほどもなく、強いヒロインになりきって、高揚していた。
追いついた。
そして亡者は確かに悪意に満ちていて、白のもとに導かれたことを知った。
その瞬間は来た。
ショウにこれ以上、斬らせてはいけない!
もちろん、回し蹴りは不発に終わった、手刀もよけられた。
ただ、白の前に立つことはできた。
私はヒロイン、後ろに庇うものを斬らせはしない!
音が響いた。