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ある日、地獄に招かれた  作者: 梶 央実
10/20

山本

 はっと目が覚めた。

右を見ると両手に剣を持ったまま、男が倒れており

左を見ると、山本が倒れている。

上を見ると青い空が広がり、地上は薄暗く私たち三人以外誰もいない。どこからか、車の走る音や意味をなさない話し声など、雑踏の音だけは聞こえる。

 ぼんやりと音を聞いた後、何をしていたか思い出した。焦燥感はバッサリ抜け落ちているが、逃げたほうがいいのだろう。男の得物はギラギラ光っている。

山本のそばに行き肩を揺すると、パチッとばかりに目を覚ました。そのまま、何かに引っ張られるように、片手をまっすぐ伸ばしたまま身体を起こす。そしてお尻の下に回転盤があるように、勢いよくくるりと体ごと私に向いた。

「何?香菜子さん。」

「・・・今のうちに逃げましょう?」

「まだ追いかけっこするの?」

「追いかけっこ?」

「それより、せっかく寝ているんだしヤッツケテしまったほうがいいんじゃない?」

「ヤッツケル?え、それって…」

「そ、殺しちゃうの。だって私もう走れないし、あいつ通り魔よ。私たちの罪にはならないでしょ。」

口がパクパクする、山本ってこんな人だったかしら?

「なに、驚いたふりしているの?私なら、こういう時にはこう行動すると思っていたでしょう?」

 ざわざわと風が吹いてきた、その風がそうだ、そうだと囃し立てる。

「あ、あなた誰?」

「私?山本よ。香菜子さんの。」

「わ、たしの?」


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